【ライブレポート】エレファントカシマシ、デビュー30周年記念完全招待制シューティングライブ写真&レポ!ダイジェスト映像

2016年12月29日08時22分芸能

すべてが特別で奇跡的な夜だった!2016年12月27日に下北沢シェルターで開催されたエレファントカシマシのライブのオフィシャルレポートが到着したので写真と一緒にレポートしよう!なお、このライブの模様は3月21日にリリースのベストアルバムの初回限定盤のDVDとして収録され、特設サイトでダイジェスト映像を公開している。

ベストアルバム『All Time Best Album THE FIGHTING MAN』特典映像用のシューティングライブとして招待制で開催されたのだが、彼らは企画が立ち上がる前からここでのライブをブッキングしていたという。下北沢シェルターはエレファントカシマシにとって特別な意味を持つ場所だ。彼らは21年前にもここでライブを行っている。その当時、彼らはレコード会社との契約が終了して、未来が見えない状態にあった。活路を見出す術はたったふたつ。いい歌を作ること、そしていいライブをやること。彼らの快進撃が始まるきっかけとなったのが1995年6月21日のシェルターでのライブだった。「悲しみの果て」が初めて演奏されたのもその時だ。30周年直前にメンバー4人でこのステージに立つことは彼らにとっても大きな意味を持つのだろう。

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「Everbody! こんばんは」と言っても宮本がギターのかき鳴らして始まったのはオリジナルアルバム未収録の「夢を見ようぜ」だった。1995年6月21日と同じ始まり方だ。タフな歌声、ソリッドなギター、骨太なベース、パワフルなドラム、削ぎ落とされたバンドサウンドがズシッと響いてくる。宮本浩次、石森敏行、高緑成治、冨永義之というメンバー4人のみのステージは2011年の盛岡でのライブ以来、実に5年ぶりだ。4人のたたずまいからはあるべきところにあるという必然性を強く感じた。奏でるサウンドもロックンロール・バンドそのもの。それ以上でもそれ以下でもないという、その潔さがかっこいい。“下北シェルターで夢を見ようぜ”と宮本が歌い、観客も一緒に叫んでいる。地下の狭い空間で叫ぶからこそ、“夢を見ようぜ”というフレーズのかけがえのなさが際立っていく。

続いては1stアルバム収録の「デーデ」、「星の砂」。宮本がこぶしを突き出すと、観客に触れそうだ。近い! 狭い! そして熱い! 熱い演奏に観客が熱くなり、その観客の熱でバンドがさらに熱くなっていく。演奏するほどにバンドはどんどん加速して疾走していく。バンドのメンバー同士の距離とさほど変わらないところに観客がいるから、観客もバンドの一員みたいに、互いの気配に反応していく。

「今日はもともと(シェルターで)やろうと思っていまして。シェルターも25周年なんですよ。」と宮本。この日の選曲で特徴的だったのは1995年当時を意識したものとなっていたこと。1994年リリースの7枚目のアルバム『東京の空』、1996年リリースの『ココロに花を』からのナンバーがたくさん演奏された。「孤独な旅人」は石森の伸びやかなスライドギターをフィーチャーしての演奏。曲が進んでいくにつれて、バンドの推進力も増していく。「行くぜ〜!」という宮本のシャウトを合図にさらに一丸となって、バンドも観客も突き進んでいく。

続いては1995年6月21日に初めて演奏された曲「悲しみの果て」。当時の思いとともに、21年の月日の中での思いが加わった歌と演奏に胸が熱くなる。宮本のギターと歌で始まったのは「四月の風」。曲の途中で宮本が“古い古い「四月の風」”と言っていたが、元々の原型バージョンなのだろう。むきだしのバンド・サウンドになっていて、歌詞もかなり違う。続いてはこれもレアな曲、「愛の日々」。陰影のある歌と懐の深い演奏が素晴らしかった。ここで突然、本来は予定されてなかった「過ぎゆく日々」を宮沢本がギターを弾きながら歌い始めた。この場所の空気に呼ばれて、歌ったということなのだろう。続いてはこれもレアな曲「明日があるのさ」。作った当時の思いがそのままあふれでてくるような生々しい歌が染みてきた。さらに軽快なロックンロールのリズムが気持ちいい「真冬のロマンチック」へ。

