朝鮮王朝時代の文化や風習など、[韓ドラここが知りたい!]の各ページで補足したい事柄を箇条書きで解説しています。※随時更新します。
◆党派
15世紀前半、第7代王の世祖の擁立に功績のあった臣下とその子孫が、“勲旧派”と呼ばれ大きな勢力を誇っていた。
一方、“士林(サリム)派”と呼ばれたのは、もとは、官職に就くことを拒み、田園で静かに儒学を学ぶ知識人たちの集まりだった。彼らは“士林”、または、“儒林”と呼ばれたが、門下生が増えるにつれ、学問の枠から地域社会の支配層へと枠を広げて政府の要職に就き、15世紀末期には勲旧派に対立する党派となった。
三大悪女のドラマ「女人天下」の舞台、11代・中宗王の時代になると、革新派の士林派を重用し、勲旧派と対立させた。党派間の争いはエスカレートし、その争いに敗れた側は粛清されるようになった。結局、政権を担うことになった士林派は、“西人派”“東人派”に分裂し、その後も分裂を繰り返し、派閥争いは繰り返され、王朝の最後まで耐えることはなかった。(三大悪女については、こちらで紹介)
◆朝鮮経国典と経国大典
法治国家を目指した朝鮮の根幹となった法典。
朝鮮の初期は明の法典“大明律”に倣っていたが、1394年、太祖が開国の功臣・鄭道伝(チョン・ドジョン)に命じて王朝の基本法典“朝鮮経国典”を編纂させた。これによって朝鮮は法治国家としての骨組みができた。“朝鮮経国典”を補完した形でできたのが“経国大典”。経国大典は、第4代王である世祖の命で散らばっていた各種の法典の編纂事業が始められ、第9代王・成宗の代の1485年完成した。
経国大典は、朝廷の官位や宮女の身分から奴婢の扱い、冠婚葬祭から刑罰に至るまであらゆることの基本。朝鮮の人びとの統治感と人間観、歴史観を一つにまとめた偉大な歴史的産物であり、彼らの法治主義への願いをうかがうことができる貴重な文化的資産でもある。
※詳しくはコチラで解説
◆医療施設
当時は、「三医司」という3つの医療施設を設置していた。
【内医院】
宮中内の医療施設。男性の医師の補助的な看護士のような役目と、王妃や尚宮たちの病気を見る。
【恵民署】
高麗の制度を継承した庶民の医療や救済のための、救済施設。漢陽地域限定の市民の病気治療や、薬剤の調合、販売を目的に設置された。同じく庶民救済を目的とする【活人署】があったが、こちらは貧民の食事の世話や、疫病が流行した際には臨時隔離施設にもなった。第19代粛宗の治世時代に活人署は縮小され、第21代王・英祖の代で恵民署に統合された。
【典医監】
医師の教育、薬剤の管理など、主に監督管理を担当する者のための施設。
◆宮廷の厨房
宮殿には水刺間を中心に皇太后殿、東宮殿、皇后殿、側室殿、などにも各厨房があり、そのトップに君臨するのが最高尚宮。食事以外にも、餅菓子房、生菓房もあり、すべてに尚宮と女官がいる大所帯。
【水刺間(すらっかん)】
王の料理を作るところ。
【退膳間(テソンカン)】
水刺間で作られた食事をここで配膳される。
◆身分制度
当時の身分制度は基本的には前王朝の高麗時代と同じで、王族に継ぐ最上位に両班、次に中人常民賎民と続く。手柄や懲罰によりこの入れ替えは頻繁にあった。
【王族】
朝鮮王朝を開いた太祖(李成桂)の子孫による世襲の家系。
【両班】
元は文官に従事する文班と、武官の武班を両班と呼だが、当時、明〔中国〕と君臣関係を結んでおり、明のご機嫌を取ることで王朝の安泰は保たれた。結果、武班とは名ばかりで武士としての鍛錬は全くされておらず、官職につくことのできる支配階級全体をこう呼んだ。
【中人】
儒教しか学べない両班と違って、外国語、医学、法律、天文、数学などの雑学といわれる実用的な学問を究め、それに従事する人々。
【常民/良民】
両班や中人の下で農業、商業、工業を行う平民。良民とも呼ばれたが生活はとても厳しく、殆ど農民で厳しい税が課せられた。その税から逃れるために、「自売文記(자매문기、チャメムンギ)」を本人や親が買いて、奴婢の身分になるものもいた。また、常民と中人は科挙という試験に合格すれば官吏になれたが、莫大な時間と金がかかり、実際には両班の子供しか官吏にはなれなかった。
【賎民(奴婢)】
奴婢として物と同じく売り買いの対象とされた人々で、普段の生活は常民と同じ。奴は、男性の奴隷。婢は女性の奴隷を意味する。
国が保有する賎民(公奴婢、または官奴婢)と個人が保有する賎民(私奴婢)とがあった。官奴婢の中でも特に、王族や朝廷が功臣に下賜した奴婢は丘史(クサ)という。
詳しくは(奴婢=下女)厳しい身分制度って?
