脳波で電動車いすをリアルタイム制御、映像で仕組みを解説

2009年06月30日16時05分暮らしと文化
試作したBMIによる電動車いす制御システム
(キュワン・チェ博士提供)
右上図:電極装着状態を上から見た写真;
○で囲んだ5つの電極を使用

理研BSI-トヨタ連携センター(BSI-TOYOTA Collaboration Center:BTCC)は、脳波を用いて電動車いすを125ミリ秒(1ミリ秒は1000分の1秒)で制御するシステムの開発に成功した。
同センターは、独立行政法人理化学研究所、トヨタ自動車、豊田中央研究所、コンポン研究所が2007年に設立したもので、BTCC非侵襲BMI連携ユニットのアンジェイ・チホツキ・ユニットリーダー、キュワン・チェ研究員らが共同研究した。
従来の空間-周波数フィルター法、線形分離器の技術に、理研BSIで培った脳波情報の処理技術であるブラインド信号分離法を融合した新システムを開発し、従来は数秒程度必要だった脳波の解析結果を、125ミリ秒という極めて短い時間で得るとともに、脳波の解析結果をリアルタイムでディスプレイ上に表示し、「自分の意思」と比較できるシステムを構築したもの。
空間-周波数フィルター法は、車いすの制御に重要な電極・周波数に高い加重値(重み付け)を与え、重要ではない信号との差別化を図る技術。
線形分離器は、入力信号が、複数用意されたClass(種類)のいずれのClassに属するかを判定する技術のひとつ。
ブラインド信号分離法は、脳波に含まれるノイズ成分と車いす制御に必要な成分とを分離する技術で、計測された脳波信号だけで分離処理を実行する技術。
今回の研究では、電動車いすの制御にこのシステムを応用し、脳波の解析の信頼度を検証した。システムは、個々の操作者の特徴に合わせて設定の微調整を行い、意思の認識率を向上する機能を持っている。そのため、操作者は、効率的に短期間で、自分の意思通りの方向(前・右・左)をシステムに認識させるコツをつかむことができる。認識した結果を電動車いすの制御動力に伝え、95%以上という信頼度で車いすの前進および左右旋回の3方向を制御することに成功した。
今後は、この技術を医療・介護分野を中心とした広い分野で応用可能な要素技術として発展させていく予定だ。次のステップとして、より多くの動作への応用、簡易な電極の開発などが考えられている。今回は、手や足の運動を想像して積極的に作り出した脳波が対象となったが、計測・解析技術をさらに発展させることで、運動以外の意図や状態を反映する脳波への応用の可能性にも期待しているそうだ。
映像では、こうした文章だけでは理解しづらい仕組みを、実際の車いすの動きや頭部にも装着した脳波形センサーの実物、表や図形などを用いて分かりやすく解説している。

脳波で電動車いすをリアルタイム制御