女性の魔力にとり憑かれていく北斎。新藤兼人が幻想的に描く『北斎漫画』。

エンタテインメント 邦画 歴史・時代劇
番組情報
今年、新作『石内尋常高等小学校 花は散れども』撮り終えた新藤兼人監督、何と96歳である。その新藤監督、27年前の作品が、この『北斎漫画』。とはいっても、このときすでに69歳なのだが、内容は実にエネルギッシュでエロチックである。
浮世絵師、葛飾北斎はいまでこそ「富嶽三十六景」などの風景画で知られているが、当時はさまざまな内容の春画(エロチックな絵画)をも多作、濫作していたのである。中でも、大蛸と戯れる裸女の絵は、その奇怪な構図が印象的だ。

北斎(緒形拳)は貧乏長屋に暮らしつつ、何人もの女性と関係を結び、そこから絵の題材をとっていく。しかし、なかなか会心の作が描けない。
自ら画狂人と称した北斎、北斎が死ぬまで面倒をみつづけた娘のお栄(田中裕子)、そして北斎とは腐れ縁のような友人関係の滝沢馬琴(西田敏行)、この三人の不思議な関係を軸に、江戸の町に漂う、風狂の人生が描かれるのだ。

この「女とは?」と問いつづける北斎の執念が、新藤兼人と重なって見える。新藤作品の大きな柱もまた、常に「性」なのだから。
いつもの独立プロ作品ではないだけに、豪勢なセットが組まれ、なおかつ緒形拳、西田敏行、田中裕子という芸達者を揃えているため、新藤作品らしからぬ華やかさが醸し出されているのも見ものである。
  • 監督:新藤兼人/原作:矢代静一/脚本:新藤兼人/撮影:丸山恵司/音楽:林 光/美術:重田重盛/照明:野田正博/録音:島田 満/編集:杉原よ志
  • 緒形 拳/田中裕子/樋口可南子/西田敏行/乙羽信子/宍戸 錠/観世栄夫/殿山泰司/大村 崑/愛川欽也/フランキー堺

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