◆儒教
儒教とは、孔子を始祖とする思考・信仰の体系で、紀元前の中国で興った。その後、東アジア各国で2000年以上に渡って強い影響力を持つ。基本は、五常(仁、義、礼、智、信)という徳性を拡充することで、五倫(父子、君臣、夫婦、長幼、朋友)関係を維持するという教え。平たく言えば、「親や先生、年長者を敬い、行儀良くしなさい」という、現代でも日本や韓国など東アジアで教育される道徳の原型と考えていいだろう。
統一新羅時代に、百済や高句麗と同じく仏教を重んじながらも、儒教を取り入れ、律令制確立を助けた。
日本では、学問として取り入れられたこの儒教が、朝鮮半島では、宗教・道徳として取り入れられ、朝鮮王朝時代は儒教の教えの下、徹底的な身分制度を形成した。
◆科挙
科挙は6世紀末の中国・隋に始まった人材登用試験制度。科目別に選抜(選挙)することから科挙と呼ぶ。朝鮮でこの科挙制度を導入したのは、前王朝である高麗王朝第4代王の光宗。君主に対する忠誠心を本文とする儒教思想を持った人材を起用することで、王の支配を全国に行き届かせようと狙ってこの制度を導入した。科挙制度の定着によって高麗は、官僚国家として発展していったが、官僚の地位も世襲化し、門閥が形成され、権力争いが起こるようになり、朝鮮王朝に至っても変わらない。朝鮮王朝末期の19世紀には科挙試験場は完全に混乱。特に地方で実施される初試は200~300両で合格が決まり、第26代王・高宗の治世(1877年)には義州の官吏が自分の息子をトップで合格させるために10万両という巨額を使ったという話も残っている。
◆放榜礼(パンバンリェ)
科挙合格者に合格証書が授与される儀式のことで勤政殿(景福宮の正殿)庭で行われる。合格者には、王からの“紅牌”と“御賜花”が成績順に授与される。“紅牌”は合格証書のこと。“御賜花”は帽子に挿す。
◆官職の品階
官職の品階とは、文官と武官の位を表す言葉で、両官とも九品で構成され正・従の区分があり、正一品~従九品まで18品階があった。数字の小さい方が高い階で、正一品~正二品までを“大監(テガム)”、正三品までを“令監(ヨンガム)”正三品から下を“ナーリ”と呼んだ。
また、大監と令監を“堂上官”それ以降を“堂下官”と呼んだ。“堂上官”は赤い朝服を、“堂下官”は青い朝服を着用する。
◆政治機構と官職の品階制度
国王を頂点に、“議政府(ウィジョンブ)”と“六曹(ユクチョ)”で構成。法制度については「経国大典」で詳しく解説している。
議政府は、すべての政治と全役人を統括する最高官庁。
・議政府=承政院-司憲府-司諫院-弘文館-漢城府-禁軍府-捕盗庁-春秋館
六曹は、国務の主要な業務を処理する6つの中央官庁。
・六曹
吏曹=日本の総務省にあたる
戸曹=日本の財務省にあたる
礼曹=日本の文部科学省にあたる
兵曹=日本の防衛省にあたる
刑曹=日本の法務省にあたる
工曹=日本の国土交通省にあたる
◆院相制
王の権限を宰相も行使できる制度。第7代世祖が、晩年になって自らの体力の衰えを感じた1468年に、この制度を導入し、第8代睿宗は成人していないため、母の貞喜王后による垂簾聴政と院相制の両輪で政治が行われた。第9代成宗も最初の7年はこれらをそのまま引き継いだが、祖母貞喜大王大妃の垂簾聴政をやめて自ら政治を行う親政を始めた時に院相制も廃止した。
◆経国大典(朝鮮の法典)
経国大典は吏典・戸典・礼典・兵典・刑典・工典の六典からなり、第4代王である世祖の命で散らばっていた各種の法典の編纂事業が始められ、第9代王・成宗の代の1485年ついに経国大典が完成した。
<吏典:行政や文官人事など>
統治の基本となる中央と地方の官制、官吏の種別、官吏の任命、辞令などに関する事項が設けられている。
