★「歴史ドラマ」を楽しむ-ドラマ『海神』の主役は実在の人物?- ヨムジャ編

特集 韓ドラここが知りたい 歴史の中の英雄たち
統一新羅時代(676~935年)、東アジアの覇者、チャン・ボゴと戦ったもう一人の海の英雄がいた。その名前は『ヨムジャ』。(韓ドラここが知りたい!の表、「韓国歴史年表」、「ドラマで見る年表」「地図」の統一新羅・渤海時代を参考に)

ドラマ『海神』の主人公チャン・ボゴは、三国史記では「反逆者」との汚名を着せられ、ドラマ海神では「英雄」として描かれた実在の人物だが、このドラマでもう一人実在の人物ヨムジャがいる。ヨムジャは三国史記では謀反者を討つ「勇敢な壮士」と記されているが、『海神』では国政を脅かす「海賊」として描かれている。もちろん役どころとしては「悪役」だ。この悪役を演じたのは、『朱蒙』で主演を演じたソン・イルグク。

ソン・イルグクは『朱蒙』で伝説の英雄を華々しく演じたが、『海神』では悪役のヨムジャを切なく演じている。これほどまで“かっこいい悪役”が過去にいただろうか!というほど素敵だ。女性視聴者の中には、ひょっとすると主役のチャン・ボゴより嵌ってしまったという方も多いのでは?

ヨムジャは、両親を知らぬまま海賊に育てられた。そんなヨムジャが少年のころ立ち寄った村でチャン・ボゴと出会い、初めて友情を知る。もちろん、チャンはヨムジャの正体を知らない。そして、同時に、生涯の恋にも出会う。ところが、ヨムジャが愛したチョンファはチャンの初恋の相手ときたから困った。海賊は、結局この村を攻め落とし、その結果、チャンとチョンファを不幸のどん底に突き落としてしまう。ここから、ヨムジャのチャンへの友情とチョンファへの純愛という二つの悲しい愛が始まる。

海賊の首領の命令に従うしかないヨムジャはわが身を嘆きながらも、時には命に背いてチャンを助け、チョンファを陰から見守り続ける。チャンへの友情と謝罪の気持ちからか、どんなチャンスが来ようとも、絶対にチョンファに言い寄ったりしない。いつも、物陰からじっと見ているだけ。そう、TVの2時間ドラマ「家政婦は見た!」のように・・・。

絶世の美女が言い寄っても決してなびかない!「英雄色を好む」とはよく言われる言葉だが、このヨムジャには通用しない。チャン・ボゴも一途にチョンファを思い続けたけれど、あちらの二人は相思相愛だから当然といえば当然。それに引き換えヨムジャは片想い。これほど苦しいのなら・・・「どうにも叶わぬ愛なら別の愛を求める」という手はなかったのか?

そんなヨムジャにも幸せなひとときがある。商売をおぼえたいというチョンファに手ほどきする場面で、ヨムジャの至福の顔が見られる。ヨムジャの笑顔は希少、貴重な場面、お見逃しなく!でも、ドラマで幸せなひとときは長くは続かないもの。その後、どうにもならないチョンファへの想いを、酒に紛らわせて荒れ狂うシーンがある。酔っ払いの醜態には目を背けたくなるが、先の至福の顔を見ているだけに、このシーン、可哀想で、切なくて胸が痛む。26歳俳優デビューと遅咲きのスター『ソン・イルグク』、いったいどこでこんな見事な演技力を身につけたのだろうか?

ちなみに、ヒロインのチョンファは架空の人物。実在のツワモノ二人を蕩かす、バーチャルヒロイン・チョンファを演じたのは女優スエ。2003年のドラマ「ラブレター」で大ブレークした女優だが、元々はダンス歌手を志望していたという。スエは今年、数々の映画祭で賞を受賞し多くのファンを蕩かしている。

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チェ・スジョン、チェ・シラ、ソン・イルグク、スエ、キム・フンス、キム・アジュン
監督/演出:カン・イルス/カン・ビョンテク、脚本:チョン・ジンオク