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、用語については「新羅王国」豆知識を参考に。
★今回は、全ネタばれしています。ご注意ください。しかし、そうせずには居られないほど、見どころたっぷりです。
ミシル一派はピダムを王にするため、かつてのアショカ王の仏像の話にちなんだトリックを考えた。こういったことに悪知恵が働くミセン公のアイデアだ。その話とは、真興王の時代、まだ仏像や寺の造り方がわからない時代、木箱を載せた大きな船が流れ着いた。そこには、仏像の材料となる青銅と金、そして製図が描かれたアショカ王からの手紙が入っていたというもの。
ミセン公は、この話と同じように木箱の中に手紙をいれた船を漂着させた。これは吉兆ということで、手紙はトンマンに届けられた。
手紙には、「極楽浄土の仏の名を持つ者が神国の王になる」とある。極楽浄土では仏のことを曇と呼ぶ。ちなみに、極楽浄土の開祖は曇鸞(ドンラン)という僧。つまり、この手紙は「ピダム(眦曇)が新羅の王となるべき」と読み替えることができる。
こんなところで自分の名前が出てきては、今さら申し開きもできない。この話は一気に市中にまで広

チュンチュは、後の武烈王となる人物で、「容姿端麗、美男子、話し上手、好人物…」と、彼を善と評価する歴史書は多い。ところが、ここでは無実のピダムに罪を擦り付ける悪として描いている。まあ、母の恨みやその他諸々の事情はあるにせよ、歴史に名を残す英雄らしからぬ仕業。
しかし「歴史とは所詮、勝者の側から書かれたドラマ」、堂々と新解釈やフィクションで歴史をなぞった「善徳女王」、これこそ、歴史ドラマの醍醐味!
とにかく、トンマン以外の王室派は全員がピダムの排除を口にした。そして、ミシル一派は、トンマンに忠誠を誓ったピダムを翻意させようと躍起になった。
産まれてすぐに捨てられ、父代わりの師匠からは忌み嫌われ、母とは名ばかりのミシルからは勝手に後継者とされ、せっかく実りかけた唯一の愛まで取り上げられようとしている。身から出た錆というところもあるが、あまりにもピダムが哀れだ。しかし、こんな時でもトンマンだけはピダムを信じ続けた。
さすがのユシンまでがピダムを捨てろというが、トンマンは「人を得ることは天下を手にするより難しい、だが、人を得るよりずっと難しいのは人を捨てることのはず…」という名言を吐く。不景気、即、リストラと考える企業のトップにぜひとも聞いて欲しい台詞だ。
なんとしてもピダムを捨てられないトンマンは、ピダムをしばらくの間ソラボルから離れさせ、その間にことを片付けようとした。トンマンから渡された指輪を手に、おとなしく待っていればよかったのに、ピダムは何とか自分で片をつけようと動き出してしまった。ピダムは、まずはヨムジョンから始末しようと考えた。見どころ⑩でも触れたが、ピダムのアクションシーンは空中からの俯瞰で撮るカメラワークが多い。短いシーンだが、ここでもきれいなアクションが見られる。

ところで、これがユシンならどうだっただろう。「これは何かの間違い。トンマンに限って…」となるところ、ピダムは簡単にトンマンを疑ってしまった。何も、ピダムの愛が少ないとかそういうことではない。ピダムは愛し方も愛され方も知らずに育ったのだ。“愛とは信じること”。ピダムはトンマンを信じることができなかったのだ。これについては、後日、「親の愛」で紹介したい。
さあ、61話からは歴史にも残っている「ピダムの乱」が始まる。ピダムがトンマンを廃位させ、自らが王座につくことを決断した。このときのピダムの表情の変化に注目!

ピダムが政変を導いたと知ったトンマンが彼を神国の敵として宣布する。ついにトンマンとピダムの全面闘争が始まった。トンマンとピダム、二人の人生の歯車はどこでずれてしまったのか…。
今までの苦労、そして今回の心労でトンマンの体は悲鳴を上げていた。62話最終回冒頭でトンマンが倒れ、余命が長くないことをユシンも知る。
これまでも数々の戦闘シーンや戦略で視聴者をひきつけた「善徳女王」。今回も迫力のシーンが満載だが、その中で星を使った粋な演出があるのでチェックをお忘れなく。
トンマンと神国を守ろうとするユシン。神国を奪ってトンマンを手に入れようとするピダム。ここは余計な説明はやめてじっくり戦の成り行きを観賞していただこう。…しかし、結局ピダムは常勝将軍ユシンには敵わない。その時サンタクがやってきて、全てはヨムジョンが仕組んだことだとピダムに話した。ピダムはヨムジョンに怒りを爆発させるが、ヨムジョンは、「全ての非はピダム自身にある。トンマンを手にしたところで、いつかは、権力を求めトンマンを裏切っただろう。なぜならいつも捨てられることに怯え、相手を信じられないのがピダムだから」と罵った。そして、ヨムジョンから、トンマンは最後までピダムを信じたと聞いた時、ついにピダムの心は壊れた。
この後、ミセン公も登場するが、ドラマ始まって以来初めて彼が格好よく見えた。最終回の中盤だ。そしてもう一人、最終回でぐんと評価を上げたのはサンタクだ。妙ななまりであっちについたりこっちについたりしてきた彼が、ピダムとの別れのシーンで最高の見せ場を作ってくれる。ドラマ「海神」ではいけ好かない役を演じていたが、このシーンだけで彼への評価はうなぎのぼり。今後彼がどんな嫌な役に出ても許せそうだ!
ピダムはトンマンに言わなければならないことがあると、行く手を阻む兵を次々なぎ倒しトンマンに近づく。ここからはピダムの一人舞台だ。62話全てのアクションシーンの中で最高の見せ場が続く。
トンマンまで70歩…トンマンまで30歩…体中に何本もの矢を受けながらピダムはトンマンに近づく。トンマンまで10歩…手を伸ばせはトンマンに届きそうなその時、ついにユシンの剣がピダムの歩みを止めた。ピダムの口が動いた(トンマン、トンマナ…)。声にならない言葉でトンマンの名を呼びピダムは息絶えた。ミシルの第2の野望が果てた瞬間だ。全てが終わったその時、トンマンはピダムと向き合うようにして倒れた。
ピダムは、トンマンに何を伝えたかったのだろう。たとえ反逆者となろうとも、トンマンの名前を呼びたかった。いや、人として女として生きることができなかったトンマンのために、せめて最後に名前を呼んであげたかったのかもしれない。

数年後、トンマンの遺志を継いだユシンは、三国統一に向けて着々と進んでいた。百済を倒し後は高句麗へと進むのだった。トンマンの墓を守るのは、アルチョンその人だった。考えてみると、いつもどんな時も変らないスタンスでトンマンの傍に仕えていたのは、アルチョンだけだったのかもしれない。
トンマンの見た不思議な夢は、ドラマ最後で明かされる。「善徳女王」みごとなエンディングだった。
ドラマ各回の見どころは今回で終わりましたが、これからもシリーズは続きます。「善徳女王考」では、見どころの中で紹介し切れなかった筆者の感想や、もうひとつの愛、親の愛などについて紹介する予定。お楽しみに。
