『ボクサー』社会から疎外された二人の男が栄光の座を求めて、戦う。

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寺山修司の映画には珍しく、実に分かりやすく、感動的な作品である。
ただ、『ロッキー』が公開され、人気を呼んだ後で立てられた企画だが、寺山は見事なまでに自分色のボクシング映画に仕上げている。デビューしたばかりの清水健太郎も初々しく、菅原文太ともども、なかなかの好演である。

中年の元ボクサー隼(菅原文太)は、いまではボクシングと縁のない生活を送っている。ある事件で知り合った天馬(清水健太郎)は、片足が悪いのだが、ボクサーとしてチャンピオンになることを夢見ていた。
あるとき、天馬は試合に負け、ジムを追い出される。何度も隼に指導を頼み、ついにコーチを引き受けてもらえることに。
ハードなトレーニングに耐えた天馬は確実に強くなっていった……。

裏町の食堂の風景や主人公のうらぶれた感じにいつもの寺山修司らしさが出ているが、一方で、隼と天馬とのトレーニング風景は非常に美しく、最も印象に残るシーンとなっている。その後のスポーツ映画でも、これほどの映像は見られないだろう。
再起にかける男たちの物語でありながら、どこか物悲しさが残る展開に、スポーツ映画としての斬新さを感じるのである。

Yahoo!映画オンラインシアターの『ボクサー』番組情報
  • 監督:寺山修司/脚本:石森史郎、岸田理生、寺山修司/音楽:J.A.シーザー
  • 菅原文太/清水健太郎/春川ますみ/小沢昭一

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