ヨ・ジング主演「王になった男」最終回考:ハソンを愛した王妃とハソンに惚れた3人の忠臣!ドラマ結末と正史

2020年11月13日09時05分ドラマ
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大ヒット映画をリメイクした韓国ドラマ「王になった男」は、登場人物を架空の人物にすることでよりドラマチックな展開になっており、最終回もハソンと都承旨の友情を感じさせる映画版に対して、ドラマ版では男同士の絆に泣かされ、ハソンと王妃ソウンとのロマンスで胸をキュンキュンさせて幕を閉じる!ここではそんなドラマの最終回について考えて見た。予告動画は公式サイトで視聴できる。

【映画版との違い】



王になった都承旨イ・ギュ役(キム・サンギョン)■ハソンの王材に惚れた都承旨イ・ギュ
23話「王宮で生き抜く心得」を引き合いに自分を見捨ててくれというイ・ギュ。それに対して22話の究極の選択で劉備になぞらえて答えを出したハソンは、イ・ギュの忠心を趙雲に例えた。趙雲は劉備が魏の曹操に追われて逃げたときに、劉備の妻を助け勇ましく戦った人物で“五虎将軍”の一人とされた名将。四字熟語“一身是胆(いっしんしたん)”は、劉備が趙雲の勇ましさを称えたという故事からできた言葉。
そんな忠臣イ・ギュが、王ハソンの腕の中で「王様をお側で守らなくてはならないのに…」と謝った後、知恵者らしくシン・チスらの悪だくみを砕く作戦を遺言する。大妃一派の大義名分は“密書”の存在。当時、王族や名のある者たちは何より後世に悪名を残すのに怯え、民を怒らせるのを怖れ、大義名分が必要だった。だからイ・ギュは「王ハソンによって処刑させた逆臣イ・ギュの死屍を民の前に晒すことで、王が密書に無関係だと証明し、大妃派の大義名分を奪ってほしい」と策を授けたのだ。大妃が半日の休戦を簡単に受け入れたのもそういう事情。もっともハソンは忠臣の死を汚したりしない。大軍を率いて先頭を走るシン・チスに一人でいる自分の姿をチラ見させ、シン・チス一人が門に入った瞬間に門を閉じるという簡単な作戦で捕えた。また、大妃は、シン・チスの部下を使って、負けを認めた手紙を送って大妃をおびき寄せて公然と罪を暴いた。

王になった男■ハソンの愛嬌に惚れたチョ内官
堅物に思えたチョ内官が愛嬌のあるハソンの魅力にどんどんハマり、誰より早くハソンの温かい人柄と機転を認めて、二人きりの時にも敬語を使い、ハソンがいない場面でも「王様(チョナ)」と呼んだ。ハソンに「圍籬安置(ウィリアンチ)」という言葉を教えたためにイ・ギュから大目玉を喰らい、王妃とのロマンスを見て見ぬふりをしたと叱られ、ハソン不在時には一人芝居を延々とさせられた。ハソンからも干し柿でからかわれたり、笑わせようとへんちくりんな「チョ内官」の似顔絵をプレゼントされたり。チョ内官はそんなハソンが可愛く、2人は親子のような関係を築いた。譲位して王宮を離れるときには、泣きべそ顔で「ついていってはいけませんか?」というも断られる。でもハソンはチョ内官を内官の長である尚膳(従二品)に推薦し、自分を温かく見守ってくれたように新王にも仕えてほしいと頼んだ。チョ内官はハソンの名前を“夏仙(ハソン)”と漢字に当て、「夏の神仙」の絵をプレゼント。そこには「夏の太陽のように民を公平に照らし、万物を輝かせてくれたハソンの姿」が描かれていた。

