「私の国」考:朝鮮開国で鄭道伝(チョン・ドジョン)不在のワケは?“ナエナラ”と“ウリナラ”

2021年05月24日10時00分ドラマ
ⓒ My country the new age SPC. all right reserved

「私の国」は、架空の人物であるフィ(ヤン・セジョン扮)とソノ(ウ・ドファン扮)を、イ・ソンゲやイ・バンウォンといった朝鮮時代初期実在の人物と絡ませた本格時代劇!今回は本作と同じ時代を描いた作品との違いや見どころについて考えてみた!予告動画は作品公式サイトで視聴できる。



「私の国」の舞台は高麗時代の終わりから朝鮮時代の初期(詳しい時代背景は【エピソード0】で紹介)。
私の国激動の時代の中で、父親が罪人の汚名を着せられ、どん底の生活を余儀なくされているソ・フィと、高官の父親を持つが、母親が奴婢出身のためその存在を認めてもらえないナム・ソノ。出自は違っても、剣や弓の腕を競い合う仲の良い幼なじみだった二人が、遼東征伐のために行われた武科試験を機に決別し、それぞれの"私の国"を求めて争いに身を投じていく姿が描かれる。

■“ナエナラ”と“ウリナラ”
「私の国」は、「六龍が飛ぶ」とほぼ同じ時代を背景にしており、ほかにも「龍の涙」「大風水」「鄭道伝<チョン・ドジョン>」など、激動の時代を舞台にした作品は多い。
こちらにドラマの年表と王朝系図があるので確認しよう。
●高麗時代:【ドラマの年表】【王朝系図】
●朝鮮時代:【ドラマの年表】【王朝系図】


私の国ep8だが、そうした作品と「私の国」が大きく違うのは、「六龍が飛ぶ」などほかの作品が王族や重臣たちを中心に描くのに対して、「私の国」は3人の若者、ソフィ(ヤン・セジョン扮)、ソノ(ウ・ドファン扮)、ヒジェ(ソリョン扮/AOA)を中心に、それぞれの理想とする国のために戦う点だ。つまり、ほかの作品が政策を掲げて“我々の国(우리나라=ウリナラ)”を目指すのに対して、「私の国」は「満足に飯が食える国」「庶子だとバカにされない国」、「戦争のない国」など個々に異なる“私の国(나의 나라=ナエナラ)”を目指す姿を描く。

私の国ep12他の作品で詳しく描かれる政治理念や政策、政治改革などは「私の国」では描かれない。序盤はイ・ソンゲ(李成桂)が王命に背いて「遼東征伐」から引き返すという事実だけで、その理由は詳しくは描いていないし、朝鮮王朝を開国してからも、イ・ソンゲの5男であるイ・バンウォン(李芳遠)が開国の際の貢献を正しく評価してくれなかった父に怒り、反乱を起こすという、一部だけを切り取って描いている。

■開国の立て役者チョン・ドジョン不在のワケは?
私の国ep7だから、朝鮮王朝の国家プランの立案者で、同時代の作品では必ずと言っていいほど登場するチョン・ドジョン(鄭道伝)も、「私の国」には無用の人物なのだ。「三峰(サンボン)」という彼の号がセリフの中に何度か出てくるが、その国家プランはナム・ジョン(アン・ネサン扮)の口から「開国」(第4話)と「臣下の国」(7話)以外には具体的な説明など出てこないし、12話でちらりと姿を見せるが顔は映らない。下手にチョン・ドジョンが出てくると、建国理念なども描くことになり、とても全16話では収まらないだろう。

私の国ep16■韓国時代劇の新境地を開いた!
ドラマを見る目は厳しいものの、日本に比べて歴史考証が緩いとされている韓国だが、最近はそうでもない。ほぼ同じ時期のチョン・イル主演「ヘチ 王への道」は、作品としての評価は高いものの、「史劇と違う」といった意見も多く聞かれた(参:韓国での評判)。ところが本作ではそうした声はほとんど聞かれなかった。細かい事象は描いていないのだから当然と言えば当然だ。一方で個々の夢を描くだけに、「何を描きたいのかわからない」といった声があるのも納得できる。だが、歴史的人物と架空のキャラクターを融合させ、スピーディな展開とアクションで魅せた本作は、韓国時代劇の新境地を開いた名作といえよう。

【「私の国」を2倍楽しむ】では、各話の詳しいあらすじと見どころ、ネタバレなしのあらすじ、時代背景やキャラクター紹介、インタビューなどまとめて紹介しているので、視聴の参考にどうぞ。

「私の国」は、好評発売、レンタル中で、BS朝日にて2021年5月現在放送中だ。

BS朝日「私の国」番組公式サイト
 2021.05.10 月~金08:30-10:00
「私の国」公式サイト

kandoratop【作品詳細】【「私の国」を2倍楽しむ】