【韓ドラコラム】「商道~サンド~」ドラマ成功の鍵は名優イ・ジェリョンの生真面目さ?

2018年05月03日20時20分ドラマ
© 2001-2 MBC

韓国ドラマ「商道-サンド-」は、2001年~2002年に韓国で放送された作品!お人好しだが理不尽な困難を一つ一つ乗り越え、頭脳明晰、努力を惜しまない主人公サンオクの姿は、今もなお多くの人々に感動を与え、最後まで応援されたのでは?今回は色あせないドラマの魅力について考えてみたい。

「商道-サンド-」は、チェ・イノによる同名ミリオンセラー小説が原作。朝鮮王朝23代国王の純祖時代に、国家の税金の半分を収め、財産は家族に残さずすべて国に寄付し、人々の尊敬を一身に集めた実在の人物を描いている。ちなみに純祖は、22代王正祖の次男で、イ監督のドラマ「イ・サン」最終回に登場した世子。そして、「雲が描いた月明り」で、パク・ボゴムが演じた世子の父王のモデル。

「宮廷女官チャングムの誓い」「ホジュン 宮廷医官への道」に並ぶイ・ビョンフン監督の三部作とも言われた本作。「ホジュン」の63.7%や「チャングム」の57.8%ほどの視聴率は取れなかったが、同時間帯放送の大ヒット作「女人天下」や話題作「冬のソナタ」を向こうに回して最高33.1%、平均視聴率23.8%は大健闘といってもいいだろう。(韓流ドラマ視聴率TOP30(1990年~2010年))

ストーリーもお決まりの苦難の中からの成功記で、ラブラインも「ホジュン」をなぞっており、別段目新しいものはないとも言われた本作だが、イ・ビョンフン監督とチェ・ワンギュの作家コンビの作品はやはり安心して視聴できる。作品の世界にどっぷりつかり、丁寧で緻密に計算された一つ一つのエピソードに、後になって「あー、こういうことだったのか、ここにつながるのか!」と、まるでお気に入りの本を繰り返し読み直すように、DVDが擦り切れるほど観返してしまう。

しかし、本作の成功の一番の決め手は主人公のサンオク役の俳優イ・ジェリョンではないだろうか。これまで韓国ドラマに登場する豪商といえば、豪放磊落なイメージがあった。ところがイ監督はちょっぴり線の弱いイ・ジェリョンをキャスティングし、これまでの豪商のイメージを破り穏やかでありながら強靭な精神力を持つ新たな商人像を形にしたのだ。
当時、「ホジュン」のチョン・グァンリョルに比べ、カリスマ性がないといわれたイ・ジェリョンだったが、視聴者は、そんな線の細めの主人公に肩入れし、最後まで彼の成功を願った。これこそがイ監督の狙いだった。

しかしイ監督は、そんなイ・ジェリョンの演技についてどうしても納得のいかないところがあったようで、自著『韓流時代劇の魅力』(Amazon)で、「大勢の俳優の中でイ・ジェリョンを何度も叱り飛ばした」と、語っている。
その理由はイ・ジェリョン自身の生真面目さに起因していた。

55話の官妓生になったタニョンと再会した場面と、56話で妻のミグンが愛し合う二人のために婚礼用の寝床を用意した場面。
イ監督は、官妓になってもなおタニョンを深く愛するサンオクを見せたかったのだが、イ・ジェリョンは「妻でもない女性を心に抱くのは道徳的に正しくない」と考え、監督が要求する演技が出来なかったのだ。
しかしこの道徳心こそが商人の鏡と言われるサンオクそのもののような気がするのだが…。視聴者はどう感じただろう?ぜひ、このシーンをもう一度見直してほしい。

イ監督から散々叱られた俳優イ・ジェリョンも、その後は「不滅の李舜臣(イ・スンシン)」「帝王の娘スベクヒャン」では、圧倒的な存在感の中にも優しさを見せる独自の演技スタイルをつくり上げた。

地味な作品ながらも見ごたえたっぷりの「商道」は、「客主」「キム・マンドク~美しき伝説の商人」などの朝鮮時代を舞台にした商業ドラマを見るうえでも参考にしたい欠かせない一作だ。
【「商道-サンド-」を2倍楽しむ】には、イム・サンオクや時代背景、各話の詳しいあらすじと見どころなどをまとめて紹介している。

なお、朝鮮時代を舞台にしたドラマはドラマの年表:朝鮮王朝で確認できる。

「商道‐サンド‐」公式サイト

kandoratop【作品詳細】【「商道-サンド-」を2倍楽しむ】