原作ファンも韓ドラファンも魅了する話題の犯罪劇「ペーパー・ハウス・コリア:統一通貨を奪え」シーズン1のネタバレと中間考察

2022年06月28日23時50分ドラマ
Netflix『ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え』
独占配信中

Netflixを通じて世界的ヒットとなったスペインドラマ「ペーパー・ハウス」。その韓国版リメイクとなる作品「ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え」が、6月24日からNetflixで独占配信を開始し、韓国だけでなく世界中で話題を集めている。本作のあらすじと見どころを含めた中間考察をご紹介する。

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「ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え」は、天才的な戦略家と彼が率いる腕の立つ泥棒を集めた強盗団が、新しく準備された朝鮮半島の統一通貨の強奪を実行していく中で、予期せぬ問題に直面し、波乱を巻き起こしていく様子を描いたドラマで、スペインで制作された「ペーパー・ハウス」の韓国版リメイク。オリジナルは第46回国際エミー賞では最優秀ドラマ・シリーズを受賞した人気作品だ。



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■シーズン1(パート1)あらすじ(ネタバレ)
PAPER北朝鮮で生まれ育ち、密かに韓国の文化に憧れていた少女(チョン・ジョンソ)は、兵役中に、南北が終戦を宣言し、共同経済区域(JEA)の設立を知る。除隊してすぐにコリアン・ドリームを胸にソウルへ向かうが、そこに待っていたのは、夢に描いたような華やかな生活ではなく、北朝鮮出身の彼女にとっては、飲食店で下働きしながら裏の世界で稼ぐしか道はなかった。ある日、所属していた暴力団組織のボスを射殺し、追われる身となった彼女は現実に絶望して自ら命を絶とうとするが、それを救ったのは「教授」と名乗る人物(ユ・ジテ)だった。

こうして教授のもとに集まり、強盗団メンバーとなった各分野のスペシャリスト達。ベルリン(パク・ヘス)、モスクワ(イ・ウォンジョン)、デンバー(キム・ジフン)、ナイロビ(チャン・ユンジュ)、リオ(イ・ヒョヌ)、ヘルシンキ(キム・ジフン)、オスロ(イ・ギュホ)らは「誰も死なせず傷つけずに4兆ウォンを奪う」という計画のもと、造幣局を襲撃する作戦を実行に移す。

南北が統一に先駆けて設立した共同経済区域(JEA)に設けられた統一造幣局。ここに向かう輸送車を強奪し、あっという間に造幣局を占拠した一同は人質を使って紙幣の増刷を進めていく。

PAPER南北統一を控える中で起こった前代未聞の事件に、南北両政府から犯罪対策のスペシャリストが集められる。犯罪交渉スペシャリストのソン・ウジン(キム・ユンジン)は北朝鮮側が任命したチャ大尉の人質の命よりも早急に事件を解決しようとする方針に反発しながらも、事件の首謀者「教授」と電話で交渉を進めていく。彼女は2ヶ月前に知り合ったカフェの経営者パク・ソノとの関係で仕事の鬱憤を晴らすが、ソノこそが「教授」だとは知らなかった。

当初はうまく進んでいた計画だったが、人質の予想外の行動から内部の状況が外に漏れ、リーダーのベルリンは作戦に抵抗する造幣局庁の代わりに、その不倫相手のミソン(イ・ジュビン)を見せしめに殺すよう命じ、造幣局内に銃声が鳴り響く。しかし、殺害を命じられたデンバーは彼女を殺す事が出来ず彼女を匿う。北朝鮮式の恐怖政治で人質を仕切ろうとするベルリンと、「誰も殺さない」という教授の作戦を破った彼に疑念を抱くトーキョー。強盗団の中では派閥争いが勃発し、人質の間でも南北の出身者同士の対立が深まっていく。

息子デンバーがミソンを殺したと誤解したモスクワの投降未遂や、誤って造幣局長が狙撃される事件、救命手術の為の医師団受け入れや、これに紛れたチャ大尉の潜入など数々の事件を経て、強硬派のベルリンを制圧し、新たなリーダーとなったトーキョーのもと、内部は徐々に秩序を取り戻し、計画を進めていくが、新たな銃声とともに状況は大きく崩れる。

PAPER「教授」が造幣局外にいると睨んだウジンと、造幣局に忍び込んで「教授」を殺害し早期解決を目指すチャ大尉の作戦が水面下で平行し、教授と強盗団には最大のピンチが訪れるが、ベルリンに射殺されたと思われていた当局職員は実は生きていて、警察が内部を危険に晒した事が世間に明らかになると形勢が逆転。見事に優位に立った強盗団は喜びに舞い上がり、強盗同士、そして強盗と人質の間でも恋が芽生え始めていた。

