テレビ東京「馬医」最終回考:ドラマのその後とイ・ビョンフン監督が伝えたかったこと

2021年08月02日09時00分ドラマ
©2012-3 MBC

実在のひとりの人物を中心に、陰謀、家族愛、友情、そしてロマンスを描いた医療ドラマ「馬医」(全50話)を通して、イ・ビョンフン監督は何を伝えたかったのか?YouTubeに予告動画が公開されている。



「馬医」(全50話)は、17世紀後半を舞台に、馬の医者からやがて王の主治医にまでなった実在の人物、ペク・クァンヒョンの波乱に満ちた生涯ドラマチックに描くメディカル史劇。
【「馬医」を2倍楽しむ】で、各話のあらすじ(ネタバレあり、なし)や見どころ、時代背景、豆知識などドラマをもっと楽しむための情報を紹介している。

実在のひとりの人物を中心に、陰謀、家族愛、友情、そしてロマンスを描いた医療ドラマ「馬医」はいかがでしたか?本作も、史実とフィクションを抜群のバランスで描く、いかにもイ・ビョンフン監督らしい素晴らしい作品だった。
主演にミュージカル界のトップスター、チョ・スンウを引っ張り出したり、ヒロインのイ・ヨウォンには「善徳女王」を連想させる男装をさせたり、キム・ソウンが担当した王女をかわいい道化役にしてコミカル色を多くするなど、これまで以上に遊び心のある作品でもあり、時代劇初出演のイ・サンウから、イ監督の常連俳優まで、個性豊かな俳優陣のアンサンブルも見どころだった。

■最終回のその後
さて、最終回で王、顕宗(ヒョンジョン)は自分の命を救ったクァンヒョンを御医(王の主治医)に任命し、地位や名誉に興味のないクァンヒョンは、一度は断るものの医療改革のために御医の任を引き受け、常に民の声に耳を傾け、数々の医療改革を行っていった。ソンハは簪でもなく絹の靴でもなく、美しい鍼箱を手紙と共にチニョンに贈り清国へ旅立った。そしてともクァンヒョンとチニョンはついに夫婦になれた。
前史となる朝鮮王朝第16代王・仁祖の時代から始まったクァンヒョンの物語は、孝宗顕宗の時代に波乱の人生を送り、晩年は第19代王・粛宗の時代に大団円で幕を閉じた。モデルとなった白光炫も顕宗~粛宗の代に王や王族の病を治し、最終的には御医の地位までに上り詰め、粛宗は「白光炫は煮沸消毒による治療をよく行い、多くの結果を残しているから、この世の神医である」と称賛している。そして後年、「我が国の国の外科手術法(傷を引き裂く治療する方法)は白医師から始まった」と白光炫を手術の権威として評されている。

■イ・ビョンフン監督が伝えたかったこと
劇中、政治の腐敗や医療改革などを描く過程で、疫病に苦しむ人々の姿も描かれた本作。イ・ビョンフン監督は、史劇・時代劇の在り方について、「時代劇が単に昔話を聞かせるだけなら見る必要はない。何百年前の話でも現代の私たちと触れ合う部分がなければなんの価値もないのだ」と、自身の著書でも記している。

馬医今作では動物も大活躍!イ監督の同じメディカルドラマ「ホジュン」では“医師のあるべき姿”を、「宮廷女官チャングムの誓い」では 医食同源で“健康の大切さ”を教えてくれた。そして、本作ではこれまで史劇ではあまり描かれることのなかった動物と人間との交流を通して“命の大切さ”を教えてくれた。

第9回「謎の疫病」で、苦しむ患者たちのために不眠不休で働いたクァンヒョンやチニョンら医員たちの姿は、コロナ禍の中、最前線で働く全国の医療従事者たちに重なる。2021年7月31日0時現在、厚生労働省発表によると、国内での新型コロナウイルス感染症の感染者は34,372例、死亡者は1,006名。そして7月31日当日も、コロナ新規感染者は東京都の4,058人をはじめ、各地で感染拡大が続いている。クァンヒョンのように、患者のために命がけで働いてくれる医療従事者の方々が、激務から開放される日が来ることを心から祈りたい。(2021年8月1日)

■キャスト
ペク・クァンヒョン 役:チョ・スンウ
カン・ジニョン 役:イ・ヨウォン
イ・ソンハ 役:イ・サンウ
イ・ミョンファン 役:ソン・チャンミン
 ほか

テレビ東京「馬医」番組サイト
 2021.05.24-08.02 月~金8:15-9:11 再放送
 2016.01.07-03.16 月~金8:15-9:11
YouTube「馬医」予告動画

kandoratop【作品詳細】 【「馬医」を2倍楽しむ】