「雲が描いた月明り」時代背景④:孝明世子とヨン世子を比べると…最終回のその後は?

2017年09月05日14時45分ドラマ
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「雲が描いた月明り」で、主演のパク・ボゴム演じた王子が孝明(ヒョミョン) 世子をモデルにしているというのは、「時代背景①」で歴史的事象と共に検証したが、今回は実在した孝明世子とパク・ボゴムが演じたヨン世子との比較と、ドラマのその後について考えたい。

※「時代背景①」は【「雲が描いた月明り」を2倍楽しむ】他の時代背景と一緒にご紹介。

■孝明世子(1809-1830)
雲<誕生>
純祖は王后と後宮(側室)をひとりずつ置いた。孝明世子は純元王后・金氏が産んだ長男で、名は昊(ヨン)。また、後宮である淑儀・朴氏は1女、永温(ヨンウォン)翁主をもうけている。
※朝鮮王朝実録によると王后は他に4女を生んだとあるが、他の歴史書などでは夭逝した第2子は男児とも紹介されている。
※淑儀については【朝鮮王朝豆知識】「◆宮女の身分」を参照。

雲<世子冊封と結婚>
孝明世子は1812年、3歳で王世子に冊封される。安東金氏による勢道政治に危機を感じた父王・純祖が、豊壌趙氏(プンヤンチョシ)を重用して安東金氏に対抗させようと、11歳になった孝明世子と豊壌趙氏一族の趙万永(チョ・マンニョン)の娘と結婚させる。18歳で第一子誕生。

<代理聴政>
王の命令をうけて、1827年から孝明世子が代理聴政を行う。善良で賢い人材を登用し、刑罰にも慎重を期すなど、まだ10代と若年ながらも善政を敷いた。純祖の狙い通り、孝明世子が力をつけると豊壌趙氏は安東金氏の勢力を上回った

雲<死亡>
代理聴政4年目の1830年、孝明世子がわずか21歳で逝去。父王・純祖の死後、孝明の息子(憲宗)が第24代王となったことで、翼宗に追尊された。
※追尊とは、王位継承者が王位に就かずして亡くなった場合、後から王の称号を与えること。

■ドラマのその後
孝明世子の死によって安東金氏が復活。憲宗が7歳で王に即位したために王が14歳になるまで、祖母である大王大妃・純元王后が垂廉聴政を行った。純元王后が世を去る1857年まで安東金氏の天下が続き、政治は腐敗し、民は苦しめられた。
孝明世子が王位に就くか、もう少し彼の代理聴政が続けば、安東金氏の復活はなかったはず。歴史書を見ても孝明世子の病気について詳しい記述はなく、朝鮮王朝の半数近くが毒殺または異常死をしていることを考えれば、孝明世子の死も政敵=安東金氏の誰かによる毒殺も十分考えられる。

■孝明世子とヨン世子を比べると…
※以下、ネタバレあり。
雲<人物>
「恋のスケッチ~応答せよ1988~」で一躍注目を集めたパク・ボゴムが演じたヨン世子は、イケメンツンデレ王子で、劇中世子用の図書室によく出向いていたことから読書好きが想像される。もっとも、視聴者にとっては読書以上に内官のラオンとの絡みが気になっただろうが。
実在の孝明世子も容貌に優れ、頭脳も明晰で、祖父である正祖(「イ・サン」の主人公)ゆずりの読書好きと伝わっている。

<世子を取り巻く3人の女性>
雲●母
前述したように王の妻は2人だけなので、劇中描かれるヨンの亡母と敵対する王妃キム氏は同一人物の純元王后だ。安東金氏の勢道政権を創始した金祖淳の娘で、一門の執権に大いに貢献した、王より1歳年上の妻。
劇中、キム・ホンがヨンの亡母を脅しているがこれはフィクション。また、劇中のキム氏は若々しい女性で、子供の取り換えをしたのもフィクション。劇中、キム氏がヨンを敵対視しているが、実際の純元王后が我が子の孝明世子をここまで憎んだとは考えたくないものだ。

雲●妻
ドラマの中でヨンは代理聴政を行ってから世子嬪を迎えている。世子嬪がチョ・マニョンの娘というのは史実通りだが、時期については、劇中では代理聴政の後(20歳前)となっており、史実とは大きくかけ離れる。また、離婚もせずに第1子をもうけている。

雲●恋人
ドラマのラストではヨンは王位に就き、ヒロインのラオンとの明るい未来を予感させているが、残念ながらこれはドラマの中だけのこと。
ラオンは架空の人物で、前述したとおり、孝明は王位にも就かないまま早世した。
歴史をよく知るものは、ドラマ最終回キム・ホンの回想シーンで「世子を短命」という観相師の言葉に、「ヨンが死ぬのでは?」と考えた方もいるかもしれないが、これはヨンではなくユンソンのこと。少年たちは服を交換していたのだ。

雲が描いた月明り祖父である名君正祖がもう少し長生きしていれば…とはよく聞く言葉だが、孝明世子もまた名君になれる素養を持った人物だったようで、もう少し彼が長生きして王位に就いておれば、王朝の末期もまた変わっていたはず。
王朝は、なんとも惜しい人物を亡くしてしまった。

作品公式サイトで予告動画が公開されている。また、以下の配信各社などでもネット配信されている。

※参考:「第23代 純祖実録」より 『王妃たちの朝鮮王朝』「第四部:貞純王妃・金氏」より

kandoratop【作品詳細】【「雲が描いた月明り」を2倍楽しむ】

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