責任を取って担当を辞退しようとするウジンはソノのもとに訪れる。落ち込んだ彼女を見たソノはいつの間にか彼女に惹かれ始めている事に気づいて言葉を失う…。

■中間考察
リメイク作品の一番の弱点は、原作を観た事がある人にはある程度展開が読めてしまう点だ。これはリメイクという特性上仕方のない事だろう。しかし、本作では原作の魅力的な脚本を踏襲しながらも、非常にコリアナイズされた設定を随所に盛り込み、原作ファンを飽きさせないだけでなく、ストーリーラインにより深みを出す事に成功している。原作の舞台は現実とさほど変わらないマドリードの造幣局だったのに対し、本作では「南北朝鮮の統一」という非常にセンシティブなトピックを盛り込んだ事で、登場人物や世界観により深みが生まれている。

朝鮮半島が南北に分断され、統一が民族の共通の悲願だという事は世界的にもよく知られている事実だろう。しかし、分断が長引くにつれ、両国の経済や生活水準の格差が大きくなり、韓国側では統一に慎重な考えを示す人々が現れているのも事実だ。この作品では、韓国の首都ソウルがコリアン・ドリームの象徴とされる一方で、雨が降る夜中の無機質なビル街などどこか暗い街として描写され、北朝鮮国民の流入で治安や経済が混沌と化した世界を表している。

第1話の冒頭で、この物語のストーリーテラーになるトーキョーが作戦に加わる経緯が描かれたのを筆頭に、第2話ではベルリンの幼少期の脱北失敗や強制収容所でのエピソード、第3話ではモスクワとデンバーの親子の絆、第4話ではソウルで裕福な家庭に育ったリオの葛藤、第5話ではウジンの家族の状況、第6話では教授の素性が語られ、こちらもやはりコリアナイズされ、原作とは異なるキャラクターを引き立てている。

PAPERまた、本作では韓国南部や北朝鮮など、各地の方言が登場するのだが、医師団と共に潜入したチャ大尉を、方言から同じ北朝鮮出身だとベルリンが見抜くなど、本作オリジナルの場面も多く見られる。この他にも、内部の情報が外に伝わるきっかけとなったアイテムがアンの持っていたスマホではなく、造幣局長のスマートウォッチに変更されたり、造幣局長が狙撃される事件のきっかけや、チャ大尉のメガネに隠しカメラを仕込むのが強盗団ではなく対策本部に変更されるなど、脚本の手直しも見受けられ、こうした細かい変更が原作とは違う展開に進むのではないかという期待を抱かせる。

民族の悲願である「祖国統一」がもたらす負の側面にフォーカスしている時点で既にだいぶ攻めた内容なのだが、この他にも、冒頭でトーキョーがアメリカ兵に見立てた標的を銃撃するシーンや、「悪い事するなら(コードネームは)トーキョー」と発言するなど、観る人によっては不快感を示しかねない方法で、北朝鮮出身の彼女の反日・反米思想を表現している。
PAPERまた第6話では恋に落ちたミソンとデンバーが、かろうじて局部だけ隠れているような過激なラブシーンを展開させ視聴者を驚かせるが、性に対して厳格な韓国作品において、このようなシーンが登場したという事は、この作品が韓国内の視聴者だけでなく、世界の視聴者に向けて作られている事を物語り、他国にも自国にも媚びずに自由に表現するという意志が感じ取れる。

Netflixオリジナル作品でお約束なのは、続編があるかどうかという議論だ。これまでのオリジナル作品でも最終話では、完結しつつも続編に続く可能性も示唆するような巧妙なクライマックスが描かれ、実際に続編配信が決定している作品も多い。この作品については、当初からパートを分割しての配信が決定しており、今回配信された6話では原作のシーズン1最終話の手前で終わり、パート2となる残りの6話が今年の下半期に公開予定となっている。

続編があるかどうかは後半6話が公開されてからなされるべき議論ではあるが、スペイン版の原作では造幣局事件の2年半後の別の銀行襲撃事件も描かれ、シーズン5まで制作されている事を考えると、続編の可能性はありうる。その場合、続編も原作のリメイクとなるのか、それともシーズン1で展開された統一朝鮮という世界観を土台に、全く新しい韓国版オリジナルの脚本になるのかも気になるところだ。まずは下半期に公開予定の第2部の続報を待ちたい。

大ヒット作品のリメイクとして、制作決定から世界が心待ちにし、予想以上に韓国らしさが盛り込まれた「ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え」シーズン1(パート1)は、6月24日よりNetflixで独占配信中だ。

■作品情報
作品名:「ペーパー・ハウス・コリア: 統一通貨を奪え」
オリジナルシリーズ:「ペーパー・ハウス」
監督: キム・ホンソン
脚本: リュ・ヨンジェ、キム・ファンチェ、チェ・ソンジュン
キャスト: ユ・ジテ (教授)、キム・ユンジン (ソン・ウジン)、パク・ヘス (ベルリン)、チョン・ジョンソ (トーキョー)、イ・ウォンジョン (モスクワ)、パク・ミョンフン (チョ・ヨンミン)、キム・ソンオ (チャ・ムヒョク)、キム・ジフン (デンバー)、チャン・ユンジュ (ナイロビ)、イ・ジュビン (ユン・ミソン)、イ・ヒョヌ (リオ)、キム・ジフン (ヘルシンキ)、イ・ギュホ (オスロ) ほか

製作: BH Entertainment、Zium Content
配信: Netflix
原題:종이의 집: 공동경제구역

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