明日5月17日からテレビ東京にてイ・ビョンフン監督の大ヒット時代劇「イ・サン」が久々の再放送となるが、イ・ソジンが演じた主人公は朝鮮時代の名君・正祖で、2PMのジュノが「赤い袖先」で演じている。時代も主人公も同じ2作のどこが違うのか？第2弾は、「友情」に焦点を絞って考察した。

　①作品＆名前編：ヒロインの名前が違うのはなぜ？
　③③ロマンス編：ヒロインが側室になるのを拒んだ理由は？
※以下、ネタバレあり



「イ・サン」と「赤い袖先」は18世紀後半、500年の王朝史においてもっとも波乱万丈、紆余曲折の人生を送った王であり、進んだ考えを持つ改革君主である朝鮮王朝第22代・正祖、イ・サンの物語。その劇的な人生や挫折、成功や後悔、輝かしい実績や切ない愛と友情をドラマチックに描いている。

■少年サンとヒロインの運命の出会い
サンとヒロイン（ソンヨン＝ドギム/ドクイム）との出会いは、両作品とも少年サンの禁じられた行動先でのことだった。

▼「イ・サン」：生涯の友
サンは、謀反の疑いで米びつに閉じ込められた父（思悼世子）の元へ向かう途中で、見習い女官のソンヨンと内侍になるのを恐れて逃げるテスと出会う。ソンヨンとテスはサンの素性を知らないまま協力し、サンは父と涙の再会を果たした。だがそのためにテスが殺されそうになり、サンとソンヨンが奔走しテスを助ける。ソンヨンとテスはサンが世孫と知り恐縮するが、サンは2人を“生涯の友”と呼ぶ。その後もサンのピンチをソンヨンが得意の絵で助けるが、そのことからソンヨンたちは命を狙われ、2人はテスのおじと都を離れることに。

サン、ソンヨン、テスの友情が第1話、第2話、第3話と丁寧に描かれる。都を後にしたソンヨンとテスは成人して都に戻り、絵の得意なソンヨンは宮中の記録画などを担当する図画署の茶母（下働き）となる。腕っぷしは強いが相変わらず臆病なテスもソンヨンから大きく遅れるものの、護衛官となって自分を友と呼んでくれたサンのために命を懸けて生涯尽くす。ちなみに、サンが使った偽名は内侍の“ムドギ”。

▼「赤い袖先」：恩人
祖母（暎嬪）が亡くなったと聞きこっそり祖母の屋敷に向かうサン。だが祖母は、罪人として死んだ父（思悼世子）の実母なので、サンは屋敷を訪ねることを禁じられていた。森で迷ったサンを助けて屋敷まで同行し、励ましてくれたのがドギム。ところがそこに英祖がやってきてサンはドギムを置いて一人で逃げてしまった。

少年サンと少女ドギムのエピソードは第1話で終わり、2人の間に“友情”感は薄い。一番辛いときに優しくしてくれたドギムはサンにとって救い、恩人のような存在かもしれない。互いの存在を知らないまま成長した2人は、おてんばなドギムのために最悪の再会を果たす。サンが世孫に兼司書のドクロと信じ込むドギムは、数々の無礼な言動でサンに対する。無礼なドギムをあの手この手で懲らしめるサンが、気難しく性格が悪いと宮中で煙たがられている自分に本音で向き合うドギムにいつしか惹かれていく。ドギムがサン＝世孫だと知るのは第4話。そして2人が幼いころに危険を共有した相手だと知るのは第8話までお預け。


■視聴者を号泣させた友情
2作品とも切ないロマンスと共に友情でも視聴者を泣かせた。その中で「イ・サン」の男の友情、「赤い袖先」の女の友情に注目した。

▼「イ・サン」：サンと盟友ホン・グギョン
サンの腹心として登場するホン・グギョン。サンがグギョンのことを知ったのは第10話。成長して宮中にはびこる悪と孤独に戦っているとき。武官を目指すテスが武芸を習いに行く先でグギョンのことを見かけた。変わり者のグギョンに驚きながらも、悪政を正す盟友としてグギョンを重用するサン。世孫の右腕となり異例の出世を遂げて巨大な権力を手にしたグギョンは、自身の妹をサンの側室にしてさらに大きな権力を手に入れようとする。そして邪魔なソンヨンや王妃さえも排除しようとし、ついにはサンを裏切る。結局、計画は失敗し、流刑地で孤独な最期を迎える。テスの知らせて流刑地に駆け付けたサンは、「もう恨んでいない」と盟友の最期を看取る。このシーンは本作最高の見どころの一つとして多くの視聴者を泣かせた。第69話

「赤い袖先」ではホン・グギョンは、ホン・ドクロとして序盤から登場する。だがドクロを英祖がつけた見張り役と考えるサンは心を開かなかったが、ドクロがドギムの手柄を横取りしてサンからの信頼を得る。それ以降腹心として仕えるが…。

▼「赤い袖先」：ドギムと仲間（宮女たち）
「イ・サン」では男の盟友に注目したが、「赤い袖先」ではドギムが見習い女官時代から仲良くしていた宮女たち（ボギョン×ギョンヒ×ヨンヒ）との友情にスポットを当てた。これまであまり知られることのなかった宮女たちの普段の暮らしを彼女たちを通して視聴者は知ることができた。時には女子トークで盛り上がり、サンを一喜一憂させたり、仲間の一人がピンチになったときには一致団結して助けたり…。宮中という自由のない環境で姉妹のように育った4人の絆は強く、その絆は時には愛をも超えた。特に仲間たちを大切に思うドギムが、サンの側室になった後、休暇で宮殿の外に遊びに出かける仲間たちを見送るシーン。親友とはしゃぎながら出かける自分自身の幻に涙で手を振るシーンはあまりにも切なく、悲しい。そんなドギムは最期の時にサンではなく仲間の宮女たちを呼んでほしいと頼み、遺品もサンではなく仲間の一人（ギョンヒ）が預かった。サンの愛は彼女たちの友情には勝てなかった最終回・17話。これについては次回第3弾「ロマンス編」で詳しく紹介する。

「イ・サン」では女の友情は描かれないものの、サンの正妻・孝懿王后（ヒョイワンフ）が一部その役目を担った。

両作品ともDVD発売、レンタル中だ。2022年11月現在、「赤い袖先」はWOWOWなどで、「イ・サン」はテレビ愛知などで放送中。詳しくは以下の【2倍楽しむ】で。ここでは各話のネタバレあり/なしあらすじと見どころ、歴史背景、予告動画などもまとめて紹介している。



【作品詳細】【「イ・サン」を2倍楽しむ】

◇「イ・サン」公式サイト

【作品詳細】【「赤い袖先」を2倍楽しむ】

◇「赤い袖先」公式サイト