第4章 男と女がハマる韓国歴史ドラマの魅力|NHKを唸らせた「太王四神記」

2009年12月01日00時00分ドラマ
2010年1月にNHKオンデマンドで「太王四神記」全話配信を記念した特集記事。※配信終了※

2007年韓国MBSで放送され、日本でも大ヒットした韓国時代劇ドラマ「太王四神記」と主演のペ・ヨンジュンの魅力を探る。

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テサギ「冬のソナタ」で女性ファンのハートをつかんだペ・ヨンジュンは、「太王四神記」では男性ファンの心までがっちりつかんだ。しかし、男性と女性とではハマるポイントは違うようだ。もちろん人の好みを性別で分類するのはナンセンスだというのは百も承知。それでもやはりある程度、性差で惹かれるポイントは共通するはず。ナビコンが勝手に考えたポイント次のとおり。

・ 男性=友情・冒険・勝利
・ 女性=愛・美・夢

では、このポイントを中心に「太王四神記」で男女がハマる魅力を探ってみよう。

男性が虜になった太王四神記
男性も唸らせた一番の魅力は、なんといってもドラマのスケールの大きさだろう。何しろ「砂時計」など今も韓国ドラマ史に語り継がれる名作を手がけたキム・ジョンハク監督が、制作費は430億ウォン(約54億円)、企画構想に3年、撮影期間は2年以上もかけて制作した作品だ。しかも、ドラマ序盤はこれまで日本ではあまり馴染みのなかった檀君神話が舞台。戦闘やアクションシーン満載でCGや特殊効果も多用している。時代劇好きのお父さんからCG好きのオタクまでが夢中になったのもうなずける。このCGに関しては、当初、映画『ロードオフザリング』のCGチームが担当することになっていた。ところが台本作りの遅れで、実際にはモーペックスタジオという韓国の映画業界では有名なCGスタジオが担当した。少々荒削りな部分はあるものの、ハイビジョンや劇場でも十分鑑賞できる仕上がりだ。(ちなみに『ロードオフザリング』のCGチームは、1年以上も韓国に滞在したが、結局1コマのCGも作れなかったそうだ。残念っ!)
この大スケールの中、タムドク王は幾多の試練を乗り越え、数少ない腹心の部下や仲間と青龍・白虎・玄武・朱雀の四神を捜し求める戦に出る。タムドクは勇気と知力で数々の勝利を勝ち取り、やがて仲間が増え、歴史に名を残す英雄となる…どうだろう?男性を夢中にさせる友情・冒険・勝利がぎっしり詰まっている。おまけに「神器を探しに冒険の旅に出る」なんて、男性の心を少年に変える魔法のエッセンスが入っている。(インディジョーンズもポケモンも、ファイナルファンタジーやドラゴンボールだってそうだ!)



女性を蕩(とろ)かしたタムドク王
テサギ男性陣がスケールの大きさや友情・冒険・勝利といった作品自体に夢中になったとすれば、女性陣は、ペ・ヨンジュン演じるタムドクの魅力にハマった。
何しろ、冬ソナで20話かけてやっと結ばれた主役の二人が、1話にして結ばれるのだ。しかも、タムドクのなぜか嬉しい上から目線の求愛で、額にキスだってしちゃうのだ。(だって、セオの気持ちも確認しないで、いきなり天の父に結婚の報告をするんだから…。この強気のタムドク、並の男じゃこうは行かない!)
男性陣が見惚れた迫力のアクションシーンだって、女性陣が見惚れるのはその美しさ。タムドクのアクションはフワリと舞っているように美しい。(これについては第3章のインタビューで小川さんが触れている)
そもそも、日本の時代劇で見るアクション(殺陣)と、韓国のそれとは大きく違う。たとえていうなら、日本の殺陣が静なら、韓国は動。日本が直線美なら韓国は曲線美。そういえば、日本の侍が着る衣装は裃や袴などビシッとアイロンをかけたような直線的な美しさだが、韓国はプリーツや切れ込みが入って回ると美しい衣装が多い。(女性が着る着物や、チマ・チョゴリもそうだ)
男性がハマった仲間との冒険の旅も魅力だが、女性ならタムドクのベルベットボイスで奏でる名言で、愛と夢の世界をさまよいたいのでは?(最もタムドクの愛ある名言の相手は女性だけではない。仲間や部下たちにもたっぷり明言を吐いている。これについては、韓ドラここが知りたい!の韓国歴史ドラマに嵌(ハマ)るツボで詳しく紹介)

新しい型の史劇俳優
テサギ韓国の歴史ドラマはここ数年日本でも人気が高いが、これまで人気を博した歴史ドラマは骨太のドラマか、宮廷の愛憎劇を描いた大奥モノに代表される愛を描いたドラマが多かった。(最近ではフュージョン時代劇も人気だが、これについては今回は触れていないのでアシカラズ)ドラマで見る年表で確認してみよう。まず、もっとも多くのドラマの舞台となった朝鮮王朝の年表だ。紫と緑色の作品はどちらかと言うと骨太型で男性俳優の主役が多く、ピンク色の作品は恋愛型でほとんど女優が主役だ。今度は歴史ドラマで活躍する史劇俳優としてのペ・ヨンジュンをチェックして見よう。
まずは、神話~三国時代の年表で確認だ。表のトップにあるテサギはピンク=愛がメインで、中ほどのテサギは紫=アクションや英雄伝がメインと紹介している。つまり、テサギは、恋愛型でもあり骨太型でもあるのだ。万人から愛された「チャングムの誓い」は骨太型の要素もたっぷりだが、女性が主役で、こういった作品で男性俳優が主役というのは珍しい。
そしてペ・ヨンジュンはテサギで新しい型の史劇俳優を演じた。これまでの史劇俳優は、歴史ドラマ独特の発声や身のこなし、相手を恫喝する鋭い目力が魅力の、どちらかというと恋にオクテの骨太男が多かった。(代表的なのは「大祚榮」「海神」チェ・スジョンや、「朱蒙」ソン・イルグク、「ホジュン 宮廷医官の道」チョン・グァンリョルらだ。)
それに対して、ペ・ヨンジュンは衣装を変えればそのまま現代劇にも通用するような、強いけれど優しくお洒落でカッコいい、現代にも通じる色気のある大人の男を歴史ドラマで演じた。(最近人気のフュージョン時代劇ではよく見られるが、あちらはちょっと軽めの若向き)
ペ・ヨンジュンと同じようなタイプとしては、「イ・サン」の主役イ・ソジンを挙げていいかもしれない。彼は、ドラマ「チェオクの剣」で見事に新しい型の史劇俳優を試みている。(詳しくは新ヒーローの登場の[「チェオクの剣」(中編)イ・ソジン]で詳しく紹介) 2003年の作品で、テサギより一足早いようだが、ペ・ヨンジュンは同年の映画『スキャンダル』で挑戦済なので、彼を新しい史劇俳優の魁(さきがけ)として見てもいいだろう。

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【作品紹介】【「太王四神記」を2倍楽しむ】