水に流された悪意の歴史!英祖からの最後の贈物とは?「イ・サン」43-44話見どころと予告動画-NHK
悩んだサンが下した処分は、祖父・英祖王の名誉を守るために、反乱の主導者キム・ギジュと数名だけを処分し、残りの重臣たちを許すというものだった。
43話では、サンの孝心を知った英祖が貞純王妃廃位の宣旨を出す場面が、44話では英祖の死にまつわる場面が一番の見どころとなっている。
【第43話】
英祖(ヨンジョ)は貞純(チョンスン)王妃を呼び出し、廃位つまり平民への格下げ処分の宣旨を下す。いつも自信満々で毅然としていた王妃の取り乱しよう、無様に連行される姿は敵ながら少々哀れでもある。続けて英祖はサンへの譲位の宣旨を出すが、孝心の厚いサンはこれだけはどうしても受けようとはしない。そこで、サンの気持ちを汲み取った英祖は、サンを摂政として全ての政務を代行させることにする。
王妃の処罰のウワサを聞いた和緩(ファワン)や老論派の重臣たちは、次は自分たちの番だと戦々恐々としていた。そんな中サンは貞純に会いに行き、王妃廃位の宣旨を公表しないことを告げる。これこそサンの逆襲の始まりだった。果たしてサンの真意は?しかし、このサンの深い考えが禍根を残すことにならないことを祈るばかりの筆者だった。
ここで全ての者が正式にサンが王位につく事を確信する。それをもっとも近くで実感したのがヒョイ嬪宮(ピングン)だった。ヒョイは一刻も早くサンの世継ぎが必要だと考え、ある行動にでる。まずは、ソンヨンを呼び寄せ、彼女を快く思わない恵嬪(ヘビン)に、今回もソンヨンがサンを助けたことを力説し、ソンヨンに今後もサンの力になってほしいと頼む。さらに、帰りにはサンに会って行くようにと促す。彼女はソンヨンを側室に迎えてサンの世継ぎを生んでもらおうと考えたのだ。王妃たる者の一番の任務とはいえ、愛するサンの側室を考える妻の悲痛な決意をお見逃しなく。
しばらくして謀叛に関わった重臣たちが次々に拉致される事件が起きる。拉致の事件の主犯はなんとホン・グギョンだった。サンが処罰を下さない輩をグギョンが代わって成敗しようと考えたのだ。これを知ったサンがグギョンを厳しく諭す場面でサンが、「自分が王世孫でなければ…」と激昂する場面がある。果たしてサンがその後続けた言葉は?
本格的な政務についたサンが最初にやったのは、「承政院日記」に書かれた父・思悼世子(サドセジャ)の悪意に満ちた記録を洗う儀式「洗草」だった。筆で書いた文字を水で洗う、まさに水に流す儀式であった。それぞれの思いの詰まった感動の儀式をお見逃しなく。実際に行われはこの儀式は、サンの孝心からのものであったが、同時にこれは思悼世子の記録が歴史上から一切抹殺されてしまった瞬間でもあった。
「承政院日記」とは、2001年にユネスコ指定世界記録遺産に登録された、朝鮮王朝時代の王命の伝達と履行を行う、大統領秘書室のような承政院の業務日誌。キム・ギジュやチョン・フギョムがこの部署にいたわけだから、当時のサンの悲惨な状況が創造できるだろう。詳しくは、「朝鮮王朝」豆知識で紹介。
いよいよ体調の優れない英祖が突然姿を消す。王宮殿にはきちんと畳まれた王の衣装が残されていた。「死に場所は決めてある」と言っていた英祖の言葉を思い出したサンは不吉な予感を覚え、ただちに英祖の行きそうな場所をくまなく捜すよう命じる。さあ、ここで英祖がどこに向かったのか?常に民のことに心を砕いたいかにも英祖らしい行動だ。
英祖は一連の行動の最後にソンヨンを呼び寄せあることを頼む。ソンヨンの人柄と筆致、そしてサンのソンヨンへの思いを知った英祖が頼んだこととは…?
【第44話】
英祖は、ソンヨンに自らが死に至らしめた息子・思悼世子の肖像画を描いてほしいと頼んだのだ。英祖は、かつて怒りに任せて思悼世子の肖像画を全て燃やしてしまったのだ。そこで愛する孫のために父親の肖像画を残してやろうとしたのだ。口述で息子の面影をソンヨンに伝える場面、懐かしくもあり、自分で殺めた後悔の念に胸が締め付けられる俳優イ・スンジェの最後の英祖王の名演を堪能されたい。英祖はソンヨンとの別れの際に、これまでサンを大事にしてくれたことへの感謝と、これからもサンのことを頼むとある指輪を託す。
サンが迎えに来たとき、すでに英祖は意識を失っており、とうとう意識の戻らぬまま息を引き取ってしまう。身内にまで裏切られ命を狙われたサンが唯一頼ることができた偉大な王であり、祖父であり、父代わりでもあった英祖の死に直面したサンの悲しみようは、「朝鮮王朝実録」の中に詳しく紹介されたほど。イ・ビョンフン監督はこのあたりを史実に照らし合わせて、実に丁寧に描いている。最期の確認で御医が英祖の鼻の下に綿をあてがう場面や、王の死を知らせるため、王宮殿の屋根に上って、王の普段着を大きく振る儀式など見どころたっぷりだ。ちなみに、屋根の上の儀式は、空中にとどまる王の魂を王の着衣に染み付いた体臭で呼び戻そうという意味がある。
ほかにも王に着せられた黄金の着衣や、葬儀でサンたちが着用する麻でしつらえた粗末な喪服。これについては、「朝鮮王朝」豆知識の「葬儀」で詳しく紹介しているので参考にされたい。
サンたちが悲しみにくれる中、7階級も降格となったチョン・フギョムは懲りずにまだ報復のチャンスを狙っていた。今度の陰謀は、まず、民意を味方につけること。そしてずばりサンの暗殺だ!
果たしてこの二つの陰謀をフギョムはどんな手口で決行しようとするのか、44話後半で確認しよう。
さて、今回はすっかり和やかムードになった図画署での楽しい場面がたくさん見られるのでお見落としなく。イ画員とタク画員の相変わらずの迷コンビも笑わせてくれるし、すっかりアイドル的な存在になったソンヨンを気遣う画員たちや茶母たちの心遣いも温かい。そんな中、いかにもイ・ビョンフン監督らしい遊び心が見られるシーンがある。ソンヨンを呼びにきたヒョイの侍女キム尚宮を見たチョビが、「見たことがある、前世であっていた」という件だ。歴史ドラマファンならピンと繰る、イ監督の遊び心とは?答えは次回の見どころ紹介で!
「朝鮮王朝実録」とは、朝鮮王朝25代472年の記録を、全1,894巻、888冊、6,400万字で記された書物。1997年にユネスコ指定世界記録遺産に登録された。詳しくは、「朝鮮王朝」豆知識で紹介。
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※ NHK BShi「イ・サン」番組サイト 画像:(c)2007-8 MBC
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