<戸典:戸数や人口など>
財政経済と、それに関連した戸籍・祖税制度、禄俸、通貨、負債、商業と蚕業、倉庫と還穀、漁場、塩田などに関する規定と、土地、家屋、奴婢、牛馬の売買と、現代の登記制度に関する立案、債務の返済と利子率に関する規定が設けられている。
※還穀とは、穀物などの収穫できない冬から春の境目に民に貸し、秋に一割の利子をつけて回収した官の穀物のこと。
<礼典:儀式や外交、人事など>
文科、武科、雑科などの科挙に関する規定と、官吏の儀仗(儀式等に使う装飾的な武器)及び外交、祭礼、喪葬、墓地、官印、その他に公文書の書式に関する規定をはじめ、喪服制度、奉祀、立后、婚姻など親族法の規範が設けられている。
<兵典:国防や武官人事など>
軍制と軍事に関する規定が設けられている。
<刑典:法律や訴訟、奴婢問題など>
刑罰、裁判、公奴婢(官奴婢)・私奴婢に関する規定と財産相続法が設けられている。
<工典:土木、建設など>
道路、橋梁、度量衡、殖産に関する規定が設けられている。
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◆官職の公服
上の品階に基づいて着衣の色が決まっており、堂上官は“赤”、堂下官は“青”。それ以下は、“緑”。
また、官位によって胸と背中の刺繍(胸背=ヒュンベ)も異なっており、ひと目で品階が分かるようになっている。
時代によって多少異なるが、王朝末期のヒュンベは次の通り。
・文官=堂上官は2羽の鶴、堂下官は1羽の鶴。
・武官=堂上官は2匹の虎、堂下官は1匹の虎。
◆宮女の身分(内命婦)
見習い女官(センガクシ)として15年間務めた後、「笄礼式(キョレシク)」儀式を受けて正式に「内人(ナイン)」宮女となる。宮女は国王に身を捧げる立場となり、他の男性との恋愛や結婚は許されない。女性たちは「内命婦」の所轄で、彼女たちは後宮(側室)と、職務に従事する女官とに分けられる。
後宮(側室)は正一品~従四品、女官は尚宮を始めとする正五品以下。頂点に立つのは、大王妃〔王の母〕で次に王妃〔王の妻〕。宮女を取仕切るのは王妃の勤め。
▼王の側室
・正一品:嬪〔ピン〕
・従一品:貴人〔クィイン〕
・正二品:昭儀〔ソイ〕
・従二品:淑儀〔スギ〕
・正三品:昭容〔ソヨン〕
・従三品:淑容〔スギョン〕
・正四品:昭媛〔ソウォン〕
・従四品:淑媛〔スグォン〕
この下に王の寵愛をうけた「承恩(スンウン)」女官がいる。「特別尚宮」とも呼ばれ、居室が用意される。ただしまだ側室(後宮)ではない。
“○嬪〔ピン(ビン)〕マーマ”というのはこういう身分の呼称。
・正五品:尚宮・尚儀
・従五品:尚服・尚食
・正六品:尚寝・尚功
・従六品:尚正・尚記
・正七品:典賓ほか
・従七品:典設ほか
・正八品:典賛ほか
・従八品:典燈ほか
・正九品:奏宮ほか
・従九品:奏変徴ほか
▼世子(世弟)の側室
・従二品:良娣〔ヤンジェ〕
・従三品:良媛〔ヤンウォン〕
・従四品:承徽〔スンフィ〕
・従五品:昭訓〔ソフン〕
◆外命婦(参:韓国wikipedia)
王妃の母、王女、庶女(側室の子)など王族の女性や高官の妻にも同じ官位が与えられた。頂点に立つのは王女、王の庶女(側室の子)で無冠。以下次の通り。
・正一品:府夫人=王妃の母、府夫人=大君の妻、貞敬夫人=正・従一品の妻など
・従一品:奉保夫人=王の乳母、郡夫人=王子の妻、貞敬夫人=正・従一品の妻など
・正二品:郡主=王世子の嫡女、県夫人、貞夫人
・従二品:県主=王世子の庶女、県夫人、貞夫人
・正三品(堂上・下官): 慎夫人 、淑夫人
・従三品:慎人、慎人
・正四品:恵人、令人
・従四品:恵人、令人
・正五品:温人、恭人
・従五品:温人、恭人
