「逆賊-民の英雄ホン・ギルドン-」最終回考②:ドラマが伝えたかったこと、ドラマのその後は?

2018年09月06日17時50分ドラマ
Ⓒ 2017 MBC

韓国で知らない者のいない英雄、ホン・ギルドンをこれまでにない解釈で描いた韓国時代劇「逆賊-民の英雄ホン・ギルドン-」の最終回は、悪人たちを一掃した胸のすく結末だった!今回は、そんなドラマが伝えたかった事、最終回のその後について考えてみた…予告動画は作品公式サイトで公開中だ。(最終回ネタバレ)

※各話のあらすじと見どころ、時代背景や豆知識、実在のホン・ギルドンや燕山君については【「逆賊」を2倍楽しむ】で紹介している。

逆賊■新たな切り口で描かれた政変
燕山君(ヨンサングン)による長きにわたった暴政を「中宗反正(朴元宗の乱)」という政変でピリオドを打った最終回。本作は、稀代の暴君燕山君に実在の英雄ホン・ギルドンを立ち向かわせ、政権崩壊へと導かせるという、これまでになかった新たな切り口で描かれた。
もちろん、実際にホン・ギルドンが政変の陰にいたとは歴史書のどこにも描かれていないし、燕山君と対峙したという記録もない。
それでも、燕山君の狂気に走る理由づけや、王がギルドンたちに追い詰められていく様子は、とてもフィクションとは思えないリアリティのある展開だった。

逆賊■ギルドンたちの怒りと伝えたかったこと
ギルドンたちは理不尽な身分差別に怒った。そして、高貴な身分だったが民心を得ることができなかった燕山君と、奴婢出身でも民心を得ることに成功したホン・ギルドンの拮抗した対立を通して、指導者とはどうあるべきかも深く考えさせてくれた。
劇中のセリフにあった「ホン家は財物を盗んでいるのではありません。その者は殿下の百姓を、 百姓の心を盗んでいるのです…」まさに、ギルドンは原作のサブタイトルでもある「民を盗んだ盗賊」だった。

悪人たちはそれぞれ成敗を受けたが、特権意識の塊だったパク氏と息子ジョンハクの転落劇は秀逸だった。パク氏たちはあれほど忌み嫌っていた「奴婢」という身分に落とされ、自分たちを救った「廃妃の手紙」で自爆、息子はギルドンの父アモゲと同じく「鎌」で主を殺そうとして投獄させられ、まさに天に唾した報いを受けた。悪人たちの末路については最終回考①で詳しく解説。

逆賊■脚本の素晴らしさに脱帽!
パク氏母子の転落劇に、改めて脚本の素晴らしさに脱帽したが、ハングルで書かれた初の小説『洪吉童』(著:許筠)を彷彿とさせる『ホンチョムジ伝』をギルドンの妻に執筆させ、この結末でドラマを終わらせるという粋なエンディングにも畏れ入った。
ここが見どころ①でも紹介したが、本作大ヒット一番の要因は間違いなく脚本の面白さだろう。脚本を手掛けたファン・ジニョンが、2017 MBC演技大賞で脚本賞を受賞したのも納得だ。

七日の王妃Licensed by KBS Media Ltd. ⓒ 2017 KBS. All rights reserved稀代の暴君だけに、燕山君が登場するドラマは実に多いが、その中で彼の狂気を加速させた理由づけをロマンスとして描いた作品に「七日の王妃」がある。
こちらはキム・ジソクが怪演した燕山君をイ・ドンウクが憂いに満ちた眼差しで魅せてくれる。
詳しくは燕山君はなぜ稀代の暴君になったのか?で紹介。

逆賊■ドラマのその後は?
朝鮮史上初のクーデターによる君主交代で、12年間に及ぶ燕山君とこれを利用した宮中勢力の虐政は終わりを告げ、政治の主導権は勲旧派に戻った。(党派の歴史表参照)。つまり、名君と謳われた9代王・成宗以前の状態に戻ってしまったのだ。

それでも11代王・中宗は即位後、燕山君の政治で乱れた国の綱紀を正して、政治水準を上げるために、王の諮問機関を担っていた弘文館を強化して学問研究を奨励した。こうして成宗のように王道政治を目指そうとしたが、何しろ担がれて王位に就いただけに、反正功臣たちの力が強く中宗は朝廷の主導権を握ることはできなかった。詳しくは第11代・中宗は担ぎ上げられた弱腰の王?で解説。

saimudan_300(C) Group Eightこの中宗の苦悩を「師任堂(サイムダン)、色の日記」の時代劇パートでは猜疑心が強く弱腰の王として描いている。他にも「オクニョ 運命の女(ひと)」「宮廷女官チャングムの誓い」「女人天下」の序盤と、中宗が登場するドラマも多い。【ドラマの年表:朝鮮時代】で確認してみよう。

劇中のセリフにもあったように、史上初のクーデターによる王のすげ替え。朝鮮ではこれまでにも2つの「王子の乱」により政変が起きているが、クーデターを起こした本人が王位に就いたのはこれが初めて。
六龍©SBS「六龍が飛ぶ」でユ・アインが演じた王子イ・バウォンは初代王の治世で「王子の乱」を起こしたが、自ら王位に就いたのはワンクッション置いた第3代(太宗)。
またパク・シフ主演「王女の男」では首陽大君(スヤンデグン、第7代王・世祖)が「癸酉靖難」を起こして王位に就いたが、これも強制的ではあるが、譲位という形を取っている。

当時の王の日常の行状は実に細かく日記に記され、王でも見ることができなかった。しかし王たちは後世の名声を何より気にしていた。イ・バウォンや首陽大君がこんなに回りくどい方法で王位に就いたのは、自らの行動が黒歴史として日記に残らないようにとの苦肉の策だったのだ。(歴史書については【朝鮮王朝豆知識】「◆歴史記録書」参照)

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