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用語については「新羅王国」豆知識を参考に。
勅書はなかったと嘘をつくピダムをトンマンは信じた。いや、嘘と見抜いてそれでも信じようとしたのだ。勅書をピダムが隠したことによって、ミシルを捕らえる最後の手段が使えなくなってしまった。
そんな時チュクパンの言葉にヒントを得たピダムが、ミシルたちのいる大耶城の生命線である川を塞き止め水路に毒をまくことを提案。敵を倒すためには手段を選ばないピダム。口の端をキュッと上に持ち上げる彼のしぐさがミシルに重なる。幼いあの頃、“三韓地勢”の本を取り返すため多くの人を皆殺しにしたあのころと、ピダムは何も変わっていなかった。
もちろん、いくら戦とは言え、そんな非人道的な作戦を実行するはずのないトンマンとユシンは、これを参考に、水路を断ち毒をまくと言う噂を流し、敵を撹乱しようと考えた。

最後の対談で、トンマンは「人材としてミシルが欲しい」と正直に打ち明け、自分に仕えるのが嫌なら、自分を“新羅の主”の後継者として育ててはどうかと提案した。それは、かつてミシルも考えたことのあったことだった。しかし、自らが“王”になる夢を見てしまったミシルにとっては、もはやそれは到底受け入れられない提案だった。ここで、はじめてミシルが新羅にかけてきた熱い情熱、愛する気持ちをトンマンに吐き出す場面がある。交渉は決裂だ!しかし、トンマンはこのとき、はじめてミシルの中に王の姿見た。
それでも何とか説得しようとするピダム。ここで、ピダムがミシルからあることを聞かれ、ミシルを“オモニ(母)”と呼ぶシーンがある。短いシーンだが、この場面がミシルに最期の決意をさせる重要な場面。絶対に見逃すことのないように。


ソルォンに全てを託した後、ミシルは自らの命を絶った。その最後を看取ったのはピダムだった。最後に母子の情愛に訴えようとするピダムを、あざ笑うミシル。しかし、その心のそこにはピダムへ託す強い思いがあった。ミシルを演じたコ・ヒョンジョン、最後のカリスマ演技を目に焼き付けておこう。
50話で、ミシルの長きにわたった野望が果てた。そしてそれは、ミシル第2の野望の始まりでもあったのだ。
ミシルの最期を見ることのできなかったトンマンは、ミシルの死にショックを受け、自分にとってミシルがいかに大きな存在だったかを思い知った。そして、自分以上にショックを受けているピダムにミシルとの関係を問いただした。ピダムはミシルが母であること、そしてミシルから捨てられたことを遂に明かした。泣きながら辛い胸の内を語るピダムに、生後すぐ城外に出された自らの身上と重ねたトンマンは、静かにピダムを抱きしめた。この場面は余計な見どころ紹介はやめておこう。
ミシルが自決して全てが終わったはずだったが、ミシルの時代に幕を引かない男が二人いた。チルスクとソクプムだ。たった二人では到底成し遂げることのできない野望。それでもミシルから受けた恩義を命がけで果たそうとした。幼少の頃からいけ好かない奴だと思っていたソクプムが、ドラマ後半に来て抜群の存在感を魅せてきた。演じたのは、ホン・ギョンイン。幼少期はノ・ヨンハクが演じている。ホン・ギョンインは、子役出身の俳優。彼が注目されたのは映画「ハリウッドキッドの生涯」「我らの歪んだ英雄」などで、ドラマでも「砂時計」「若者のひなた」などの名作に出演し、子役時代から早くもスターダムに上った俳優だ。
さあ、チルスクが決死の覚悟でトンマン殺害にやってきた。迎え撃つのはユシンとピダムの二人。不死身のチルスクもついに倒れるのだが、致命傷を負うシーンは、さすが“本格派医療ドラマと歴史の専門家、クライムアクションを成功させたスタッフ”たちだ。チルスクの命を絶ったのは、華麗な袈裟斬りでもなく、潔い真っ向斬りでもない。鎧の隙間を狙った胴斬り、それも一撃ではない。何度もギーコギーゴとやるのだ。そのリアルさに、「痛いっ!」思わず自分の腹をまさぐってしまった筆者だった。

さあ、善徳女王の第1部はいかがだっただろう。第2部ともいえる52話からは、ミシルの遺した次なる野望が始まる。さあ、いったいどんな物語が始まるのか?乞うご期待を!
