「イニョプの道」一夜にして令嬢から奴婢=下女に落とされた厳しい身分制度って?予告動画

2018年09月10日10時50分ドラマ
©JTBC Co., Ltd.

韓国ドラマ「イニョプの道」は韓国では「下女たち」というタイトルで放送された作品で、王権をめぐる陰謀に巻き込まれ、一夜にして良家の令嬢から下女の身分に落とされた女性イニョプの愛と闘いの物語!ドラマ視聴の前に朝鮮時代の下女がどんな存在だったのかを解説!本作はDVDも好評発売中で予告動画はDVD公式サイトで公開中だ。

朝鮮王朝(系図)の身分制度は基本的には前王朝の高麗時代(系図)と同じ。王族に継ぐ最上位に両班、次に中人、常民(良民、平民)、賎民(奴婢)と続く。奴婢が最下層の民で“奴”は男性、“婢”は女性を刺す。「推奴-チュノ-」第23話では、この2文字を使ったとても悲しくて素敵な演出がある。
「イニョプの道」の原題にも使われている“下女”というのは、雑用係をこなす婢の事。

「イニョプの道」の主人公イニョプは、この身分制度の最上級の両班の階級にいた超お嬢様。だが、ある陰謀のために、同じく両班の恋人との挙式の日に奴婢の身分に落とされてしまう。そもそも、この身分階級は手柄や懲罰により頻繁に入れ替えられるのだ。そのほとんどが階級を落とされることが多いが、「ホジュン 宮廷医官への道」「ホジュン~伝説の心医~」などの主人公のように特殊技能(医術)によって、両班の身分を手に入れることもできた。「宮廷女官 チャングムの誓い」「馬医」も同様。

国政を担う官職につくことができるのは“両班”だけ。但し、両班は儒教しか勉強できない。第4代の世宗王が“ハングル(国字)”を創ったが、両班たちがこれを必死で阻止したのも、誰にでも文字が読めるようになると平民でも知識を得ることができ、自分たちの地位が脅かされるというのも理由の一つだった。こうした事情をドラマにしたのが「根の深い木 -世宗大王の誓い-」だ。

もっとも、儒教以外の外国語、医学、法律、天文、数学などの雑学といわれる実用的な学問は“中人”が学んだ。王朝の中期以降はこの中人が力を持ってくる。特に、外国語を学んで明や清の通訳として活躍した中人の中には、都合のいい通訳で私服を肥やした者も多くいた。朝鮮王朝三大悪女のひとりにも挙げられ、「トンイ」に登場する張禧嬪(チャン・ヒビン)の家柄も通訳をした“中人”階級。

“奴婢”は、物と同じく売り買いの対象とされた。普段の生活は“常民(平民・良民)”と変わらない。“常民”は農業、商業、工業を行う平民だが生活はとても厳しく、もっと政治の廃退が進むと、生命を維持する最低の環境がもらえる奴婢に自らなりたがる常民もいた。

「イニョプの道」の男性主人公のひとりであるオ・ジホがチャン・ヒョクと共演した「推奴-チュノ-」の舞台となった17世紀中盤ごろは、半島は闇の時代で、財政も疲弊し国民の半分以上が奴婢に転落していた。「推奴」でもオ・ジホは陰謀で奴婢に落とされ、チャン・ヒョク扮する逃げた奴婢を捕まえる推奴師に追われる役を演じた。朝鮮時代を舞台にした多くのドラマは王朝物語が多く、その中で奴婢は登場するが、奴婢を主人公にしたドラマは意外に少ない。それを代表する「推奴」と「イニョプの道」の両作品でメインキャストを担当するとは、オ・ジホは韓国俳優一の“奴婢通”かも?

ちなみに、「イ・サン」の主人公第22代の正祖王は、「奴婢を品物と同じように売り買いの対象にするのは許しがたい」として、国が管理する奴婢をなくした。詳しくは「正祖のやった偉業」「第54話詳細あらすじ」を参考にどうぞ。

※身分制度についてもっと詳しく知りたい方は、「朝鮮王朝」豆知識の「◆身分制度」「◆官職の品階」「◆官職の公服」を参考にしよう。

いにょぷ「イニョプの道」は、当時の厳しい身分制度さえ知っておけば十分ドラマを楽しめる。だが、その背景を知ればもっとドラマが楽しめるはず。【「イニョプの道」を2倍楽しむ】では、舞台背景や豆知識、キャストの魅力などを紹介しているので視聴の参考にどうぞ。放送にあわせて各話のあらすじと見どころも紹介している。

kandoratop【作品詳細】【「イニョプの道」を2倍楽しむ】

「イニョプの道」DVD公式サイト

※この記事は、NHKBSプレミアムにて2016.4.3~8.21(毎・日21:00-22:00、初回は20:45分より)に紹介したものをリライトしています。