「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」最終回のその後:高句麗滅亡へ…コンム王子は王になれたのか?|栄留王、宝蔵王紹介

2022年04月03日21時30分ドラマ
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4月3日、NHKBSプレミアムで「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」が最終回を放送したが、気になる最終回のその後を高句麗第27代・栄留王、第28代・宝蔵王と一緒にご紹介、番組公式サイトには番組紹介ムービーやインタビュー動画など公開中だ。



最終回は、嬰陽(ヨンヤン)王が3万の大軍を率いて駆け付けて新羅軍を撃退したが、新羅の伏兵による矢の攻撃でタルがピョンガンを守って戦死してしまった。しかし、タルは仮死状態になる術を使って生きていた。ウォルグァン和尚によって密かに幽霊谷連れ戻されたが、術が未熟だったために記憶を失くしていた。一方、高句麗の未来を弟の嬰陽王に託して幽霊谷へ戻ったピョンガンは、死んだはずのタルと驚きの再会。和尚に事情を聞いたピョンガンは思い出の場所でタルに口づけし、タルは記憶をとりもどす…というハッピーエンドで幕を閉じた。
●最終回の完全ネタバレあらすじと見どころは⇒【最終回(第22話)あらすじと見どころ】で詳しく紹介。

■気になる最終回の後:第26代王・嬰陽王は隋と戦った
まず高句麗は嬰陽王のあと2代の王が続いて滅亡している。【高句麗系図】を確認しよう。また、ドラマ最終回で新羅の真興王と戦ったことになっているが、これは事実とは異なる。詳しくは実在の高句麗第26代王って?で解説。
嬰陽王の時代の最大の脅威は、中国の隋。なんと4回も侵攻を受けるが、いずれも凌いでいる。結局、隋に降伏はするものの、隋にとっても4回の高句麗への遠征で疲弊してしまい滅亡のきっかけを作ってしまった。一方、嬰陽王は降伏の条件である参内は実行しないまま、在位29年にして618年9月に死去している。

■唐に従属して暗殺:第27代・栄留王(生没:不詳~642年)
618年、嬰陽王亡き後、異母弟の高建武(コ・ゴンム)が第27代王・栄留(ヨンニュ)王となった。即位した618年は、中国ではちょうど隋(581年~618年)が滅亡して唐(618年~907年)が建国された。栄留王は直ちに唐に従属して高句麗を安定させようと考え、朝貢を行い「上柱国・遼東郡王・高句麗王」に冊封される。唐に対して子弟の留学の許可も求めるが、これは事実上の人質を差し出すということ。これが面白くないのは高句麗第2位の官位である太大兄(テテヒョン)の淵蓋蘇文(ヨンゲソムン)だった。淵蓋蘇文は唐からの自立を図ろうと栄留王と対立していた。そこで栄留王は淵蓋蘇文の暗殺を謀るが、642年、逆に淵蓋蘇文に暗殺されてしまう。
※ドラマ21話で祖国を裏切った罪で王宮追放となるチン大王妃。息子のコンム王子と涙の別れをし、「王子が王位につく時にまた会える」と約束したが、栄留王がコンム王子と考えられる。つまり大王妃の夢が実現したことになったが、結局臣下に殺されてしまう。

■高句麗最後の王:第28代・宝蔵王(生没:不詳~668年)
栄留王を暗殺した淵蓋蘇文によって王位に就いたのは、栄留王の弟(大陽王)の子・高宝蔵(コ・ポジャン)。淵蓋蘇文は自ら高句麗第1位の官位の大対盧(テテロ)となり、宝蔵(ポジャン)王を操り、実質的な高句麗の統治者となる。百済と新羅は激しい領土争いをしており、新羅から援軍を頼まれるが、宝蔵王は拒否。これにより高句麗と百済が連合し、三国の中で新羅が孤立。そこで新羅は唐に助けを求め、唐は新羅侵攻への停戦命令を出し宝蔵王はこれに従うが、淵蓋蘇文が停戦命令を無視する。怒った唐が高句麗遠征に乗り出すが、失敗。そんな中、660年、唐・新羅軍に百済が滅亡させられ、高句麗は淵蓋蘇文が中心になって侵攻を防ぐ。しかし665年に淵蓋蘇文が病に倒れてしまうと、高句麗は弱体化し、668年、唐・新羅軍に滅ぼされてしまう。宝蔵王は唐に投降して長安に連行されたが、処刑を免れる。その後、北方民族の靺鞨(まっかつ)が勢威を増してきたことで、唐は宝蔵王を「遼東州都提、朝鮮王」として戻すが、宝蔵王が靺鞨と結んで高句麗復興を図ったために、現在の四川省に流され、682年に死亡する。
※王は亡くなった後に諡号(しごう=生前の行いを尊んで贈る名)がつけられるが、在位中に高句麗が滅亡したために本名のまま宝蔵王とされた。嬰陽王と大陽王は同じ母親とされている。ドラマに照らし合わせると、チン大王妃にはもう一人息子がいたことになる。また、宝蔵王に助けを求めてきた新羅の使臣は金春秋(キム・チュンス)で命じたのは新羅の善徳女王。ドラマ「善徳女王」に登場する主要人物だ。

■三国統一を果たしたのは新羅
ドラマ21話、嬰陽王の台詞のなかで「三国統一の夢」を語るシーンがあるが、実際に三国が統一されたのは嬰陽王が亡くなってから50年後、しかも、高句麗ではなく新羅第30代・文武(ムンブ)王だった。

「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」で高句麗のその後が気になった方はドラマ「淵蓋蘇文」「大祚榮(テジョヨン)」をお勧め。また同じ時代を新羅目線で見るなら「花郎(ファラン)」「善徳女王」、百済目線なら「薯童謠-ソドンヨ-」「階伯〔ケべク〕」などいかがだろう。どの作品も三国が複雑に絡んでいるので、同じ時代を視点を変えて見られるのが面白い。【ドラマの年表:三国時代】でドラマを時系列に表にしている。三国の王系図もそれぞれ用意しているのであわせて参考にされたい。【高句麗系図】【百済王朝系図】【新羅王朝系図】【統一新羅王朝系図】

【「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」を2倍楽しむ】では各話のネタバレなしと完全ネタバレあらすじと見どころ、豆知識、時代背景、人物紹介などまとめているので視聴の参考にどうぞ。

NHK「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」番組サイト
 2021年10月31日-2022年4月3日 日曜21:00~22:00 日本初放送

kandoratop【作品詳細】【「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」を2倍楽しむ】