【蒼穹の昴】梁文秀ファンなら気になる、科挙ってどんなもの?[コラム]

2010年10月08日23時30分ドラマ
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故宮の金水橋

いよいよ日本語版の放送が地上波で始まったドラマ「蒼穹の昴」。ナビコンでお馴染みの「2倍楽しむ」特集コーナーにこのドラマも仲間入りして隔週でコラム連載を行います。毎回ドラマの進行に沿って、より内容を楽しむための豆知識や中国史への世界を広げたい方におススメのアイテムなどをご紹介します。ドラマ放送終了までよろしくお付き合い下さい。
(※この記事は、2010年NHKにて地上波放送時に紹介したものです)

地上波放送では何といっても、字幕放送時には聞くことが出来なかった田中裕子さんの声でドラマが見られるのが日本人としては朗報でしょうか。字幕版では西太后の声は中国人声優の吹き替えになっていましたからね。撮影中は西太后のセリフは日本語、その他中国人キャストは中国語での台本だったので苦労も多かったようです。今回は吹き替えといっても元の演技を日本語で行っていたので、田中さんだけがセリフと口の動きが合っていますね。字幕を目で追う必要が無くなった分、豪華絢爛な衣装やセットにも注目出来ることでしょう。

[清朝末期はドラマチック!]
中国を舞台にした映画やドラマ、小説などの作品は数多くありますが、日本でも人気の時代区分のひとつが「蒼穹の昴」も舞台となっている清朝末期ではないでしょうか。ちょっと下れば「世界のサカモト」を生み出した映画「ラスト・エンペラー」の時代ですし、この主人公の愛新覚羅溥儀の弟の溥傑とその妻・嵯峨浩はドラマで竹野内豊さんと常盤貴子さんが演じていました。
「蒼穹の昴」の主要人物である西太后は、1984年に発表された中国映画で知った人も多いのではないでしょうか。これはいささか脚色が過ぎていて、西太后がライバルの手足を切って甕(かめ)に漬けるなど残虐なシーンがありますが、実際の西太后はこうした残虐行為をした人ではないようです。むしろ、「蒼穹の昴」第2話に見られるようなパワー・ハラスメントを駆使する事に長けた人だったようです。このドラマをご覧の管理職の方々には、くれぐれも真似しないように願いたいものです。
この時期の清朝はまさに「内憂外患」の時代で、国政も対外的にも問題が山ほどありました。これらの問題についてはいずれお話したいと思います。ですがそうした混沌とした時代こそドラマが生まれるもので、その点では現在放送されている大河ドラマ「龍馬伝」に見る幕末と似た状況と言えるでしょう。


[梁文秀ってどれだけすごい?]
科挙に合格した事で運命が開ける文秀ですが、ではその科挙とは具体的にどんなものでしょう。今の日本で例えると国家公務員試験のようなものでしょうか。当然エリートが集まるわけですが、この頃の人口で既に4億以上いたとされるのでその倍率はただごとではありません。
科挙には段階があって、大まかにいうと第一段階から順に郷試→会試→殿試とステップを踏みます。第2話の文秀は第2段階の会試合格の状態ですね。ゆくゆくはこの殿試で文秀が状元(首席合格者)となるわけですから、中国全土からの応募者のトップという事でどれほど文秀が優秀なのかおわかりでしょう。
ちなみに、科挙の三段階の各試験において全て状元だった人物の事を「三元」といいます。あれ、聞いた事あるぞと思った方は麻雀好きではないですか?そう、これが麻雀の役満の一つ「大三元」の由来とされています。こうして考えると、科挙にも親しみが湧いて来るのではないでしょうか。

[科挙を知るこの一冊]
ここでご宮崎市定著「科挙-中国の試験地獄」という一冊の本を紹介しましょう。著書の宮崎先生は中国史を本格的に学ぼうとする方なら必ずその著書や論文にお世話になるいわば大家です。宮崎先生の論文を一般書向けに記したのがこの一冊ですが、難解な文章は無く読みやすいかと思います。
科挙の試験段階についてはもちろん、当時の男子が科挙を受けるためにどんな環境にいたのかをその母親の胎教から説明するなど、こと細かく受験生の背景がわかります。他にもドラマで文秀が見た不思議な夢のエピソードのような、科挙にまつわる幽霊話や受験生の不思議な体験談といった説話も数多く紹介されており、読み物としても十分楽しめます。挙人(郷試合格者)に騙されて捨てられた女の霊が試験会場で恨みを晴らそうとする話や試験会場で起こる悲喜こもごものドラマも紹介されています。
ある箇所では当時の受験生たちが苦肉の策を講じて作ったカンニングアイテムのあれこれなども紹介されており、試験を前に今も昔も変わらない人間の様子を知る事が出来ます。これを読めば、文秀がどんな舞台を経て物語の登場人物となったのかをより詳しく理解出来るでしょう。

あらすじ|NHKドラマ「蒼穹の昴」

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