故ルーク・ホランド監督が『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』に込めた思いとは?特別映像で紹介

2022年08月05日11時00分映画
ルーク・ホランド監督 ©2021 Focus Features LLC. 

『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』(8月5日公開)のルーク・ホランド監督のメッセージ映像が公開された。2008年から10年の歳月をかけて250以上のインタビューを行い、本作完成直後に癌で亡くなった監督が、本作を制作するきっかけや思いについて語った貴重な映像となっている。



『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』は、“第三帝国”にかかわった市井の人々の証言を記録したドキュメンタリー。ヒトラー率いるナチス支配下のドイツ“第三帝国”が犯した、人類史上最悪の戦争犯罪“ユダヤ人大量虐殺【ホロコースト】”を実際に目撃した人々。武装親衛隊のエリート士官から、強制収容所の警備兵、ドイツ国防軍兵士、軍事施設職員、近隣に住む民間人まで、終戦から77年を迎える今、「現代史の証言者世代」と呼ばれる高齢になったドイツ人やオーストリア人など、加害者側の証言と当時の貴重なアーカイブ映像を記録している。

イギリス出身のドキュメンタリー監督ルーク・ホランドは、14歳の時に、母がウィーンからのユダヤ人難民で、祖父母はホロコーストで殺害されたというルーツを知った。この度解禁されたメッセージ映像では、監督が「母は生き延びた罪悪感から、私たちには何も言わずユダヤのルーツを伝えなかった」といい、「祖父母の運命を深く知るためこの作品を作るという旅に出た」と本作を制作するきっかけについて語っている。

2000年代になり “祖父母を殺した人間を捜す”という目的でこのプロジェクトに着手。「すぐに無理だとわかりました。しかし、彼らの仲間には実際に会うことができる。ヒトラーのために腕や銃を振り上げた人たち、残虐な犯罪を犯した人たちを通して、ホロコーストが繰り広げられた背景をよりよく理解できるかもしれないと考えたのです」。

何百人ものドイツ人たちと向き合い、インタビューを行ったホランド監督は「戦時下のベルリンでしたことを老婦人に尋ねたら“頼まれれば何でもしたわ”と言った」と明かし、「加害者側からこの問題を語れる証言者は大勢いるはずだ」と確信。膨大なインタビューを敢行し、本作を完成させた直後の2020年6月、71歳で癌で亡くなった。「説明は許しではない、恐るべき犯罪の実態を明らかにすることなんだ」と本作に込めた想いを語っている。



映画『ファイナル アカウント 第三帝国最後の証言』は、TOHOシネマズ シャンテ、渋谷シネクイントほかにて公開中だ。



■あらすじ
イギリスのドキュメンタリー監督ルーク・ホランドは、アドルフ・ヒトラーの第三帝国に参加したドイツ人高齢者たちにインタビューを実施した。ホロコーストを直接目撃した、生存する最後の世代である彼らは、ナチス政権下に幼少期を過ごし、そのイデオロギーを神話とするナチスの精神を植え付けられて育った。戦後長い間沈黙を守ってきた彼らが語ったのは、ナチスへの加担や、受容してしまったことを悔いる言葉だけでなく、「手は下していない」という自己弁護や、「虐殺を知らなかった」という言い逃れ、果てはヒトラーを支持するという赤裸々な本音まで、驚くべき証言の数々だった。監督は証言者たちに問いかける。戦争における“責任”とは、“罪”とは何なのかを。

■映画概要
監督・撮影:ルーク・ホランド/製作:ジョン・バトセック、ルーク・ホランド、リーテ・オード
製作総指揮:ジェフ・スコール、ダイアン・ワイアーマン、アンドリュー・ラーマン、クレア・アギラール/アソシエイト・プロデューサー:サム・ポープ
編集:ステファン・ロノヴィッチ/追加編集:サム・ポープ、バーバラ・ゾーセル/音楽監修:リズ・ギャラチャー
2020年/アメリカ=イギリス/ドイツ語/94分/カラー(一部モノクロ)/ビスタ/原題:Final Account/字幕翻訳:吉川美奈子/字幕監修:渋谷哲也/ナチス用語監修:小野寺拓也
配給:パルコ ユニバーサル映画/宣伝:若壮房 ©2021 Focus Features LLC. 

映画『ファイナル アカウント 最後の証言』公式サイト