★「歴史ドラマ」を楽しむ⑩『朱蒙』で一番の悪者は誰?

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『朱蒙』には主人公以外にも魅力的な人物が続々と出てきて、その中の誰かを時代主役に据えてサイドストーリー(外伝)を作っても、ヒット作が何本もできるだろう。

チュモンと志を共にした初恋の人ソソノ、哀れな侍女プヨン、妻のイェソヤ、実父ヘモス、母ユファ、継父クムワ王、神女ヨミウル、大商人ヨンタバル、国に忠誠を誓うブトゥクブル…。みんな魅力あふれる人物。しかしなんと言っても敵役ながら圧倒的な存在感があったのはテソ王子だ。

テソ王子は、扶余国の第一王子として、文武両道、冷静沈着で次代の国王に一番近い場所にいる…はずだった。しかし、父クムワ王が側室のチュモン母子を寵愛するあまり、正妻のテソ母子らを疎んじ、約束されたはずの世継ぎの座が危うくなった。
どんなに努力しても、父の愛は決してテソに注がれることはなかった。父クムワ王の目には、チュモンしか見えなかった。

ドラマでは、テソ母子を徹底的に「悪者」として描いているが、考えてみて欲しい。「ある日突然、父が身重の愛人を連れてきて一緒に住まわせ、母と自分を遠ざけ、愛人母子だけをかわいがる」。ありえない!絶対に許せない!チュモンに向けるテソの異常なまでの憎悪の目。憎しみの炎が見えるようだ。メラメラと燃えるあんな激しい目を見たのは、アニメ「巨人の星」の星飛雄馬ぐらいだ。憎しみの炎が強ければ強いほど、テソが父に求めた愛の強さが見てとれる。テソは父の愛に飢えていた。テソはただただ父に認めてほしかったのだ。確かに彼は卑怯な手を使いすぎた。だが、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」というではないか?そこのところをチュモン母子もわかってあげなきゃ・・・。

このドラマで一番の悪者は、クムワ王(チョン・グァンヨル)だ!側室を持つのが当時の王族の特権だったとしても、正妻や実子をないがしろにする人間に、民を幸せになんてできるものか!

ところが哀れなテソ王子も父に代わる愛を見つけた。その相手が大商人の娘ソソノ(ハン・ヘジン)。だが、愛に不器用なテソ王子、あまりに強引すぎた。そんな強引さがソソノのチュモンへと向かう恋慕を追い立ててしまった。挙句に肘鉄を喰らってしまう。こうなりゃチュモンを憎むことでしか、自分の存在価値をみつけられない・・・。

テソ王子を演じたキム・スンスは、『許浚(ホ・ジュン)』という朝鮮王朝時代に実在した名医のドラマにも王子役で出演している。主演の名医は、『朱蒙』でクムワ王を演じたチョン・グァンヨル。キム・スンス演じる王子はこの名医を父のように慕っている。しかし、ここでもチョン・グァンヨルは彼を見捨ててしまうのだ。まあ、『許浚』では止むに止まれぬ事情があったのだが、同じ人物から2度も捨てられたのだ。哀れなキム・スンス!もちろん、ドラマの中での話だが…。

テソ王子は悪者というより、愛に不器用だった哀れな王子だったのかもしれない。
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  • 韓国
    2006年
  • 監督/演出: イ・ジュファン、キム・グンホン、脚本: チェ・ワンギュ、チョン・ヒョンス
  • チュモン(朱蒙)(ソン・イルグク)/ソソノ(召西奴)(ハン・ヘジン)/テソ(帯素)(キム・スンス)/ユファ(柳花)(オ・ヨンス)
  • 70分
    Windows Media Player
    768k/2000k
  • 無料

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