小雪、息子役・田中偉登と“指点字”を披露&熱い使命感を語った『桜色の風が咲く』公開記念舞台挨拶レポート

2022年11月05日18時38分映画
写真左から:結城崇史プロデューサー、吉沢悠、小雪、福島智教授(右横は指点字通訳者)、田中偉登、松本准平監督

映画『桜色の風が咲く』がついに全国公開し、初日翌日となる11月5日にシネスイッチ銀座にて、主演の小雪、共演の田中偉登、吉沢悠、福島智教授、松本准平監督、結城崇史プロデューサーが公開記念舞台挨拶を行い、小雪と田中による“指点字”のデモンストレーションも行われた。映画公式サイトで予告動画が公開中だ。



『桜色の風が咲く』は、視力と聴力を次々と失いながらも、世界ではじめて盲ろう者の大学教授となった、東京大学先端科学技術研究センターバリアフリー分野教授・福島智さんと母・令子の実話にもとづく物語。

智を支える、大らかで凛とした母・令子役に小雪。12年ぶりの主演作で新境地を拓く。智役に、気鋭の若手俳優・田中偉登(『朝が来る』)。夫・正美役に吉沢悠。ほかに、リリー・フランキー、朝倉あき等が顔を揃える。

『桜色の風が咲く』公開記念舞台挨拶 概要
◆日時:11月5日(土)
◆場所:シネスイッチ銀座
◆登壇(敬称略):小雪、田中偉登、吉沢悠、福島智教授、松本准平監督、結城崇史プロデューサー
MC: 秋沢淳子


桜色

上映後、満員の観客からの大きな拍手に迎えられ、結城プロデューサーは「コロナの影響もあって撮影が中断したこともあったけれど、無事に皆さんに作品をお届けすることができて嬉しい」と封切りに感慨。福島教授との対談を通して福島教授の半生に興味を抱いたという松本監督は、観客に感謝を述べつつ「福島さんはどのような方なのかと、その人生に興味が湧いて、福島さんなりの人生の苦しみへの向き合い方に触れてみたいと思った」と企画参加の理由を熱く説明。

桜色福島令子役の小雪は12年ぶりの映画主演。本作への参加に「凄く幸せだと感じる」と感慨無量で「心の中で“この作品は世に伝えていかなければならないものだ”という使命のようなものを感じて、その想いに突き動かされて参加させていただきました」と心境を明かした。撮影中は「想像を絶する苦労の末に、福島先生は新しい世界への道を切り拓いて希望を与えてくれた。そのエネルギーの欠片を感じながら撮影に臨んでいました」と回想し「作品を通して、先生の力強いエネルギーを感じていただけたら」と観客に呼び掛けていた。

桜色福島智役の田中は「タイトルにちなんで…今日は髪の毛にちょっと桜色を入れてきました!」と短髪を桜色に染めたことを報告しながら「目が見えなくなり、耳が聞こえなくなる孤独感と絶望だけではなく、楽しかったことやご家族との会話など、福島先生が感じたとおりのことを一滴も溢すことなく伝えることが僕の使命だと思っていました」と演じる上での心構え振り返っていた。

桜色の父・福島正美役の吉沢は「福島家のみなさんの感じたことを俳優として疑似体験をさせていただきました。指点字を生み出した令子さんと智さん親子だけではなく、家族も一緒に戦っていたのではないか?という思いで演じていました。福島さんからは、実際のお父さんよりもマイルドだったと言われましたが、でも大丈夫だと…。ホッとしています」とお墨付きに安堵していた。

本作のモデルである福島教授は「自分の人生が映画になるのは不思議な感じ」と驚きつつ、母・令子さんご本人の反応については「美人過ぎる小雪さんが自分を演じるなんて気恥ずかしいと、配役に疑問を呈していました」と報告して温かい笑いを生んでいた。

桜色

今回特別に、壇上で小雪と田中による指点字のデモンストレーションが行われた。まずは小雪から、役作りのために取得した指点字で福島教授の指に「智(さとし)先生ありがとう」と言葉を伝えるも、本人は「間違えたっ!」と照れ笑い。しかし福島教授にはしっかりと伝わっており、「いつのまにかおふくろの背が伸びたのかと思った」とジョーク交じりに太鼓判を押していた。

桜色

続いては田中。指点字で「僕が智(さとし)やで」と思いを込めるも、福島教授からは「何を打ったのかさっぱりわかりません!」というまさかの返答が。もちろんこれは福島教授のユーモアで、メッセージはしっかりと伝わった模様。それでも「もうちょっとスムーズにやれるように頑張ってほしいなあ」と福島教授から今後に期待するアドバイスも受けていた。

そして福島教授は小雪と田中にメッセージ。福島教授は小雪に「おふくろ、いつまでも元気で!自分らしい生き方で人生を切り拓いていってくれよな!」とエール。田中には「俺は40年後のお前だ!コーラやビールを飲み過ぎるな!たとえ20代でも腹が出るぞ!そしてもう一つ、女性に気をつけろ!男と言うのは単純でバカ。それに対して女性は複雑で賢い。くれぐれも女性には気をつけるように」と笑い交じりの人生訓を送り、その言葉に温かな笑顔が広がった。

最後に主演の小雪は「指点字の世界がもっと広がってほしいと思います。私たちが指点字をできるようになったら、諦めていた世界が広がるはず。この映画は一つの試みの第一歩なので、この波紋が世界中に広がっていけばと願っています」と大ヒット&大反響を祈願していた。

※映画のキーとなる「指点字」とは、盲ろう者のコミュニケーションの手段の一つ。日本の盲ろう者(視覚と聴覚の重複障害者)はおよそ1万5千人、世界では1千万人以上と言われている。視覚障害者には声での会話が、聴覚障害者には手話や筆談などがあるが、盲ろう者ではコミュニケーションにさまざまな困難があり、いかにコミュニケーションをとるのかが、大きな課題。「指点字」とは、福島智さんの母・令子さんが、盲ろう者となった息子と言葉を交わしたい一心で、ふとしたことから考案した新しいコミュニケーション手段なのだ。それはリアルタイムで息子の指に自分の指を重ね、点字を打つことで言葉を伝えることのできるコミュニケーション方法。福島智さんと令子さんの考案がきっかけとなり、指点字は多くの盲ろう者の方に希望を与えることとなった。

■映画概要
小雪
田中偉登 吉沢悠 吉田美佳子 山崎竜太郎 札内幸太 井上肇 朝倉あき / リリー・フランキー 
製作総指揮・プロデューサー:結城崇史、監督:松本准平、脚本:横幕智裕 、音楽:小瀬村晶、 協力:福島令子 福島智
エンディング曲:辻井伸行「ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13 《悲愴》 II. ADAGIO CANTABILE」
製作:スローネ、キャラバンピクチャーズ 制作:THRONE INC./KARAVAN PICTURES PTE LTD
助成:文化庁文化芸術振興費補助金 ©THRONE / KARAVAN Pictures
製作国:日本/日本語/2022/ビスタ/5.1Ch/113分/英題:“A Mother’s Touch” 配給:ギャガ 

映画公式サイト
◇Twitter: @sakurairo114