いまでも根強いファンの多い『仁義なき戦い』シリーズだが、その監督深作欣二がシリーズ完結後に撮ったのが、この『仁義の墓場』。実録度が増しただけでなく、主人公の凶悪度もエスカレートしている。どこに感情移入していくか、なかなか難しい作品である。そんな野獣のごとき男を若き渡哲也が好演しているが、かつては、こういう役も演っていたのだ。
終戦直後の新宿、ここで二番目に大きな組織、河田組に石川力夫(渡哲也)というチンピラがいた。単に凶暴なだけでなく、敵味方の区別なく暴れまわり、この男には誰もが手を焼いていた。
組同士の抗争では鉄砲玉として重宝がられたが、やがて時代が落ち着いてくると、争いもまた沈静化していく。そんな中、石川だけが一人、戦後の混乱期のような破天荒な暴れ方をしていた。当然、身内からも疎んじられ、見捨てられていくのだが……。
とにかく、ひたすら堕ちる道ばかりへと進む生き方が凄まじい。拠って立つもののない生き方とは、無軌道になりがちなのだろう。ふと、昨今の若者による悲惨な事件を思い起こしてしまうのである。
若き渡哲也が野獣のごとき男を好演『仁義の墓場』。
スタッフ: 原案:藤田五郎/監督:深作欣二/脚本:鴨井達比古、松田寛夫、神波史男/音楽:津島利章キャスト: 渡哲也/梅宮辰夫/多岐川祐美/郷?治
(C)東映
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