★「歴史ドラマ」を楽しむ⑫新ヒーロー登場?‐『チェオクの剣』(前編)ハ・ジウォン

特集 韓ドラここが知りたい 新ヒーロー登場
家柄の格の違いから、互いの気持ちを伝えられない上司と部下。ヒロインの部下には幼いころに生き別れた兄がいた。

その兄は、会社をのっとられた恨みを晴らすため、元社員たちと一矢を報おうと機会を狙っている。上司を愛しながらも、兄とは知らない男にも心を残す部下・・・。どうだろう?韓ドラの現代劇にありがちなストーリー展開。これが、チェオクの剣のあらすじだ。衣装を背広に着替えればそのまま現代劇になりそうだ。今回は「チェオクの剣」の主役3人の魅力に迫ってみたい。

舞台は17世紀末の朝鮮王朝時代。これ以前のドラマでは男性を主役に据えるのがほとんどだが、この時代からは女性を主役に描いたドラマも多い。しかし、その多くはお家騒動や宮中に渦巻く男女の愛憎劇が多い。

「チェオクの剣」はこれまでの歴史ドラマとは大きく趣を異にしている。テーマを「愛」に絞込み、長編が多く、少々冗長になりやすい歴史ドラマの中で、全14話とコンパクトにまとめ、テンポよく物語が展開する。ワイヤーアクションやコンピュータグラフィックスなどを多用し、韓国で初めてHDワイドスクリーン・5.1ch音声で放送した。ワイヤーが画面に映り込んだりするシーンもあったが、主役陣のアクションシーンの素晴らしさは、これを補って余りある。今では、なんでもないこれらの技法も、当時(2002年)は珍しく、「チェオクの剣」はこれまでの歴史ドラマの域を超えた「フュージョン時代劇」というジャンルを作り出した。

この新しい試みは若者の心を捉え、若い視聴者層から圧倒的な支持を取り付けた。あまりにドラマにはまりすぎたファンを「茶母廃人」と呼んだほどだ。若者達をこれほどまでに虜にした主役3人とはどんな俳優なのか?

茶母とは、役所などで下働きする女性のことで、主人公のチェオクは、今で言う警察署(捕盗庁)に属している茶母。しかし、その聡明さとずば抜けた武術の腕が認められ、犯罪事件の捜査で活躍する。今で言うなら腕利き女捜査官といったところ。このチェオクをハ・ジウォンが演じている。

(C) MBCハ・ジウォンはその類まれな表現力でデビュー以来、実にさまざまな役に体当たりしている。1997年にドラマ「大人たちは知らない」でデビューし、「学校2」で人気に火がついた。2000年には「真実ゲーム」で映画デビューを果たし大鐘賞新人賞を受賞している。その後は映画「リメンバー・ミー」で清龍映画祭女優助演賞を獲得。続けて映画「友引忌」「ボイス」と恐怖映画に出演し“ホラー・クイーン”の称号を授かり、スターの地位に上り詰めた。

その後も演技の幅を広げ、ついに「チェオクの剣」で歴史ドラマに初主演する。その後は、「バリでの出来事」、映画「恋する神父」「デュエリスト」などの作品で、日本でも絶大な人気を集める女優となった。若手トップスターのカン・ドンウォンと共演した「デュエリスト」は、この「チェオクの剣」がモチーフになって映画化された作品だ。

このあとの作品で、妓生(キーセン)の生涯を描いた「ファン・ジニ」はNHKで放送された。ハ・ジウォンは「ファン・ジニ」でKBS演技大賞を受賞している。そういえば、ドラマ、映画の各分野での新人賞を全てさらったのはハ・ジウォン、彼女だけではなかっただろうか。

セクシーさと純粋さ、残忍な微笑と優しい涙など、複合的なイメージを表現豊かに演じきれる貴重な女優だ。次は、男性二人の主役に迫る!

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MBC JAPANlで「チェオクの剣(茶母)」配信中
  • ハ・ジウォン
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ハ・ジウォン、イ・ソジン、キム・ミンジュン
監督/演出:イ・ジェギュ、脚本:チョン・ヒョンス