NHK大河ドラマ「西郷どん」第2話「立派なお侍」では、18歳になった西郷吉之助（吉之介）が借金のかたに連れ去られそうになった農家の娘を助けようとしたものの、結局守ってやることができずに、己の無力さに号泣した！次回の第3話放送前に、当時西郷がどんな仕事を任されていたのかをおさらいしよう。

※各話の予告とネタバレあらすじは【「西郷どん」を2倍楽しむ】でまとめて紹介している。

1844（弘化元）年、18歳になった西郷が始めて出仕したのは薩摩藩“郡方書役助（こおりかたかきやくたすけ）”。
“郡方”とは、農村を回って農業について調査を行い、年貢などの監督をする部署。旧・地方農政事務所、現在の郡役所と税務署を合わせたような役所と考えていいだろう。
“書役”は文書の草案作りや記録・書写などを担当する事務職で、“助”はそのお手伝い、つまりアルバイトのような位置づけ。

他藩では10人に1人が武士だった時代、薩摩では4人に1人、つまり25%が武士という“武士の国”。それゆえ下級武士の暮し向きはとても厳しい。薩摩藩では、武家の子弟がある程度成長すると、家計の足しになるようにとこうした低い役職に就けることが多かった。これも、当時の薩摩の貧しさを示す慣習だ。
書の巧みな者は書役になったり、武術に長けた者は藩校演武館の助教（教員）になったり。
西郷は、少年時代に右腕を怪我して剣の道を諦めた後、学問に注力したお陰で読み書きそろばんなどに秀でていたはず。そこで書役に任命されたのだろう。

もっとも書役といっても郡方は、農村を回って農業調査を行わなければならないために、藩内の各所に出張することが多い。これはなかなか体力的にきついお仕事だ。しかし、平均男性より頭一つ大きいと伝わる恵まれた体格の西郷には、まさにうってつけのお仕事！

ちなみに西郷の竹馬の友、大久保正助（後の大久保利通、瑛太扮）は史実通りに“記録所書役助（きろくやくすけ）”に任命された。
お城勤務のいわゆるエリートコースで、ドラマ第2話では、正助の出世をみんなで盛大に祝った。しかし、そんな出世頭がその後、藩のお家騒動に父が巻き込まれてしまい、正助にまで類が及ぶとは、この時はまだ誰も知らない。このあたりをドラマではどう描くのか今後の展開が楽しみだ。

第2話では、竜雷太が演じた調所広郷（ずしょひろさと）の憎々しい演技があった。ドラマホームページの相関図を見ると、彼の写真の横に「薩摩財政立て直す」とある。

実際の広郷は1838（天保9）年家老に出世したものの、当時、薩摩藩には500万両の借金を抱え財政は破綻寸前！これは年間利息だけで年80万両を超える恐ろしい借金地獄だ。そこで広郷は、商人を脅迫して借金を無利子で250年の分割払いにするという荒業に出た。さらに行政改革、農政改革、財政改革などを行い、1840（天保11）年には薩摩藩の財政を、200万両の蓄えが出来る程にまで回復させた。しかし、何より藩の財政の立て直しを優先したために、広郷には領民を苦しめた極悪人という低い評価がついた。

第2話で、西郷の「年貢を“検見取”にしてほしい」という願い出を、どうせ吉之助（西郷）が痛い思いをするとわかった上で許可させた辺り、実在した実力者・広郷の人物像を実にうまくとらえている。

そんな広郷とは対照的な人物が実際の郡方にいた。西郷を書役助として雇った人物、迫田利済（さこたとしなり）、通称は太次右衛門（たじえもん）だ。
実在した西郷も農民の貧困ぶりを訴え、これを聞き入れた迫田は藩に年貢の引き下げを申し出たが却下され、義憤を感じて「虫よ　虫よ　五つ節し草の根を絶つな　絶たば　己も共に枯れなん」という詩を残して辞職してしまった。そんな迫田を人々は気骨のある高潔な人物と高く評した。

しかし、幕末期に、薩摩藩が新型の蒸気船や鉄砲を大量に保有し、明治維新のイニシャチブが取れたのは、藩の財政を再建した広郷の功績によるところが大きいのは間違いないはず。
広郷の最後については諸説あるが、1848年広郷が江戸に出仕した際、幕府老中・阿部正弘に密貿易の件を糾問され、同年12月に、薩摩藩上屋敷芝藩邸にて急死、享年73。死因は責任追及が斉興にまで及ぶのを防ごうとした服毒自殺とも言われる。

とまれ、郡方での迫田の生き方は、西郷の人間形成におおきな影響を与えた。そして、西郷が生涯の主君として敬愛したのが、島津斉彬（しまづなりあきら）。第2話では、農家の娘を助けるためにせっかく斉彬に会えるチャンスを逃してしまった。もっとも第1話で運命の対面を果たしているが、実在した西郷が斉彬と出会うのはもう少し先。

さあ、次回第3話はいよいよ藩主の後継問題が、薩摩藩を二分する大抗争“お由羅騒動”にまで発展する。薩摩訛りがちょっぴり聞き取りにくいという方は、【「西郷どん」を2倍楽しむ】の前回ネタバレで復習しよう！

「西郷どん」（せごどん）は、NHK（日）【総合】よる8時より、【BSプレミアム】よる6時より放送。再放送は毎週土曜日午後1時05分よりNHK総合にて。

原作：林真理子。出演：鈴木亮平／黒木華／瑛太／北川景子／桜庭ななみ／渡部豪太／塚地武雅／大村崑／水野久美／錦戸亮／松坂慶子／風間杜夫／渡辺謙ほか。

番組公式Twitterアカウントは「@nhk_segodon」。番組公式Instagramアカウントは「nhk_segodon」。第2話予告動画は番組公式サイトで視聴できる。

◇NHK 大河ドラマ「西郷どん」番組公式サイト
◇NHKオンデマンド「西郷どん」

※【「西郷どん」を2倍楽しむ】では、ドラマの時代背景や豆知識、各話の詳しいあらすじなどをまとめて紹介していく。

【2018冬ドラマ】【「西郷どん」を2倍楽しむ】