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李氏朝鮮の前王朝である「高麗王朝」までは、王たるもの“聖骨”でなければならなかった。聖骨とは、建国神話にでてくる檀君（タングン）の血をひく者をさす。檀君は神の子・桓雄（ファヌン）と熊族の女との間にうまれた子である。ここでピンと来たアナタは凄い！そう、あの「太王四神記」の第1話に出てきたペ・ヨンジュン演じる、白髪の神の子・桓雄の子供が檀君なのだ。
話はそれたが、この檀君の血筋を脈々と受け継いだのは高麗の恭譲王まで。李成桂は人物は優れていたが、一介の将軍。王の資質十分ながら、聖骨でないためもちろん王にはなれない。ところが、高麗王朝も北からは蒙古、南からは倭寇の脅威で衰退し、とうとう、李成桂に王朝の行く末を頼んだのだ。彼は最後の高麗王となり、自らの理想の王朝を作るべく【李氏朝鮮王朝】を建国し、太祖となる。
李太祖は、民百姓の生活を一番に考え、国の秩序を守るため儒教を国家理念に据えようとした。儒教は、孔子の教えを説いた哲学・思想で、平たく言えば「親や年配者を大切にする」「目上の人を敬う」などを美徳とする価値感と考えれば良いだろう。この儒教の精神は今の韓国の生活にも深く根付いている。韓ドラで良く見る、目上の人の前では横を向いてお酒を飲んだり、部下であっても年長者には敬語を使うシーンはこういった儒教の精神が残っているためだ。
李太祖の崇高な考えとは裏腹に、李王朝は建国直後から波乱含みの船出だった。国家理念は素晴らしいが、政（まつりごと）を行う制度でまずはひと悶着がおきる。「王の下に宰相（首相）をおき、宰相が中心となる中央集権的な官僚制度」を強く望みむ儒臣たちと、「王族が中心となる王権中心の中央集権国家」を望む王族。加えて後継者問題で息子たちの足の引っ張り合い。これには、李太祖も嫌気がさし、あれほど燃えた国創りへの熱い気持ちもさめてしまう。そこで、彼は建国理念を残し早々に退位してしまう。
高麗王朝までの「現在の中国である古朝鮮時代の広大な領土を取り戻すため」の戦いが、世継ぎのための「派閥、内輪もめ、骨肉の争い」に変わっていくのだ。そして、世継ぎ問題といえば出てくるのが、母親とその実家。「三大悪女」たちは、このような時代背景が生んだ哀れな女たちなのだ。
「女人天下」は、両班（ヤンバン＝貴族階級）の娘として育つも、妾の娘と蔑まれた主人公チョン・ナジョンが、生まれついての美貌と知恵で多くの男を手玉に取り、遂には国を動かすまでの巨大な権力を掴んでいくというドラマで、韓国SBSが2001年から2002年にかけて放送した。
韓国版の大奥とＮＨＫの大河ドラマを足して２で割らない（？）贅沢なドラマ！とにかくスケールが凄い。全150話、登場人物は200人を軽く超える。だから、途中でいきなり姿を消す人物も出てきたりする。でも、小さなことにはこだわらないのが、正しい韓ドラの楽しみ方。「女人天下」はドラマ作りにも1年以上の準備期間をもうけ、10回以上も台本を書き直し、全国各地の故宮でのロケを敢行する。これまでの韓国歴史ドラマの常識を覆した大作となった。近年の歴史ドラマブームに火をつけた作品といってもいいだろう。
ドラマのオープニングは、いきなり物語のハイライトシーン。ここに出てくる人物さえ押さえておけば、何百人の登場人物が出て来ようが、途中で迷子になることはない。1話や2話居眠りしても大丈夫！もっとも、居眠りなんてさせないほど面白いからご安心を。
「女人天下」は単なる大奥ものとは格が違う。浅野ゆう子なんて生ぬるい！あの岩下志麻が束になっても敵わないくらい強いチョン・ナンジョンが主人公だ。演じたカン・スヨンは子役タレントとしてデビューし、数々の名作に出演している実力派女優だ。その経歴も輝かしく、「ベニス映画祭」、「モスクワ映画祭」、「ヴェネチア映画祭」など素晴らしい女優賞を多数受賞している。
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