「商道-サンド-」主人公、林尚沃（イム・サンオク）と時代背景、原作本紹介

2016年04月04日18時16分ドラマ

ミリオンセラー小説をイ・ビョンフン監督が俳優イ・ジェリョンを主役にドラマ化したのが「商道-サンド-」。YouTube｜@MBCdrama_classicチャンネルにて関連動画が多数公開中だ。

「商道 -サンド-」は、大商人イム・サンオクの波乱万丈の生涯を描いた歴史ヒューマン・経済ドラマ。同名小説（作：崔仁浩）を原作に、イ・ビョンフン監督とチェ・ワンギュ脚本家がタッグを組んだ作品。【「商道-サンド-」を2倍楽しむ】では、各話のあらすじと見どころ、キャストの魅力などを紹介している。

林尚沃（1779～1855）と時代背景

林尚沃（イム・サンオク、1779～1855）は、朝鮮王朝時代後期、「イ・サン」の主人公・正祖から「チャクペ-相棒-」や「Dr.JIN」などに登場する哲宗にかけて義州を舞台に活動した。義州は、中国国境に近い場所。「トンイ」第24話でヒロインのトンイがチャン・オクチョンの兄チャン・ヒジェに命を狙われ、瀕死の重傷を負って都を追われてたどり着いた場所だ。（「韓半島の地図」の「朝鮮王朝の地図」を参考。“平安道”の海よりの中国との国境に近い場所）

4代続く義州の交易商人の家に生まれたが、両班でも大きな元手があるわけでなく行商に過ぎなかった。厳格な身分制社会だった当時、サンオクの父はドラマにもあるように訳官になる夢があったが、叶わなかった。サンオクは、「財上平如水　人中直似衡(財物の平等は水の如く、人の正しさは秤に似る)」を座右の銘に朝鮮一の商人になることを誓い、22代王・1806（正祖30）年頃から天性の商業手腕と座右の銘を胸に商いを始めた。その後、23代王・純祖の治世となり、国王の義父が力を持ち、政争を繰り返した党派に代わって安東・金氏一族による勢道政治が始まった。世の中は乱れに乱れ、各地で農民の乱が勃発。そんな中、1810（純祖10）年、サンオクは初めて国境地域の高麗人参貿易権を独占。1821（純祖21）年にはドラマで描かれるように清国商人相手に高麗人参で莫大な財産を築いた。国家の税金の半分以上をサンオクが収めたいうから驚く。

だが、サンオクは富を我が子に譲らず、座右の銘にもあるように貧窮にあえぐ民衆を救う為に使った。市場の米価格も暴騰し、流民たちに米を施すだけでなく、買上げた米を通常の原価で売ることで市場の安定化も図ったのだ。
こうした功績が純祖に認められ1832（純祖32）年には郭山郡守の官職に就き、2年後、亀城府使という官職に抜擢されたが、重臣達の猛烈な反発にあい辞退。その後は貧しい人達の救済、詩、お酒を楽しんで余生を送った。

原作はミリオンセラーの経済ドラマ

サンドこのサンオクを主人公に、崔仁浩が小説を執筆。韓国の大手新聞・韓国日報で連載が開始された。1990年代末、韓国ではそれまで順調に経済成長を続けてきたが、東アジア金融危機の影響を受けて失速。IMFによる自由化政策の下で深刻な経済不況に見舞われた。そうした中、小説は人気を博し、2000年秋に単行本化され、300万部を売り上げるという韓国史上稀に見る大ベストセラーとなった。小説はランダムハウス講談社より日本語訳もされており、日本でも多くの読者が感銘を受けている。多くのレビューが上がっているので参考にされたい。「商道上 (ランダムハウス講談社文庫)

イ・ビョンフン監督×チェ・ワンギュ脚本家

ミリオンセラーとなったこの小説をイ・ビョンフン監督に推薦したのは、大ヒットドラマ、「ホジュン宮廷医官の道」の脚本を手掛けたチェ・ワンギュ。イ監督も“イム・サンオク”という人物の魅力に痺れ、「ホジュン宮廷医官の道」コンビでドラマ化が実現した。ちなみにチェ・ワンギュは本作の3年後、大ヒット作「朱蒙（チュモン）」を手掛けた脚本家。

当時、同時間帯では絶大な人気のSBS「女人天下」や、KBS「冬のソナタ」の健闘もあり、「商道」は期待ほどの視聴率は残せなかったが、参考になる商いのエピソードや教えが満載で、なかなか不景気から抜け出せない日本の今、ぜひとも勧めしたい一作だ。