★「歴史ドラマ」を楽しむ-韓国三大悪女-『張禧嬪』チャン・ヒビン編⑥最終回

特集 韓ドラここが知りたい 三大悪女
『張禧嬪』チャン・ヒビン編⑤からの続き。(ネタばれどっさり。ただし、読んでから観ても十分楽しめますが、ヒビンとインヒョンの最後について触れています。気になる方はドラマを最後まで視聴してからお読みください)

【悪女ヒビンvs聖女インヒョン】
前回の-『張禧嬪』チャン・ヒビン編⑤-で、「100話ずっと(嫉妬に狂った)女の戦いが続くのかと思うと…」というようなことを書いたが、前言を取り消したい!ソン・イルグクが登場する50話あたりから物語りは俄然面白くなってきた。これまで応戦一方のインヒョン側がソン・イルグク演じるチュンテクの登場で一気に互角の勝負に打って出たのだ。王族のチュンテクは私利私欲のない清廉な人物で、西人派に属する。チュンテクが廃妃インヒョンの復位のために計画したことは次の3つ。

①インヒョン復位を物語仕立てにした小説「謝氏南征記」を刊行する。
②粛宗、インヒョン、ヒビンの三角関係を風刺した童歌を流行させる。
③インヒョンを慕う下働きの女を粛宗のお手つき(側室)にする。
実にみごとな戦法。さすが「チュモン王子」と賞賛したい!

①の小説は、朝鮮王朝の小説家、伯父のキム・マンジュンが執筆したものでチュンテクがハングルで書いてくれと願い出た。彼は、この小説を仲間と手分けして書き写し、街中はおろか宮廷の女官たちにも読ませた。読んだ者はそれを3冊書き写し市中にばら撒く。“不幸の手紙”の要領だ。この小説がハングルだということに大きな意義がある。当時はまだハングルは国字ではなく、女性や身分の低いものが使用する文字として使われていた。チュンテクは、民が読めるハングルにすることで、インヒョンの復位を民の共通の願いとしたのだ。

②の童歌も同じだ。王は今ヒビンに惑わされているがそれは一時の過ち、インヒョンこそが生涯添い遂げる相手ということを、3人の名前をもじって歌にしている。これはチョ・ヒョンジェ主演の「ソ・ドンヨ」でも使われた手。さすがに子供が遊びに使う童歌まで取り仕切るのは難しいので、これも有効な戦術だ。

③は、女性を道具として扱った卑劣な手口だが、昔は洋の東西を問わず使われていたので、チュンテクを恨まないでほしい。実際、少々エロの入った(あくまでも調査隊の主観)粛宗にはこの③が一番有効だったのだから。

対するヒビンの仕出かした悪行は、
①ヒビン王妃を清国に認めてもらうため国が傾くほどの貢物をさせた。
②自分の味方や金の工面をするものには際限なく高位の役職を与えた。
③自分以外が粛宗のお手つきになることを許さない。
④殺人、買収、暴行、賄賂(わいろ)、恐喝、呪い…
他にも、誰彼かまわず悪態をついたり、被害妄想でわめき散らしたりとおおよそ手がつけられない。犯罪に明るいも暗いもないが、そのやり口の陰湿さといったら筆舌に尽くしがたい。ナンジョン(女人天下)だってもっとカラッとしていたし、ノクス(王の男)だってもっと可愛げがあった。
ヒビン兄ときたら、これに輪をかけて、廃妃インヒョン宅に死体を投げ込んだり、遂には幽霊まで送り込んでいる。

さすがの粛宗もこんなヒビンに嫌気がさし、チュンテクの思惑通り側室になったスクビン妃(チェムスリ)にぞっこん!懐妊という快挙も遂げた。チュンテクとスクビン妃の活躍でとうとう、ヒビン一族の悪事が暴かれインヒョンは復位を果たし、王妃に返り咲く。一度廃妃した人間が王妃に復位したのは、500年の長い王朝でインヒョンだけ。それほどインヒョン王妃は民に慕われていたのだ。裏を返せばヒビンが憎まれていたのだ。実に6年にわたる長い戦いだった。

悪政に関わった南人派は朝廷から追い出され、3度目の政権交代(甲戌換局)で西人派が朝廷を取り仕切ることとなった。しかし、ヒビン兄は流刑となったものの、肝心のヒビンは降格しただけで、未だに跡継ぎ=王セジャの母としてインヒョンを目の仇としやりたい放題!

さて、ここで悪事を知りながら王や新しく要職についた西人派の官僚が、何故ヒビンを断罪に処しなかったのか?それは、「王の男」で出てきた10代王の燕山君(ヨンサングン)のためだ。150年経っても、燕山君の暴政は忘れらないほど悲惨なものだったと見え、ヒビンを罰することでセジャが燕山君のような暴君になることを恐れたのだ。悲しいトラウマだ。結局これがヒビンという稀代の悪女をのさばらせることになったのだ。

それにしてもヒビンを演じたキム・ヘスの悪女ぶりは他を圧倒していた。思い通りに事が運んだとき、鼻に皺を寄せて童女のように笑う彼女と、良からぬことを思いついたとき右の口角を上げて「ハッ!」と凄む彼女。とても同一人物とは思えない。こんなヒビンを演じてしまって彼女の女優生命は大丈夫なのか?と要らぬ心配をしてしまったほどだ。

それにしてもインヒョン王妃はあまりにも優しすぎた。彼女を見て、優しすぎるのも罪だということを改めて思い知った。

粛宗は自分の非を改め聖君になろうとしたが遅すぎた。3度も政権交代をしたというのに、ヒビンにかけた温情がきっかけで、最後を任した西人派も老論派と少論派とで分裂するのだ。「いったい、こやつらは民のことを考えているのか!ハッ!」ヒビンではないが、思わず、テーブルを叩いて怒鳴りたくなった。

ドラマの後半は物語の展開も早くとても面白い。あらすじを明かすとその面白さが半減しそうなので、ネタばらしはここまでにしておく。ただひとつだけ、大きなネタばらしをさせてほしい。最終的に粛宗を愛した二人の王妃は死ぬことになる。さて、インヒョンはヒビンをやり込めることができるのか?ヒビンは改心するのか?これについてはご自身でお確かめいただきたい。

それにしても、悪女ヒビンも聖女インヒョンも女として見れば、どちらも哀れな生涯だった。次は、「韓国三大悪女」まとめ!

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キャスト:チャン・オクチョン(後のチャン・ヒビン)(キム・ヘス)、肅宗(スクチョン)(チョン・グァンリョル)、インヒョン王后(仁顕王后)(パク・ソニョン)、ミョンソン王后(キム・ヨンエ)
監督/演出:イ・ヨングク/ハン・チョルギュン、脚本:カン・テワン