「雲が描いた月明り」時代背景③：王が恐れた“洪景来の乱”（ホン・ギョンネの乱）って？

パク・ボゴム×キム・ユジョンの最新主演作「雲が描いた月明り」で、映像では登場しないものの、ドラマ中盤以降何度も話題に上り、王を怖がらせた“ホン・ギョンネの乱”という言葉！今回はこの乱と実在した洪景来について紹介しよう！本作のDVDは大好評発売、レンタル中で公式サイトで予告動画が公開されている。
※8話まで未視聴の方はご注意ください。実在の人物紹介のために一部ネタバレしています。

【「雲が描いた月明り」を2倍楽しむ】では、時代背景や胸キュンインタビュー動画、各話のあらすじと見どころ、豆知識などをまとめて紹介している。

左から、キム・ビョンヨン、世子ヨン、ホン・ラオン■「雲が描いた月明り」で話題のホン・ギョンネって？
10年前に民乱を起こし死んだとされている人物。ホン・サムノムという偽名を名乗って男装して内官になったホン・ラオンの父親。民乱を起こした仲間たちは、秘密結社を結成して平等な国を造ろうと機会を狙っており、王は彼らが再び乱を起こすのではないかと恐れていた。
ラオンの母は、これに娘を巻き込みたくなくて、幼少期からラオンを男として育て、官軍と秘密結社の両方から逃れるためにラオンと離れ離れになっていたのだった。

■農民の格差と両班の不満
18世紀中ごろを過ぎると朝鮮では、稲作の技術も進歩し米の生産力が向上し、富農と貧農の格差が生じ、庶民でありながらも地主層が誕生した。田畑を持てなかった農民たちは、都市や鉱山などの労働に従事したり、富農に雇用されたりして暮らした。
また、地方の私商や行商人たちたちの活動によって貨幣経済も一般化し、商業も発展していった。こうした商業発達の過程を描いたドラマが「商道」や「客主」だ。
19世紀に入って安東金氏による勢道政治が始まると、劇中にもあったように一族が国の要職を独占した。どんなに有能でも科挙に合格できなく、両班たちの間で不満が膨れ上がっていた。特に平安道出身者には門戸を固く閉ざされていた。

　朝鮮王朝時代の地図■平安道差別
半島の西北部に位置する平安道地方（現在の北朝鮮領）は、「太王四神記」のオープニングにあった檀君朝鮮の中心地で昔から産業が盛んで有能な人物も多く輩出してきた。（【韓国歴史年表】、【地図】の「朝鮮王朝の地図」で平安道の位置確認）
しかし、李朝時代には平安道を含む北部地域（咸鏡道、平安道、黄海道など）に対する差別が盛んだった。
この地域は女真族の領域で、高麗、李朝に朝貢を行っていたが、国境付近では小競り合いが度々起きていた。さらに、元（中国）や日本による朝鮮半島出兵の際には、女親族が寝返って朝鮮に攻め入ってきたために、朝鮮民族による女真族蔑視が強くなり差別も激しく、朝鮮王朝時代は、女真族の居住地区であった平安道を含む北部地域出身者は、官吏登用から排除されてきた。
もっとも、朝鮮王朝を建国した李成桂は女親族の居住地区である北部出身で、元の地方官の家系だったが、高麗に加勢して官吏となった。「六龍が飛ぶ」では、こうした李成桂の過去を「裏切り者」の歴史として政敵たちが利用した。詳しくは「六龍が飛ぶ」第1話詳細あらすじの「■豆知識-②」を参考にされたい。

■洪景来（1771～1812年）の登場と洪景来の乱
不安定な政情が続く朝鮮半島でも特に冷遇されていた平安道で官職に就けず没落した両班たちは、体制の中に入ろうと努力するより体制に立ち向かう抵抗の道を選んだ。その一人が洪景来だった。
放浪の旅に出た彼は、禹君則（ウ・グンチク）と出会い意気投合。二人は勢道政権を打倒し、地方差別を受けていた平安道の人々の不平等をなくすために、立ち上がった。10年間という長年をかけて準備し、同志1千余名と挙兵し“洪景来の乱”、または“平安道農民戦争”とも言われる乱を起こした。
あっという間に清川江以北の9邑を占領したが、博川の松林戦闘で官軍に敗れ、定州城に入って3か月にわたって抵抗したが城が陥落。洪景来は銃弾に倒れ、約半年で乱は失敗に終わった。

■民衆の英雄になった洪景来
結局は失敗したが、平安道の不平等をなくすために起こしたこの乱は、政権の腐敗と無能さを世に暴露し、民衆の力でも封建体制を否定できるのだと言うことを知らしめた。洪景来の名は英雄として民衆の中に広まり、「洪景来は実は死んでいない。生きていた」という噂が広まり、自称・洪景来を名乗る反乱軍指導者が各地で続出した。そして彼の精神は引き継がれ、1862年には“壬戌民乱”、1884年には“甲午農民戦争（東学党の乱）”などの農民の乱など全国で民乱が相次いだ。
「商道」の終盤（【「商道」を2倍楽しむ】で確認）でも洪景来の乱が、時代が大きく変わる象徴として印象深く描かれており、こうした農民の乱が頻発した時代を舞台にした作品に「名家の娘ソヒ」（原題：土地）などがある。

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（参考：『朝鮮王朝実録 【改訂版】』「第23代 純祖実録」、『韓国の歴史』他））