「マウス~ある殺人者の系譜~」鑑賞コラム|圧倒的クオリティを誇るクライムサスペンスに秘められた深遠なテーマとは?

2022年05月06日11時00分ドラマ
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イ・スンギ×イ・ヒジュン共演の韓国衝撃のクライム・サスペンス「マウス~ある殺人者の系譜~」のDVDリリースを目前に控え、ライター小田香による「マウス~ある殺人者の系譜~」の鑑賞コラムが到着した!予告動画は公式サイトで公開中だ。



「マウス~ある殺人者の系譜~」は、真面目で誠実な街の巡査と、殺人鬼に両親を殺害された刑事がサイコパスの中でも最も凶悪な存在“プレデター”を追跡する、本格サスペンススリラー。

 殺害した相手の頭部だけを切断し持ち去るという猟奇殺人事件が続発。その“ヘッドハンター殺人犯”に両親を殺された少年コ・ムチの目撃証言によって、サイコパスの天才脳外科医ハン・ソジュンが逮捕される。25年後、過去の事件を思わせる残忍な殺人事件が起き、刑事となっていたムチは真面目と評判の巡査チョン・バルムを相棒に捜査を開始する。

 『マウス?ある殺人者の系譜?』の簡単な内容をこのように書けば、多くのクライムサスペンスの一つだと思われるかもしれない。劇中描かれるキリスト教の7つの大罪をモチーフにした凄惨な殺人事件は『セブン』を、プレデター(捕食者)と呼ばれる頭脳明晰な犯人の存在は『羊たちの沈黙』を彷彿させる。こうしたエッセンスが巧みに織り込まれ、ハリウッド映画のレジェンド作と並べても遜色ない、ジャンルものとしてのクォリティの高さは確かに抜きん出ている。

 ただ、本作は単純なジャンルドラマではなく、犯人探しを主眼とした追跡劇でもない。最初は流される血の多さ、目を覆いたくなるような描写に戸惑いもする。次々に起こる事件に翻弄され、新たに生まれる悲劇にただ胸を痛めるしかない。予想はすぐに覆され、真実は容易に明らかにはならない。
だが見進めていくうちに、本作は人間の原罪や倫理観などに言及し、人が生きる意味を問いかけた優れたヒューマンドラマでもあるということがわかってくる。さらに冒頭から描かれる、サイコパスの遺伝子を持つと診断された胎児の中絶法案を成立させることで、重大犯罪のない社会の実現を目指す者たちの思惑が、全編にわたり不穏な影を落とす。

まさに“国民の弟”が投影された善良な巡警チョン・バルム
その内面の葛藤と苦悩をも見事に演じきったイ・スンギの凄み

 ダークで深いドラマの中で、序盤はイ・スンギ演じるチョン・バルムの笑顔が周囲を明るく照らし出す。人助けをして“国民の息子”と称されたバルムの設定には、“国民の弟”として人気を集めたイ・スンギ自身の姿が投影されているようだ。ただし、バルムはただのいい人ではないらしい、ということは薄々感じられる。バルムの身の上に何が起き、どう変化していくのか全く予断を許さない中、彼の葛藤と苦悩を見事に演じきったイ・スンギの俳優としての力量を改めて実感。本人が「俳優人生のフィルモグラフィーに残る作品」と語るように、彼にとって本作は大きなターニングポイントになったと言える。

復讐に燃える刑事・コ・ムチを演じるイ・ヒジュンがイ・スンギと共にドラマをけん引
そしてもう一人の主役、コ・ムチを演じた実力派のイ・ヒジュンは「俳優として共感するのが恐ろしいような役」と表現したキャラクターを、熱量の高い自在な演技で見せてドラマを牽引。新鋭パク・ジュヒョンの体当たりの演技も印象的だ。話題作『人間レッスン』で“怪物新人”と注目された彼女は、過去の犯罪被害のトラウマを抱えた娘ボンイという難役を熱演し、さらに評価を高めた。バルムとボンイが互いの恋心を確認し、つかの間ながら幸せを
感じる姿が切ない。また、元祖韓流スターのアン・ジェウクが、デビュー以来初の悪役となった“ヘッドハンター”役で登場。不気味な存在感を披露して驚かせた。
 
細部にまでこだわった脚本と演出が観る者の心を強く揺さぶる究極のドラマ
 先の見えない迷宮に足を踏み入れたような気にさせられる、複雑に編まれた脚本を手がけたのは『イルジメ[一枝梅]』や『ブラック?恋する死神?』などで知られるヒットメーカーのチェ・ラン。様々に推理する視聴者の予想の遥か先をいく展開で、本作20話に加え、プレデターの側から見たスピンオフドラマ2話も作られ、マニアファンたちを虜にした。ドラマ終了後もその熱は冷めず、シナリオ集が出版されたほど。そのシナリオを『ここに来て抱きしめて』のチェ・ジュンベ監督が、細部へのこだわりと登場人物の心情に寄り添った演
出で表現。“マウス”として生きざるを得なかった者たちの悲しみと共に、悲惨な目に遭い、死ぬほどつらい思いをしても、人は苦難を乗り越えることができるという前向きなメッセージも伝わってきて、最後まで心を強く揺さぶられる。
ライター:小田香

■キャスト
イ・スンギ「花遊記<ファユギ>」「九家(クガ)の書~千年に一度の恋~」
イ・ヒジュン『KCIA 南山の部長たち』「青い海の伝説」
パク・ジュヒョン「ゾンビ探偵」「人間レッスン」「半分の半分~声で繋がる愛~」
キョン・スジン「ハッシュ~沈黙注意報~」「トレイン」「青い鳥の輪舞〈ロンド〉」
アン・ジェウク「ドキドキ再婚ロマンス 子どもが 5 人!?」「光と影」「愛してる」
クォン・ファウン「元カレと旅する 5 日間(原題:イベントを確認してください)」「王女ピョンガン 月が浮かぶ川 」「医師ヨハン」
キム・ジョンナン「愛の不時着」「ドクター・プリズナー」「SKY キャッスル~上流階級の妻たち~」

■スタッフ
演出:チェ・ジュンベ「ここに来て抱きしめて」「最高の恋人(共同演出)」「白夜姫(共同演出)」
脚本:チェ・ラン「ブラック~恋する死神~」「神様がくれた14日間」「イルジメ〔一枝梅〕」

「マウス~ある殺人者の系譜~」
DVD-SET1 2022年5月11日(水)発売
DVD-SET2 2022年6月3日(金)発売
各20,900円(税抜19,000円)
※5月11日(水)よりレンタルDVD リリース開始!
※5月11日(水)よりU-NEXT にて独占先行配信開始!
発売・販売元:NBCユニバーサル・エンターテイメント
(c) CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved.

公式サイト
予告編

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