猥雑な民衆パワーを映像に焼きつけた今村昌平の傑作『ええじゃないか』

エンタテインメント 邦画 ドラマ
番組情報
今村昌平監督の描く民衆は、常に、パワフルでありながらどこか抜けており、したたかなのに馬鹿正直であったりする。そう、私たちがそうであるように、相反する二つの面をもっているのだ。
この『ええじゃないか』は幕末の江戸を舞台とした群衆劇だが、「ええじゃないか」の掛け声とともに、そんな庶民の底知れぬ力が湧き出てくるのを感じるのだ。

幕末の日本。遭難し、アメリカ船に助けられた源次(泉谷しげる)が久しぶりに日本へ帰ってくる。源次が不在にしていた6年間に、妻のイネ(桃井かおり)は両国にある見世物小屋に売られてしまっていた。何とか再会を果たす二人だったが、源次は芸人、スリ、乞食、ポン引きなどアブレ者が暮らす、この両国界隈に居着くことに。
一方で、群衆は「ええじゃないかええじゃないか」と叫びながら、豪商の倉を襲い、それを世直しだと標榜するのだった……。

泉谷しげる、桃井かおり、草刈正雄という今村映画初出演の三人を主役にもってきて、脇には露口茂、小沢昭一、緒形拳、殿山泰司、倍賞美津子といった常連を配する。
「ええじゃないか」でも世の中なにも変わりはしなかったのは、歴史が示すとおりだが、そこに夢を託したくなるのもまた民衆なのである。
  • 監督:今村昌平/原作:今村昌平/脚本:今村昌平、宮本 研/撮影:姫田真左久/音楽:池辺晋一郎/美術:佐谷晃能/照明:岩木保夫/録音:吉田庄太郎/編集:浦岡敬一
  • 桃井かおり/泉谷しげる/草刈正雄/田中裕子/池波志乃/露口 茂/倍賞美津子/三木のり平/伴淳三郎/緒形 拳

©1981松竹株式会社/株式会社今村プロダクション