「風と雲と雨」最終回のその後:チョンジュンが予言した10年後、朝鮮はどうなった?

2022年06月09日08時30分ドラマ
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パク・シフ主演の韓国時代劇「風と雲と雨」最終回は大どんでん返しのハッピーエンドで幕を閉じる。予告動画はYoutubeにて視聴できる。

「風と雲と雨」は四柱推命とサイコメトリーをテーマに、朝鮮最高の観相師と霊能力を持つ王女、権力者たちの王位争奪戦を圧倒的な映像美で描く本格時代劇。



■予想外のハッピーエンド
チョンジュン(パク・シフ)とは共存できないと判断した興宣大院君(チョン・グァンリョル)。チョンジュンは大院君の手下の銃弾に倒れた。多くの視聴者はここでサッドエンディングを覚悟した。しかし第12話でボンリョン(コ・ソンヒ)がプレゼントした懐中時計が悲劇の結末をハッピーエンドに変えた。さらにあのチョ大妃(キム・ボリョン)が最終回で語った通りに義理堅いチョンジュンを助けてくれた。チョンジュンは新天地で愛するボンリョンと再会し、仲間たちと幸せに暮らした。

だが朝鮮は相変わらず大院君の暴政が続いている。それでも豪商イ・ドギュン(パク・ジュングム)が市場でクァク・ナゴン(後の独立家キム・グ(金九)の母)と出会ったり、新天地・延秋(ヨンチュ)で洋装のチョンジュンとボンリョンが仲間たちと一緒に「朝鮮元気でいるか ? ヤッホー ! 」と叫んだりさせて、チョンジュンが夢見た民主制を感じさせる素敵な結末となった。チョンジュン最後の独白で彼が夢見る世の中を語っている。
※ちなみに豪商ドギュンがクァク・ナゴンと名乗る少女に「いい名前」と言ったのは、「낙원=ナグォン」は「楽園」という意味だから。

※チョンジュンの夢⇒「民衆が、全ての民がこの世の主人であるべき世界。運命を乗り越えてそんな世の中を実現すること。それが私の運命だ、そして我々の運命なのだ」

■10年後、チョンジュン最後の予言は当たったのか?
ところで、作中でチョンジュンは数々の予言を実現した(決して当てたのではない。チョンジュン曰く、そうなるようにしたのだ)が、26話で大院君を激怒させた最後の予言は当たったのか?

※チョンジュン最後の予言⇒「10年以内に政治改革しなければ朝鮮は亡国の道をたどることになる」

では、ドラマの最終回がいつなのか特定し、歴史に照らし合わせて10年後の朝鮮がチョンジュンの予言通りなのか、検証してみよう。ここからは興宣大院君、高宗、明成皇后を中心の解説となる。3人についてはそれぞれ個別に紹介しているので、下の人物紹介に目を通しておくことを勧めする。
舅に疎まれた明成皇后はどんな女性?
興宣君は史実でも豹変したのか?
父に怯える気弱な王、高宗はどんな王?

 ▼ドラマのラストはいつ?
チョンジュンの最後の予言は、フランスとの戦いに勝った祝賀会の宴の席。「丙寅洋擾(ピョンイニャンヨ)」があったのは1866年。とすると予言の10年後は1876年となる。また、最終回で「朝鮮が外国と衝突した」という台詞あるが、これはおそらく江華島に上陸したアメリカ海軍との戦い「辛未洋擾(シンミヤンヨ)」のこと。鎖国政策も続いていることからドラマの最後は予言から5年後の1871年と考えられる。

 ▼嫁(明成皇后・閔氏)と舅(興宣大院君)の関係は?
ドラマでは嫁舅の具体的な戦いは描かれなかったが、実在の明成皇后閔氏と興宣大院君はここから先、熾烈な争いを始める。そのきっかけは大院君が高宗の側室の子(完和君)を寵愛し、世子(王位継承者)にしようとしたことから。そして1871年に止めを刺す事件が起こる。11月、閔氏に待望の息子が生まれるが生後5日で死亡してしまう。これを大院君の薬のせいだと閔氏は信じ、嫁舅の関係は修復不可能なまでに悪化する。