王になった男■ハソンの優しさに惚れたチャン武官
誰よりも剛直なチャン武官は、自分を騙したハソンやイ・ギュを恨んだが、すっかりハソンに惚れてしまった。最終回、王宮を去るハソンの後を密かに尾行し、ハソンに見つかっても「どこまでも王様についてお守りする」と、強情なチャン武官。チャン武官がここまでハソンに惚れたのは9話のハソンの言葉だろう。願いを聞かれたチャン武官は、「命懸けで王のために忠誠を尽くして死ぬのが希望」と当然のように答えたが、ハソンは、「立派だが、私はそなたが私のために死ぬより、自分のために生きてくれる方が嬉しい」と返した。王の盾として死ぬのが当たり前と信じて生きてきた彼は、自分を人として尊重してくれる優しい言葉に初めて触れたのでは?だが、大妃一派の襲撃からハソンを守るために、奇しくもチャン武官の希望通りに命を落としてしまった。

王になった男■ハソンに恋し、愛した王妃ソウン
回想シーンでしか描かれなかった夫イ・ホンとの幸せなひととき。王位に就いてから暗殺の恐怖とシン・チスの怪しいくすりで心身を蝕まれ暴君化した夫。そんな夫がある日、明るく優しくなり、躓いたら小石を足ではじいてくれ、父を救ってくれ、どんどん惹かれていく。ところがハソンが偽物だと知り、愚直すぎるソウンは民を欺く行為が許せなかった。だが彼女がそれ以上に怖かったのは自分が愛したのが王イ・ホンなのか、偽物ハソンなのか?その答えが出せずに17話で自殺を図ろうとしたが、暗殺者に命を狙われたことで、ハソンへの愛に気づいた。
最終回で、待ち合わせの場所に来たのはハソン死亡の知らせと、自分がプレゼントした輪図(羅針盤)(9話)。だが、死体が消えたということでソウンはハソンを待ち続ける。
2年経ったある日、道化を見学したソウンはそれがハソンの妹ダルレと知らずに見学料として過分な指輪を渡した。そして道で少女のハシバミの願懸けの言葉を聞き、ハソンが生きていることを確信する。必死でハソンを探すが見つからず、葦の原でハシバミを噛んでハソンとの再会を一途に願う。すると夢にまで見たハソンが現れた。涙で「夢なら近づかないので消えないでください」といじらしいソウンに、「長く待たせて済まなかった」とハソン。どうやらハソンは矢に射られた後、長い眠りについていたようだ。「道に迷い、遠回りしてもいつか私の元へ来て下さると信じていました」とソウンが心で話しかけ、「夢でも会いたいとはもう思わないだろう。これからはずっと一緒だから」と心で答えるハソン。

王になった■ドラマの結末と正史
ドラマのエンディングテロップが下の文章だ。

「癸亥(みずのとい)の正月、王が反乱を鎮圧し善政を施すと、民は王の功績を褒めたたえた。王妃を廃し、譲位後まもなく王は崩御した。王によく似た道家がいたため、存命だと噂が立ったが真相は不明である。」

テロップにされると何やら事実と思ってしまいそうだが、正史に残るのはまったく違う。

「1623年3月に反乱が起きる。これを「癸亥政変」または「仁祖反正」と呼ぶ。「廃母殺弟」の大義名分を掲げて綾陽君が光海君から王位を簒奪し1623年第16代王・仁祖になる。廃位された光海君は、15年以上も配流地で過ごし、67歳で息を引き取る」

※随分と大雑把に書いたが、このあたりの事情を詳しく描いているのが「華政(ファジョン)」の中盤だ。

正史では大妃と手を組んだ綾陽君が反乱に成功しているが、ドラマの反乱は失敗。ドラマ版の綾陽君ともいえる晋平君は、大妃に裏切られたうえ、せっかく集めた3千の兵を奪われ、医者にも見てもらえず血を流しながら命果てる。なんとも憐れな死にざまだ。

「王になった男」の魅力はまだまだある。【「王になった男」を2倍楽しむ】では、各話のあらすじと見どころ、韓国での評判、主人公のモチーフになった朝鮮王朝の王・光海君についてなどをまとめて紹介しているので、視聴の参考にどうぞ。

「王になった男」作品公式サイト

kandoratop【作品詳細】【「王になった男」を2倍楽しむ】