・正六品:順人、宜人
・従六品:宜人
・正七品:安人
・従七品:安人
・正八品:端人
・従八品:端人
・正九品:孺人
・従九品:孺人
◆大同法
15代王の光海君により、李氏朝鮮で施行された税制。1608年光海君の即位年に宣恵法という名前で京畿道で施行され、それを管理するため宣恵庁と設置された。これは、李朝初期からの貢納制による弊害が大きかった為、改善した法。
「貢納制」は、農民に田税、軍役とその地方の特産物を貢納、進上を行わせる。
だが、特産物に関わっていない農民は、その地方の特産物を商人から買うしかなく、商人は特産物の値段を数倍に引き上げるなどして、農民は貧窮を極め、国家の歳入は減少した。
対する「大同法」では、基本的に土地1結(0.7~4ヘクタール程度)につき米12斗を収めるようにし、また貢納は対象から除外。山間部では米の代わりに大同木や大同銭で収めるとした。
◆葬儀
朝鮮王朝時代の始めは、親が死ぬと3年間喪に服すというしきたりがあったが、この間に衰弱して遺族が死に至ることも多かった。そのため、4代の世宗王が、喪中にも3日の絶食だけで、その後は少しずつ普通の食生活に戻るようにした。
一方、喪服は古来の親の死を心から悼む気持ちを象徴するため、王族も両班も同じく、麻袋のような素材の着衣に、頭と腰に縄で編んだ注連縄(しめなわ)を結び、手には杖を持った。これは、両親を亡くしたいた子は罪人と同じくいたたまれない、という気持ちを表現したもので、杖は、深い悲しみに食物も口にできず、心身弱っていく様を表現している。
◆墓
一般人の墓は、現代と同じく「墓」と呼んだが、王室の墓にはそのくらいによって次のような呼び方をした。
・陵=王と王妃の墓
・園=世子(世継ぎ)と世子嬪(その妻)
・墓=それ以外の王族
◆玉璽(ぎょくじ)
璽(印章)のことだが、これ自体が王を象徴する神物で、即位式では、先代王の遺言と一緒に引き継がれた。全ての国事に用いられた。
◆東宮
王族の住む宮殿には、王のいる大殿をはじめ、皇太后殿、東宮殿、皇后殿、側室殿などいろいろある。この中で、東宮殿は世子住む場所が東宮殿。世子は王のいる大殿の東側に住んでいることからこう呼ぶことになった。
日本でも皇太子の居所を東宮御所と呼ぶが、元々、中国古来の世界観である“五行説”で、“東”は“春”にあたり、かつ“易”で長男を表す“震”にあたるところから、“東宮=皇太子”とされた。
◆歴史記録書
朝鮮王朝の歴史記録は、王でも手が出せない代物。自分の行状がそのまま歴史に残されるため、王の行動の抑止力にもなった。
【承政院日記】
朝鮮王朝最大の機密記録。2001年にユネスコ指定世界記録遺産に登録され、現在はソウル大学に保管されている。世界最大規模の記録物だが、文禄・慶長の役と政変クーデター(1624年)、英祖治世の1744年の大火災などによってその多くが消失している。それでも、現在全3,243冊、393,578ページ、文字にして2億4,250万字が残され、単一資料としては世界最大級の年代記録物である。
記録方法は、王が政務を行う傍らで内容を記録する方法と、上訴などからの転載との2つで、毎月ごとに王の裁可を受けて承政院(王命の伝達と臣下の上奏の報告を王に行う官庁で秘書的な役割)に保管される。
ここには、政務以外のことも、王の病状や王室人々の健康状態、王がどこでどんな勉強をし、誰と会って何を話し、そのときの王の表情や感情といったものまでこと細かく記載された。当時の天候状態についても詳しく記載された本書は、自然科学の面でも貴重な遺産と認められた。
【朝鮮王朝実録】