 ▼大院君失脚
そんな中、鎖国政策を続ける朝鮮を囲む周辺は激変していき、成人した高宗の親政がはじまると状況は一転。開化を主張する者が大挙進出し1873年、大院君は閔氏と驪興(ヨンフン)閔氏一族に政権を明け渡す。ところが翌年、閔氏の義兄・閔升鎬(ミン・スンホ)が自宅で謎の爆発事故により死亡する。閔氏は事件の背後に大院君がいると疑う。

 ▼10年後、朝鮮に亡国の門が開く
1875年日本の軍艦・雲揚号が現れた。領海を犯した見慣れない船に朝鮮が砲撃。それが原因となって仁川近くのいくつかの島が日本に占領され、朝鮮と日本との間で外交問題に発展する。政権をにぎって間もない閔氏一族はこれを穏便に済ませようと考えたのか、「日本と江華島条約(日朝修好条約)」を結ぶ。これがチョンジュンが予言した10年後、1876年だ。この条約は不平等なもので、朝鮮は日本に三つの港(釜山(プサン)、元山(ウォンサン)、済物浦(チェムルポ))を開港した他、領事裁判権なども与えた。これがきっかけで朝鮮はアメリカ、イギリス、ドイツ、ロシア、フランスとも不平等条約を結ぶことになり、亡国への道へ転落することに…。



■10年後以降の朝鮮は?
今回は、チョンジュンが予言した1876年までを駆け足で辿ったが、1880年には大院君が寵愛する孫の完和君が13歳で亡くなる。この死に閔氏が関与していると大院君が疑い、泥沼に…。大院君が政権奪還を目指して閔氏一族と熾烈な争いを展開する。この機に朝鮮を属国にしようと清(中国)が計画が進め、日本は清の影響力が大きくなるのを警戒する。そして日本と清との間で「日清戦争」(1894年~95年)が朝鮮の地で起こる。

高宗と閔氏は「以夷制夷(いいせいい)」(27話)の作戦で、ロシアを巻き込もうと考える。これに勘づいた日本が「閔妃殺害事件(乙未事変)」を起こし、閔氏が暗殺される。恐れをなした高宗は王宮を捨ててロシアの公使館に逃げ込む。

1年後に王宮に戻った高宗は1897年、国名を大韓帝国に改めて自ら皇帝と称したが、失った権威を回復することはできなかった。1904年今度は日露戦争が起こり、日本が大国ロシアに勝利。高宗は外交を日本に譲り渡し、1907年退位させられ、息子の坧(チョク)が大韓帝国第2代皇帝の純宗となる。だが皇帝とは名ばかりで日本の操り人形。1910年8月29日に「韓国併合ニ関スル条約」に調印し、日本に併合されることになる。

■朝鮮の亡国を描いたドラマは?
本作の最終回あたりから始まる作品にキム・ヒョンジュン主演「名家の娘ソヒ」、イ・ビョンホン主演の「ミスター・サンシャイン」、ユン・シユン×チョ・ジョンソク主演の「緑豆の花」などがある。(【ドラマの年表:朝鮮王朝】)

■「風と雲と雨」は終焉に向かう朝鮮王朝を描いた秀作
「風と雲と雨」は、1862年から1871年まで、特定の一族が政権を独占する“勢道政治”に苦しめられた2代の王(哲宗、高宗)の時代に、架空の2人(チョンジュンとボンリョン)に予言という特殊能力を持たせて、500年以上続いた朝鮮王朝末期を分かりやすくひも解いてくれた。作中張り巡らされた伏線も見事に回収した本作は、一度の視聴で終わらせるのはもったいない。時代背景などを理解したうえで二度、三度と見返してほしい作品だ。その際には、時代背景や、実在人物の紹介、各話のネタバレあらすじと見どころなどまとめている【「風と雲と雨」を2倍楽しむ】を参考にしてほしい。

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原題:바람과 구름과 비

「風と雲と雨」公式サイト
Youtube「風と雲と雨」予告動画

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