動物と子どもが主役の映画は、ついつい泣かされ、見せられてしまう。彼らの無作為の芝居にまいってしまうからだろう。
ただ、それと映画の出来栄えは別問題である。泣かされたからといって、出来が良いとは限らない。見終えた後、「騙された」と悔しがる作品も多いのだ。
この『クイール』は、そんな動物がテーマの映画であっても、しっかりと作られ、いろいろと考えさせられた。監督が崔洋一、脚本が丸山昇一だから、それほど外れはしないだろうと期待もしていたが。
一匹のラブラドール・レトリーヴァーの子犬が、盲導犬になるため訓練士・多和田(椎名桔平)に預けられることになった。腹部に鳥が羽を広げたようなブチがあることから「クイール」と名付けられる。
1年間はパピーウォーカーの仁井夫妻(香川照之、寺島しのぶ)によって育てられ、それから盲導犬センターで訓練を受けることになる。
やがて、盲導犬として成長したクイールは、視覚障害者の渡辺(小林薫)のもとで働くことに……。
実在した盲導犬をモデルとしているだけに、訓練センターや盲導犬の生涯がきちっと描かれ、興味深い。
愛情や温もりといったものは、犬と人とでも十分に通じ合うのだろう。そのとき、相手も「生命」ある生き物であると、改めて認識させられるのである。目の前に広がる無気質な世界に欠けているのは、そうした温度なのだろう。
『クイール』、盲導犬と人々との触れ合いを温かいタッチで描く。
スタッフ: 監督:崔洋一/原作:(写真)秋元良平、(文)石黒謙吾/脚本:丸山昇一、中村義洋/撮影:藤澤順一/音楽:栗コーダーカルテット/美術:今村力/照明:金沢正夫/録音:小野寺修/編集:川瀬功キャスト: 小林薫/椎名桔平/香川照之/戸田恵子/黒谷友香/寺島しのぶ/名取裕子
(C)2004 「クイール」フィルムパートナーズ
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