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宮本のアコギの弾き語りで始まった「珍奇男」は宮本の自在な歌と一体となったバンドの演奏が見事だった。“珍奇”さが際立っている。こんなにもデコボコ、ゴツゴツしたグルーヴを有機的に奏でられるのは30年近く一緒にやっているバンドだからこそだろう。宮本と石森が向き合って演奏したり、高緑のベースソロがあったり。観客がブレイクに合わせて、シャウトしたり。宮本のアコギの弾き語りで披露されたのは「夜と朝のあいだに. . .」だった。続いては1stアルバム収録の「ゴクロウサン」。ロックンロールの初期衝動が炸裂するような演奏だ。

「昔のテープと同じ曲もまぜてやろうと思って、ロマンチックに曲順を考えて来ました。昔スタジオでこっそりデモテープを録って、いろんなところに営業活動をした時の曲を聴いてください」という言葉に続いては「Baby自転車」。“悲しみの交差点を越えよう”という歌詞にグッと来てしまった。「うれしけりゃとんでゆけよ」、「OH YEAH!(ココロに花を)」と演奏されたところで、また予定外の曲「お前の夢を見た(ふられた男)」が入ってきた。宮本がギターを弾きながら歌い始めて、バントもしっかり付いていく。ここでも息の合った演奏。「さすが、バンドだ。急に思い付きでやったら、よくぞやってくれた」と宮本。「すごくいい日になりました」という言葉に続いて本編最後の「花男」。石森と高緑もステージ最前列に出て(といっても狭いので、1、2メートル前に出ただけだが)の演奏となった。高緑、石森、宮本が一列になっている。さらに宮本が冨永の目の前に立っている。最後に宮本が「YEAH!」と叫ぶと観客も「YEAH!」と応えている。エレファントカシマシは不思議なバンドだ。でかい会場も似合うのだが、こんなにも狭い会場も似合ってしまう。それはおそらく彼らが今も不屈の精神、ハングリー精神を失っていないからだろう。

アンコールでは「ハナウタ〜遠い昔からの物語〜」が演奏された。いとしさの詰まった歌声、温かな演奏が染みてくる。「久しぶりにライブハウスでみんなと一緒に盛りあがることができました。ありがとう。またどこかで会おう!」という言葉に続いては「ファイティングマン」。バンドの演奏に観客の雄叫びが加わっていく。全員が一体となって奏でる白熱の「ファイティングマン」でこの奇跡的な夜は幕を閉じた。

まるで下北沢シェルターがタイムカプセルなのではないかと感じる瞬間があったのは音楽が本来、過去に自在に連れていってくれるタイムマシン的な機能を備えているからだろう。1995年の下北沢シェルターのライブは観ていないのだが、その時のことを記憶している4人がその当時の空気をまといながら演奏することで、会場内の全員にその瞬間へと連れていってくれたのではないだろうか。1995年のエレファントカシマシと2016年のエレファントカシマシとが交錯していくようなライブで強く感じたのは希望のかけがえのなさだった。悲しみの果てには素晴らしい日々が、つまらなかった今日の次には明日があるに違いない。そう思わせてくれる何かが彼らの音楽にはある。

初心に返る。もしくは原点回帰。おそらくそんなニュアンスもあったのだろう。だが、彼らが奏でていたのはまぎれもなく今の歌だった。戦い続けた日々の連続が今の彼らに繋がっていて、今の鍛え抜かれたバンドサウンドになっている。過去をその体に刻みながらも、彼らは来るべき未来を見すえているに違いない。現状に満足せず、安住せず、戦い続けるバンド、それがエレファントカシマシであることを強く感じた夜だった。

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