★「歴史ドラマ」を楽しむ-韓国三大悪女-『張禧嬪』チャン・ヒビン編⑤

特集 韓ドラここが知りたい 三大悪女
『張禧嬪』チャン・ヒビン編④からの続き。(ネタばれどっさり。ただし、読んでから観ても十分楽しめます。それでも気になる方は第55話あたりまで先に視聴することをオススメします)

【王妃ヒビンvs廃妃インヒョン】

大妃に続き大王大妃までが逝去し、オクチョンの勢いは増すばかり。彼女を入宮させた張本人である大王大妃も、さぞかし無念の思いでこの世を去ったことだろう。おまけに自分の国葬からいくらも立たないうちに、オクチョンが男児を出産したのだから天国で落ち着かないはず。

一方、インヒョン王妃といえば、味方の西人派の愚行が原因でますます窮地に陥る。ドラマの一番の山場を迎える40話以降からは、「誰か、オクチョンを何とかしてくれ!粛宗よ、目を覚ませ~!」と、ドラマに向かって叫ぶことしばしば。

ところで、「女人天下」では低い身分への絶望感や、政局のことが多少なりとも描かれていたし、「王の男」では燕山君の悲運な運命を丁寧に描いていたりして、物語として素直にのめりこめたが、この「張禧嬪」はほとんどがオクチョンvsインヒョン(ほとんどオクチョンの攻めばかりだが)の王をめぐる戦いで、当時の時代背景や政局については妙に時代がかった男性ナレーターの説明で済ませている。

いくら「大奥」モノが面白いとはいえ、100話ずっと女の戦いが続くのかと思うと、観るのを止めたくなるだろうに、何故かこのドラマ観るのを止めさせてくれない。嵌るのだ!これが韓ドラの魅力?それとも、豪華出演陣のカリスマ演技のせいだろうか…。

とまれ、無事男児を出産したオクチョンは、粛宗に我子を第1王子と認めさせ、自身も王妃の次の位「禧嬪(ヒビン)」の称号を賜る。勢いづいた南人派は、西人派を次々に粛清していき南人派が朝廷に返り咲いた。世に言う“己巳換局”つまり粛宗時代2度目の政権交代だ。

そんな時、ここで大きな事件が起きる。なんと、オクチョン改めヒビンの出産祝いにと、インヒョンから贈られた産着に縫い針が見つかったのだ!発狂寸前のヒビン。しかし、この危機をチャンスに変えるのがヒビンの凄いところ。これを嫉妬に狂った王妃の仕業と粛宗に信じ込ませる。

まんまとヒビンの企みに乗せられた粛宗は、インヒョンの廃妃を決定する。さすがにインヒョンに同情する臣下が上訴すると、粛宗は恐ろしい拷問にかけ逆賊として流刑に処してしまう。自分のせいで次々と臣下が処罰されるのを憂いたインヒョンは自ら廃妃を受け入れてしまう。何もかもヒビンの思うツボ。

ところで、流刑に処せられる島は「珍島」-今ではたくさんの観光客が詰め掛ける韓国全羅南道南西部の島だが、名前に聞き覚えがある。そう、あの天童よしみが歌った“海が割れるのよ♪”で始まる「珍島物語」だ。

49話に気になるシーンがある。思い通りにインヒョンを廃妃した粛宗が眠れぬ夜を過ごすシーンだ。インヒョンを追い出し、ますます勢いづくヒビンは、日夜、王妃の住まいを下見に出かけ一人さびしく過ごす場面がある。あの時彼は何を思っていたのだろう。決して王妃のことを恋しがっていたわけではないとヒビンに言い訳していたが…。ヒビンを見て「この女を愛したのは正解?」なんて想いが、一瞬でもよぎらなかったのだろうか?

いよいよヒビンは王妃へ!ところが、なにやら味方の南人派がおかしい。結局、彼らは西人派を追い出すことが目的で、両班ではないヒビンが王妃の座につくことを快く思っていなかったのだ。とはいえ、結局紆余曲折はあったものの、ヒビン兄・ヒジェの活躍(?)で念願の王妃の座をゲットする。

まあ、ここからは「女人天下」と一緒。ヒビンは親族や味方を引き立てやりたい放題。これには、さすがの南人派も眉をひそめ、若い儒学者や民衆は王妃の復権を本気で願い、動き出す。

ところで、宮廷女性の髪型(詳しくは、チョン・ナンジョン編④の後半を参考)、韓国の歴史ドラマを見始めたときは、このカチェというかつらがどうにも奇異に感じたが、この髪型は本当に女性を華やかに見せる。歴史ドラマのブームの前にこの髪型をいち早く取り入れた黒柳徹子さんのセンスに、今では脱帽だ!当時は、衣装はもちろんだが、カチェを留めるためのかんざし選びこそにセンスが問われたという。

それにしても、ヒビンの派手な顔にこのカチェは想像以上のド迫力。身分に合わせてどんどん大きくなる。みごと王妃になり王妃の住まいに引っ越すときのカチェの凄いこと。そういえば、料理店のコックさんも偉くなるにつれて帽子が大きくなっているな~。

ヒビンの頭が大きくなるのと反対に、インヒョンの頭は小さくなった。廃妃のインヒョンには許されない髪だ。しかし、透明感のある彼女の美しさは、飾らないときにこそ一番輝く。今でも、宮廷を追い出されるときの彼女の清楚な美しさが、目に焼き付いて忘れられない。まるで死に装束のように全身を白の衣装で包み、化粧っけのない顔に後ろに束ねただけの髪。これこそ国母の気品。実家に下るインヒョンに数百人の儒学生が嘆いたのも頷ける(48話最後)。

チャン・ヒビンの一族が栄華を極めていた頃、彼女に取り入ろうとする下劣な官僚どもは、民衆から取り立てた税で付け届けに余念がない。これを憂いた一部の心ある人々が、ヒビンの廃妃、インヒョンの復権に遂に本格的に動き出す。これから再び物語が大きく動き出す。いよいよ、張禧嬪の最終回へ

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キャスト:チャン・オクチョン(後のチャン・ヒビン)(キム・ヘス)、肅宗(スクチョン)(チョン・グァンリョル)、インヒョン王后(仁顕王后)(パク・ソニョン)、ミョンソン王后(キム・ヨンエ)
監督/演出:イ・ヨングク/ハン・チョルギュン、脚本:カン・テワン