【蒼穹の昴】絢爛豪華な清朝文化を堪能しよう!-京劇、満服の魅力[コラム]

2010年11月20日17時34分ドラマ
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ドラマでは紫禁城の内と外で舞台が入れ替わりますが、やはり宮廷内に移ると西太后を中心とした華やかな満服(満州族の衣装)に目を奪われてしまいます。そして春児を一躍西太后のお気に入りとするきっかけとなった京劇も、その衣装がきらびやかで画面が明るくなりますね。京劇は古典演劇ですから自ずと衣装は漢族の服装になります。少数民族の満州族が大多数の漢族を長年に渡って支配出来た理由の一つは、漢族の文化を積極的に取り入れる柔軟な姿勢にあったのでしょうね。事実、京劇の大ファンであった西太后のお陰で、この時代に京劇文化は成熟を極めたとされています。
満服については、ドラマの公式サイトでも特集ページ内に「西太后ファッション」として紹介してあります。主に髪型と服について紹介してありますが、西太后で特徴的なのはとても長い爪飾りではないでしょうか。中国の貴婦人には薬指と小指の爪を長く伸ばす風習があり、それは家事を一切しなくていいという、いわばセレブの証です。西太后の時代になるとこの爪を守る「護指」としてカバーが付けられ、その上に更に宝飾を施してファッションとしたのです。今で言うネイルアートの前身のようなものでしょう。西太后が実際につけていた護指は現存しますし、「飾り爪」でネットショップを検索するとお手頃価格で販売されているのを見つける事も出来ます。でも実際付けていると何かと不便そうですね。西太后に謁見した外交官が握手する時痛くて苦労したという話も残っているようです。

一方の漢服ですが、清朝の支配が始まった当時に辮髪、満服を強要したのでこの時代には男性の漢族の衣装はまず公には見られませんが、女性に対しては比較的ゆるかったようです。事実、漢族の奇習である纏足も清代で消滅する事無く長く伝えられていました。今から15年ほど前、私が当時務めていた職場で「祖母は纏足をしている」という方がいたのですが、あまり面識の無い方なので詳しく聞く機会を持てなかったのが今でも悔やまれます。それだけ最近まで残っていたと言うのに驚きでした。

[京劇に人生を捧げて時代に翻弄される役者を描く「覇王別姫~さらば我が愛」]
このドラマをご覧の方には中国映画ファンの方もいらっしゃるでしょうからご存知の方も多いかもしれませんね。春児の立身出世にとって欠かせないキーワードである京劇をテーマに話そうとすると、私が真っ先に思いついたのがこの映画です。これは1993年の中国・香港の合作映画で香港のスター歌手・俳優であったレスリー・チャンと、後にレッドクリフで曹操を演じた張豊毅(チャン・フォンイー)、中国の大女優であるコン・リーといった豪華な顔ぶれです。当時中国映画は大抵東京や大阪などの大都市でしか上映がなかったのですが、この映画だけは珍しく私の住む地方都市でも上映があり、大喜びで劇場まで3度も行った記憶があります。
1930年代の北京、捨て子同然に京劇俳優養成所に預けられた小豆子は一座で中心的な少年の石頭と出会って共に育ち、大人になって'程蝶衣'(レスリー)と'段小楼'(張豊毅)という芸名で大人気役者として出世します。小楼は娼婦の菊仙(コン・リー)と結婚しますが、蝶衣は小楼に思いを寄せ続けます。やがて時代は中国に起こった「文化大革命」の波に飲まれ、毛沢東の掲げた破壊の対象として挙げられた京劇役者の2人にも過酷な運命がやってくるのです。

映画前半は養成所での過酷な訓練の様子が描かれていますが、黒牡丹の特訓どころじゃないそれはそれは厳しいものです。きっと春児の修行も厳しかったんだろうなあとこの映画を思い出して脳内補完していた私であります。この映画のタイトルにもなっている「覇王別姫」は春児が西太后の目に止まるきっかけとなった舞台の演目表にも書かれてあり、西太后が読み上げる場面もありましたね。この映画には様々な演目の京劇が出てきますので、一度見れば大体の京劇の知識が身につくかと思います。話はそれますが、最近結婚した東山紀之さんと木村佳乃さんの出会いのきっかけはこの映画を元にした舞台での共演でした。ヒガシさんが蝶衣で、木村さんが菊仙さんの役です。付け加えと、小楼をやったのは遠藤憲一さんです。そんなこんなで、自分的にこの作品を思い出す事が最近頻繁にあったのでご紹介してみました。京劇に興味の出た方には入門として見ると良いかもしれません。


ドラマ「蒼穹の昴」は毎週日曜日のよる11時から放送。予告動画は、番組公式サイトの「あらすじ」で視聴出来ます。

あらすじ|NHKドラマ「蒼穹の昴」

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