【テンペスト】もっと知りたいドラマの世界!登場人物のその後で読み解く時代背景[コラム]

2011年07月28日11時15分ドラマ

ドラマ「テンペスト」をより楽しむためのコラムをスタートさせます。隔週で全5回の予定、よろしくお付き合い下さい。

【ドラマに出てくる言葉】
マイナージャンルの琉球モノということであまり人気が出ないかなと思っていたのですが、キャスト陣の豪華さもあってかなり好評のようですね。ですが、物語の面白さとは別に、劇中に登場する用語が難解な点も視聴者の感想に多く見られたようです。これを受けてか、第2回の放送前に公式サイトにて用語解説のページが設けられました。用語解説だけでコラム1回分書けるなと思っていた矢先に拍子抜けしましたが、NHK側からこうした配慮があるのはありがたい事です。
これを見れば分からない部分も納得行くかと思いますが、いくつか補足をさせていただきます。一つは「首里天加那志」の「加那志」です。これは王族に対する敬称で、「○○加那志」という用い方をされます。エンドロールに出る役名と劇中の呼称が違うので多少の混乱はありますが、「加那志」と聞こえたら王か妃かだと思ってください。もう一つ、「親上雲(ぺーちん)」という役人に対する呼称もありますね。谷原さん演じる浅倉が「孫ぺーちん!」と呼びかけていますが、それを知らなかった私は最初「え、違うよ、寧温だよ!」と一瞬心の中でツッコんでしまいました…また、この用語集にはありませんが、首里城における薩摩藩からの役人の駐留所である「御仮屋(うかりや)」という言葉も知っておくと、浅倉ファンの方は特に良いかもしれません。
琉球が舞台という事を意識して、劇中では多くの琉球語が使われています。視聴者からは早くも「首里にいる寧温が那覇言葉の"おばあ"を使うってどうなのよ?」といった指摘も上がっているようですが、とりあえずは深く考えずに物語を楽しむというスタンスが一番かと思われます。あまり地元の言葉を盛り込みすぎても、過去に字幕だらけで物議をかもしたNHK大河ドラマ「翔ぶが如く」のようになってしまうので、今くらいが丁度良いのではないでしょうか。

【真鶴/寧温が生きた時代についてなんとなく把握してみる】
物語の上でどんな時代にあるかというのが重要になってきますが、教科書のような説明では味気ないですから、今回はドラマの登場人物を借りて説明してみましょう。まず一人は首里天加那志こと尚育王です。この方は第二尚氏王朝第18代の王様です。その息子で次期国王となる尚泰王の時に琉球が沖縄県となり、最後の王様になってしまいます。ちなみに尚泰王からは写真が残されていますので(尚育王までは肖像画)、坂本龍馬あたりの人かとぼーっと考えてもらえればよいかと思います。また、尚育王が活躍した時代は清国では道光帝の時代にあたります。道光帝という人はアヘン戦争の頃の皇帝で、この人の子どものお嫁さんが西太后になります。
もう一人のキーパーソンとしてベッテルハイムさんを取り上げてみましょう。この人はハンガリー出身ながら後にイギリスに渡って宣教師となりイギリス国籍を取得したという珍しい経歴の持ち主です。ドラマでは触れられていませんが、琉球には夫婦でやってきて滞在中には子どもも生まれています。そして8年間琉球で過ごした経歴を買われ、後に黒船でお馴染みのペリーのもとで働いた時期もあります。その後はアメリカに渡って南北戦争では北軍の軍医としても参加したようです。こうして書いただけでもかなり波乱万丈の人生を送った方だと分かりますね。
劇中に登場する2人の人物を取り上げただけで、劇中での琉球王朝がどんな時代にあったのかがおぼろげに分かってきたかと思います。時代劇を見るときに大事な姿勢は「てーげー(琉球語で大体、とか適当の意)」というのが私の持論ですので、今回はてーげーに時代背景を解説してみました。
これを機に琉球史に興味を抱いた方には、このドラマで時代考証を担当している上里隆史さんの著作がお勧めです。上里さんのブログではテンペストの話題も満載ですので、こちらを参考になさっても良いかと思います。

BS時代劇「テンペスト」ではドラマの次回予告を公式サイトで動画配信しております。そちらと併せてご覧下さい。

テンペスト|BS時代劇


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