1947年に発表された戦後最初のベストセラー文学である田村泰次郎の小説『肉体の門』はたびたび映画化され、時代を刻む衝撃的な物語としてその名をいまに轟かしている。
『肉体の門』は、昭和22年、米軍占領下の東京でたくましく生きる娼婦の女たちの姿を描く物語。1988年のかたせ梨乃・名取裕子・根津甚八版は同作五度目の映画化作品となる。川沿いの汚いビルで関東一家を名乗り、危険な不発弾をわが身を守る守護神として暮らす街娼達の生き様には、嘘偽りのない戦後・激動の昭和の香りが刻まれている。
そんな街娼達を本作が初主演となったかたせ梨乃、『吉原炎上』の名取裕子を始め、加納みゆき、山咲千里、長谷直美、芦川よしみ、松岡知重らが婀娜な色香を添える。ついその色香から立ちのぼる特有の淫靡なエロティシズムにトピックが行きがちだが、肉体以外なにひとつ生存のすべを持たぬ街娼達の壮絶な日常と女同士の友情が胸を熱く打つ。男性出演陣も渡瀬恒彦、根津甚八、芦田伸介と豪華だ。街娼達の視点から語られる東京は荒廃から立ち直ろうとする終戦直後の東京。それは歴史を振り返る上でも重要な資料としても機能している。
昭和と言う時代が希望を持つにいたるまでは長く暗い道のりがあった。希望の前提を知ることによって希望の価値はいや増すのではないか。この映画はそんなことも教えてくれる。
また2008年12/27(土)には観月ありさ主演ドラマで再度リメイクされた。それだけ現代へ通じるメッセージ性の強い作品と言える。
5度も映画化された『肉体の門』、1988年公開版は、かたせ梨乃・名取裕子ら豪華キャスト
スタッフ: 原案:田村泰次郎/監督:五社英雄/脚本:笠原和夫/音楽:泉盛望文キャスト: かたせ梨乃/名取裕子/根津甚八/渡瀬恒彦
(C)東映
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