JAXA、ISSでの実験や星出彰彦宇宙飛行士の活動など1年間の出来事をビデオで振り返る

2012年12月28日19時05分暮らしと文化
船外活動の準備を行う星出彰彦宇宙飛行士
((C)JAXA/NASA)

宇宙航空研究開発機構(JAXA)の宇宙ステーション・きぼう広報・情報センターは、「SPACE@NAVI-Kibo WEEKLY NEWS 第184号」を公開、「きぼう」日本実験棟で行われた国際宇宙ステーション(ISS)で初めてとなる実験や、7月からISSに長期滞在した星出彰彦宇宙飛行士の活動など、今年1年間をダイジェストビデオで振り返る。

「マランゴニ対流におけるカオス・乱流とその遷移過程」は、微小重力を利用して液柱内のマランゴニ対流の謎に迫り、そこに潜在する自然法則を解き明かす実験。実験では、浮力対流と重力変形のない理想的なマランゴニ対流が、きぼうでの宇宙実験により詳細に観測できた。
「植物の重力依存的成長制御を担うオーキシン排出キャリア動態の解析」は、オーキシンという植物ホルモンに注目し、より詳しい仕組みに迫る。キュウリの芽生えは、重力に応答して境界域の上側でオーキシン量を低下させるが、オーキシンの量を調節するのに働くと考えられるCsPIN1タンパク質(オーキシン排出担体)の局在に対する重力の影響を調べる。
「微小重力における溶液からのタンパク質結晶の成長機構と完全性に関するその場観察による研究」は、どうして微小重力のもとでつくられたタンパク質結晶の完全性が向上する場合があるのか。どうして微小重力の方が結晶成長が速い場合があるのか。そのメカニズムに迫る。リゾチームというタンパク質の結晶成長の様子をその場で観察し、条件によるわずかな成長速度変化を測ったり、成長表面を分子レベルで調べていく。
「メダカにおける微小重力が破骨細胞に与える影響と重力感知機構の解析」は、宇宙においてメダカを用いて破骨細胞の状態を解析することで、これまでに見えていない骨吸収の新しい機構を明らかにしていく。この成果は、皮質骨の骨量低下が見られる老人性骨粗鬆症の新たな治療法開発へのきっかけとなることが期待されている。

また、きぼう日本実験棟船外実験プラットフォームのポート共有実験装置(Multi-mission Consolidated Equipment: MCE)に搭載しているミッション機器のひとつである「宇宙インフレータブル構造の宇宙実証(Space Inflatable Membranes Pioneering Long-term Experiments: SIMPLE)」が、世界で初めて高剛性な直線形状を実現したインフレータブル伸展マスト(Inflatable Extension Mast: IEM)の伸展実験に成功した。
「小型衛星放出技術実証ミッション」では、2012年10月4日から5日にかけて、5機の小型衛星の放出に成功した。小型衛星放出機構とは、CubeSat規格(10cm×10cm×10cm)の超小型人工衛星をきぼうのエアロックから搬出した放出機構で打ち出し、軌道に乗せるための仕組みのことで、親アーム先端取付型プラットフォーム、衛星搭載ケース、分離機構などから構成されている。

星出宇宙飛行士は、ISS第32次/第33次長期滞在クルーとして、7月17日から11月19日まで、ISSに約4か月間滞在。ISSに長期滞在した日本人宇宙飛行士としては、若田光一、野口聡一、古川聡宇宙飛行士に続き4人目となる。
星出宇宙飛行士は、きぼう日本実験棟だけでなく、ISSでの日本以外の宇宙実験にも数多く携わった。
小型衛星放出技術実証ミッションを実施したほか、日本人宇宙飛行士としては宇宙ステーション補給機「こうのとり」を初めて出迎えたほか、ドラゴン補給船運用1号機(SpX-1)の把持、係留、物資の搬入搬出、放出する運用にも関わる。
また、欧州補給機(Automated Transfer Vehicle: ATV)3号機の物資の移送や固定作業、ISS内の不要品を回収して廃棄に備えて積み込む作業やプログレス補給船の到着時のサポートや物資の搬入作業なども行った。
ISS長期滞在中には、日本人宇宙飛行士の長期滞在中としては初となる船外活動を3回実施し、ISSの運用を継続する上で重要な船外機器の交換作業などを行い、ロシアクルーによる船外活動の際にはエアロック操作などを支援した。
広報活動も、地上との交信やツイート、ラジオ番組への出演、ISSからの生放送など、さまざまなイベントに参加した。

ビデオライブラリ「SPACE@NAVI-Kibo WEEKLY NEWS 第184号」

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