「ノクドゥ伝」と「星から来たあなた」の2つの共通点(光海君と烈女伝)を考える!

2021年05月30日14時30分音楽
ノクドゥ伝:Licensed by KBS Media Ltd.©2019 KBS. All rights reserved
星から来たあなた:© HB ENTERTAINMENT

韓国ロマンチック時代劇「ノクドゥ伝~花に降る月明り~」(チャン・ドンユン×キム・ソヨン)と、ファンタジーロマンス「星から来たあなた」(キム・スヒョン×チョン・ジヒョン)!一見何のつながりもないような2作品には、ある共通点があった!両作品は好評発売レンタル中で、両作品公式サイトで予告動画が視聴できる。
※以下、少しネタバレがあるので、気になる方はドラマ視聴後にご覧ください。



「ノクドゥ伝~花に降る月明り~」は、離島で暮らす文武に長けた青年が、ある日何者かに襲撃され、真相を暴くため女だけが住める“寡婦村”に、未亡人になりすまし潜入。そこで男勝りな妓生見習い女子と同じ部屋で暮らすうちに、互いに惹かれ合うようになる。しかし、2人にはそれぞれ時の王にかかわる複雑な事情を抱えていた。

「星から来たあなた」は、400年前に地球に降り立った異星人で現代の韓国において大学で教鞭をとっている男性と、“韓流女神”と呼ばれる傲慢なトップスターとの奇跡のような運命の恋を描くSF・ラブ・ファンタジー。

■共通点1:光海君
時代劇とSFファンタジー。一見何のつながりもないようだが、「ノクドゥ伝」が17世紀、朝鮮王朝第15代王・光海君を時代背景にしており、「星から来たあなた」で主人公がUFOに乗って地球に降り立ったのも、400年前の光海君の治世だと紹介しており、第5話の時代劇パートでは、朝鮮時代の民が突然空に現れた謎の物体に大騒ぎする様子も描かれる。このような現象については1609年(光海1年)に実際にあったと、歴史書『朝鮮王朝実録-光海君日記』にも記されている。詳しくは豆知識で紹介。

※光海君は、第14代王・宣祖の次男だが、庶子(側室の産んだ子)だった。壬辰倭乱のときに、逃げた父王の代わりに実質的な王の役目を務め、庶子という理由で反対もあったが、辛うじて王位に就いた。しかし、王位を脅かす継母を廃位し、義兄弟を処刑したことで暴君とされ、クーデターにより廃位、流刑され、済州島で生を終えた。だがその政治手腕は高く評価され、近年では再評価されている。光海君について詳しくは時代背景と朝鮮第15代王・光海君で紹介。

ノクドゥ「ノクドゥ伝」より■共通点2:未亡人の美徳『烈女伝』
「ノクドゥ伝」前半のメイン舞台となる寡婦村は夫を亡くし、婚家から逃げてきた寡婦(未亡人)たちを守るための女性だけが暮らせる村。第1話で、チャン・ドンユン扮するノクドゥが、舅に追われている未亡人と服を交換して助け、女装のまま寡婦村に潜入する。
一方、「星から来たあなた」第1話で、キム・スヒョン扮する異星人ミンジュンは、1609年に15歳の少女を助ける。その少女は婚礼を挙げたものの婚家に向かう前に夫に死なれた幼い寡婦だ。

当時暗黙の了解として「寡婦は夫の後を追って死ぬことが美徳」とされていた。「星から来たあなた」第2話では、少女が『烈女伝』を読まされ、その美徳に倣って死を強要されるが、それに納得できずに逃げ出し、そこをミンジュンが助けたと、その経緯が描かれる。
一方、「ノクドゥ伝」では、烈女団として超個性的な女性たちが寡婦村を守る英雄として登場する。

星から来た「星から来たあなた」より■『烈女伝』とは?
そもそも烈女とは、「気性が激しく操(みさお)がかたい女」という意味だが、朝鮮王朝と同時代の中国(明清時代)では「生命を犠牲にして節操を守った女性」をこう呼んでいたらしい。孔子の教えを核とした儒教を国の基本理念としていた朝鮮時代では序列や形式が厳しく、女性には貞節と従順が重要な徳目とされていた。「星から来たあなた」第2話で少女が読まされた『烈女伝』は、中国に古くから伝わる女性の理想を集めて著した教訓書。その内容は夫、または婚約者の訃報を知り、死をもって殉じようとしたというようなもの。

こうした烈女が理想とされていた朝鮮時代には、「生涯亡き夫を命懸けで慕い、さらにはその夫の後を追って死を選ぶ女性こそが最も模範となる女性」を烈女と称賛した。そして烈女を出した家や村の入り口に「烈女門」を建てたり、米や布などさまざまな物品を褒賞として与え、子孫にまで税金を免除したりもした。だから、「ノクドゥ」第5話では舅が下男と逃げた嫁を血眼に探して墓まで用意し、「星から来たあなた」でも舅が少女を殺害しようとし、第5話では「恩恵を受けるために烈女を装った偽装自殺」を疑われ実家に役人の手入れが入った。

一方で、当時“보쌈(ポッサム)”という風習もあった。これは、朝鮮時代に寡婦を連れ去り再婚させた風習。再婚が法的に禁じられていたため、寡婦を布で包み(包む=ポッサム)、連れ去る体にすることで再婚を可能にした。とはいえ、本人が知らないまま、“ポッサム=包む”という言葉通りに袋をかぶせられて連れ去り強制結婚に持ち込まれるのは、何とも恐ろしい。「テバク~運命の瞬間(とき)~」でチャン・グンソク扮する主人公の養父マングム(イム・ヒョンシク)がこのポッサム婚で、王も恋する美女と結婚したという設定になっている(詳しくは「テバク」第1話)。
また、5月現在NHK総合で放送中の「ヘチ 王座への道」主演びチョン・イルの新作ドラマ「ポッサム-運命を盗む」(韓国MBNにて5/1スタート)は、まさにこの連れ去り婚がテーマ。生計のためにポッサム稼業を営む男が、間違って王女をポッサムして繰り広げるフュージョン時代劇だ。これについては別に紹介する。

「ノクドゥ伝」も「星から来たあなた」もメインストーリーとは違うところで歴史の中の悲しい女性の運命を描いており、こうしたメッセージをくみ取るのも韓国時代劇の楽しみ方の一つだ。

「ノクドゥ伝」は、5月現在、BSふじで好評放送中だ。
BSフジ「ノクドゥ伝」番組公式サイト
 2021.05.20スタート 月~金10:00-10:57

DVD「ノクドゥ伝」公式サイト
DVD&Blu-ray 公式サイト

kandoratop
【作品詳細】【「ノクドゥ伝」を2倍楽しむ】
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