追悼!「ビッグショー」で森繁久彌の歌を配信-NHKオンデマンド
戦後の半世紀を第一線で活躍し続けた人物"森繁久彌”-喜劇役者、俳優、分筆家…として、世代を問わず多くの人々から愛された森繁さんが、10日、入院先の病院で息を引き取った。96歳だった。俳優として数多くの作品を残した森繁さんだが、あの何とも趣のある、森繁節が奏でる歌手"森繁久彌”のファンも多いはず。NHKオンデマンドでは、1794年から79年までNHKで放送された音楽番組「ビッグショー」から「森繁久彌 誰か戸を叩(たた)く」を配信している。森繁さんが、ダーク・ダックスや葵(あおい)ひろ子たちと、楽しいおしゃべりと歌を披露している。
森繁さんは1319年大阪で生まれた。早稲田大学在学中に演劇部に所属したが、当時必須とされていた軍事教練を拒否して大学を中退している。その後複数の劇団で下積み生活を送り、39年にNHKアナウンサー試験に合格し、満州電信電話の放送局勤務となった。森繁さんはこの時期に、満洲映画協会の映画のナレーション等を手掛けている。味わいのある森繁節はここから始まったのかもしれない。
そんな森繁さんの人気がブレークしたのは、帰国後、50年にNHKラジオ「愉快な仲間」にコメディアンとして登場したときだ。これがきっかけで映画や舞台の仕事が舞い込み、数々の映画に出演している。代表作としては「社長シリーズ」(33作)、「駅前シリーズ」(23作)などの喜劇映画がある。
テレビでも放送開始の53年から「半七捕物帳」(NHK)や「生と死の一五分間」(日テレ)など、草創期の作品から出演している。
しかし、森繁さんが名優と呼ばれるようになったのは、織田作之助の小説を映画化した「夫婦善哉」(55年)からだ。大阪を舞台に大店のドラ息子としっかり者の芸者の夫婦愛を、森重久彌&淡島千景コンビで、喜劇役者から演技派俳優との名声を決定づけた。他にも「警察日記」等で味わいのある名演でファンを魅了した。舞台では59年から「森繁劇団」を結成し、ミュージカル「屋根の上のヴァイオリン弾き」にも挑戦し、約20年で900回に渡りテヴィエ役を務めるという偉業を成し遂げている。
アナウンサー出身の彼は、歌手としても大きな業績を挙げている。1959年から65年まで7年連続で紅白歌合戦に出場している。また、彼自身が作詞作曲した「知床旅情」は、知床半島はもとより全国で今なお愛され続ける名曲となった。
戦後の日本を明るくしてくれた多くの俳優や歌手がこの世を去っても、森繁さんは、この芸能界からいなくならないような気がしていた。2004年映画「死に花」以降、その姿をスクリーンで見ることはなかったが、不老不死の仙人のように森繁さんの命は永遠に続くと思わせる何か不思議な生命力を感じた。
1991年、伝統芸能以外の俳優で初めて文化勲章を受章したのも、森繁さん。まさに彼の人生そのものが、ビッグショーだったのかもしれない。NHKオンデマンドの番組を観ながら、かつての森繁久彌さんを偲びたい。ご冥福を静かにお祈りします。
◆ 番組詳細
出演:森繁久彌 、ダークダックス 、葵ひろ子
指揮:岩代浩一
演奏:東京放送管弦楽団
歌:東京放送合唱団
曲目:「誰か戸を叩(たた)く」「銀座の雀(すずめ)」「火の国旅情」「水師営の会見」「オールド・ブラックジョー」「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム」「大砲としゃれこうべ」「リパブリック讃歌(さんか)」「ちぎれ千島に雲が飛ぶ」「サンライズサンセット」。
視聴価格:315円/3日間
購入期限:2010年4月30日
NHKオンデマンド「ビッグショー 森繁久彌 誰か戸を叩(たた)く」