★「歴史ドラマ」を楽しむ-韓国三大悪女-『張禧嬪』チャン・ヒビン編③

特集 韓ドラここが知りたい 三大悪女
『張禧嬪』チャン・ヒビン編②からの続き。(ネタばれどっさり。ただし、読んでから観ても十分楽しめます)
※ここから読み始める方のための用語解説!王妃=王の妻、大妃=王の母、大王大妃=王の祖母。オクチョン=チャン・ヒビンの本名、ヒビンの「嬪」は「妃」に次ぐ高い身分の位(詳細は、チャン・ノクス編①の≪女官の位≫参照)。両班=支配階級層、中人=両班の次の身分階級層で、頑張れば朝廷の要職にもつける身分階層(詳細は、②後半の≪ 朝鮮王朝の身分制度 ≫ 参照)。

では、オクチョンだったヒビンがどのように悪女へと変貌を遂げていくのか、恋のライバル・インヒョン王妃の成長ぶりと対比させて検証していこう。

【気丈なオクチョンvs初心なインヒョン】

舞台は、粛宗王の一人目の王妃が亡くなるシーンから始まる。この死がこれから始まる、「大奥」も真っ青の愛憎劇の幕開けとなる。
粛宗の母・大妃は、嫁である王妃の死を粛宗に内緒にしようとする。これって、普通ありえない話で、どんななさぬ仲の親子や嫁姑の間柄でも、嫁の死をその夫である息子に知らせない母親がどこにいるだろう。大妃は、過去にも、病気で苦しむ夫(先王=顕宗)の死に目にも立ち会わず、粛宗の母に対する恨みの激しさは相当のものと見た!

母性に飢えている王・粛宗に優しく接するのは祖母の大王大妃。ところが、大妃と大王大妃との仲が相当悪い様子。こちらもハンパな嫁姑の間柄ではなさそうだ。

その頃オクチョンの身辺にも何やら一波乱起きそうな気配が…。どうやらオクチョンの母が不倫をしていたらしい。ところが、相手の夫人が押しかけてきても臆するどころか、婦人に立ち向かうオクチョン。とうとう婦人にホッペをぴしゃりとやられるが、それでも、ひるまずたじろがず相手をにらみつけるド迫力は、「女人天下」のナンジョンも真っ青!元々目鼻立ちのはっきりしている女優・キム・ヘスが、くっきり目張りにつけ睫で凄む顔には視聴者も震え上がるはず。しかし、この目が後に、粛宗に猛烈な秋波(色目)を送るのだから、どうしてなかなか侮れない。

オクチョンの人生は、伯父が現王朝への謀反計画に加担したことで奈落に落ちる。逆賊の一族となってしまったのだ。そこでオクチョンは女官になって身分を取り戻そうとする。美貌と聡明さに自信のある彼女のもくろみは王の“お手つき”になること。しかも、「お手つきになっても、側室にはならない」と公言する。これって、王妃になるってこと!?身分が中人だったせいなのか、それとも100年ほど現代に近づいてきたからなのか、えらく高望みに打って出たもんだ。あの「女人天下」のナンジョンの望みでさえ、「王妃の兄の正妻」どまりというのに。第4話でオクチョンの野心満々のセリフがたくさん飛び出すので楽しみに。

女官に向けてまっしぐらのオクチョンは、あざとすぎる気性が嫌われもしたが、結局、大王大妃に認められ無事女官になる。ところが、さっそく事件勃発!この気の強いオクチョンが、初日早々恐れをなして女官部屋を飛び出す事態が起きるのだ。いったい何が起きたのかは、第6話でご確認を。
ところが、これが吉と出て、初日早々粛宗のお手つきになる。「粛宗、手早ツ!」と思わずのけぞってしまう超特急のファースト・ラブぶり。

このとき粛宗にはインヒョンという正妻が決まっていたが、オクチョンの毒牙にかかって“恋は盲目”状態の粛宗には、生真面目で慎み深いインヒョンは興味の対象外!哀れインヒョンは婚礼の日さえ独りさびしい夜を過ごす。

さあ、ここからオクチョンの独り芝居が始まる。オクチョンお得意の手口は、とにかく王妃に楯突いて怒らせ、堪忍袋の緒が切れたところで、粛宗の登場を計算した上で、“涙して王妃に許しを請う”というもの。これから先、何度もこの手でだまされることになるのだが、そのたびに、骨抜きになった粛宗が情けなくなる。また、チョン・グァンヨルが、見事に情けない王を演じているのだ。

インヒョン王妃の筆頭応援隊である大妃は、粛宗&オクチョンの人目もはばからない熱々振りを危機に感じ、オクチョン追い出し作戦に出る。まんまと罠にかかったオクチョンは追放されるのだが、粛宗の落ち込みようがまたまた実にだらしない!

夫には見向きもされず、姑からは夫を振り向かせられない情けない嫁といびられ、泣いてばかりのインヒョンだったが、意を決して粛宗の寝殿に向かう。なんと、愛人が消えて元気のない夫のために安眠が得られるようにと寝具を整えにいくのだ。なんと健気な、できた嫁だろう!
ところで、このシーンで、不眠に効く花として菊の花が登場する。日本でも、菊はすぐれた薬効をもつ植物として古くから知られ、精神を安定させたり、不眠解消や疲れ目、高血圧などに有効だといわれているので、不眠に悩む方は試してみるものいいかもしれない。

ひと仕事終えたインヒョン王妃は帰りがけに、元気のない粛宗と出会う。まったく興味のない妻ではあるが、さすが、この健気な妻の姿には心を打たれたのか、二人はやっと結ばれる。二人の束の間のスロー・ラブの始まりだ。このドラマのラブシーン、個人的にはあまり好みではないが、このシーンだけはオススメしたい。インヒョンを演じたパク・ソニョンの表情が実にいい。(第13話39分あたり)

さあ、やっと始まった二人のスロー・ラブはいつまで続くのか…。

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キャスト:チャン・オクチョン(後のチャン・ヒビン)(キム・ヘス)、肅宗(スクチョン)(チョン・グァンリョル)、インヒョン王后(仁顕王后)(パク・ソニョン)、ミョンソン王后(キム・ヨンエ)
監督/演出:イ・ヨングク/ハン・チョルギュン、脚本:カン・テワン