「朝鮮王朝実録」は、「承政院日記」などの資料から重要なものを抜粋してまとめられた資料で、朝鮮王朝の政治、経済、法律、芸術、軍事、天候、通信、宗教などが詳しく記されている。1997年にユネスコ指定世界記録遺産に登録された記録物で、朝鮮王朝25代472年の記録を、全1,894巻、888冊、6,400万字で記している。同じ内容のものを4箇所に分けて保管していたが、3箇所で保管されたものは文禄・慶長の役のときに消失し、全州に保管された1つだけが残った。
歴史の公正さを保つため、該当する王に関する部分は王の死後に編纂された。もちろん、一般はおろか重臣たちでさえ閲覧することは許されなかった。
韓国歴史ドラマで、朝鮮王朝を舞台にしたドラマは圧倒的に多く、詳しいのもこうした資料のおかげ課も知れない。それぞれのドラマの年表で比べて見よう。[神話~三国時代]編、[統一新羅・渤海・高麗]編、[朝鮮王朝時代]編。
◆王室の祭服・婚礼服
【王様用】
九章服(クジャンボク)と冕旒冠(ミョルリュグァン)。九章服は、最高級の礼服で9種類の色が使われているためこう呼んだ。特徴的な冠には、冠のつばの先から顔の前と後ろに、じゃらじゃらと赤、白、青、黄、黒の5色の玉が9本すだれのようにぶら下がっている。これでは、前が見えずに歩きにくいじゃないか?と心配になるが、それでいいのだ。これは、王に世の中の悪しきモノを見せないようにするためにぶら下がっているらしい。服には王をあらわす龍とキジの刺繍が施されている。
【王妃用】
翟衣(チョグイ)という衣に大きな婚礼用のカチェ(カツラ)大首をつける。婚礼用のカチェはなんと10キログラムほどもあるという。翟衣はガウンのような形で、翟(キジ)の模様がデザインされて刺繍されている。
※「ソウル文化財」のサイトで、当時の衣装の動画を公開中
「ソウル文化財-服飾-九章服」
「ソウル文化財-服飾-翟衣」
◆離婚、休書(スセ)、七去の悪
両班たちの離婚は難しかったが、庶民間では意外に離婚も多かった。妻からの離婚もチョゴリ(上着)の前裾(まえすそ)を切って、それを相手に離婚の意思として与え、相手がそれを受け取れば離婚成立となった。
一方妻を追い出す七つの理由として「七去の悪」があった。
①夫の両親に仕えないとき
②息子を生まないとき
③不倫したとき
④嫉妬したとき
⑤遺伝病があるとき
⑥おしゃべりな人
⑦盗癖のある女性
◆号牌(ホペ)
朝鮮時代の身分証のこと。16歳以上の男は全員これを携帯しなければならない。元は中国・元で始まったもので、各家の人数と職業・階級を明確にすることを目的に始められた。しかし、実態は住民を管理して兵役や労役を課すことを目的としていた。
朝鮮王朝では、1413年(太宗13)に初めて全国的に施行さたが、うまくいかずに何度も中断された。偽造、交換なども横行し、号牌を持つと役務が課せられるので、奴婢になれば兵役を負わなくてすむということで、自分からわざと両班の奴婢に入る者もいた。
号牌に記載されている内容は、名前と官職が基本だが、身分が低くなるほど記載内容が多くなる。奴婢にいたっては身長やヒゲの有無まで記載された。材質も身分によって象牙、鹿角、白樺、雑木などと細かく決められていた。居住地を管轄する役所の烙印が裏面に押され、死亡時には、所轄の役所に返却する。しかし、実際に号牌を受けた人は全人口の1~2割に過ぎず、1627年には廃止された。
◆儺礼戯(ナレヒ)
儺礼戯とは、悪鬼を追い払う宮中儀式。大みそかに行われる儺礼戯では、宮中の裏庭で花火をあげる。それを会場となる王の住む便殿に設えた宴席で愛でる。当時火薬は貴重な最先端の武器で、花火は軍器寺(兵器製造機関)が準備していた。
◆親蚕禮(チンジャムレ)
親蚕禮とは1400年から王朝末期までの500年続いた、養蚕を奨励する王妃主催の儀式。内命婦や外戚の高貴な女性たちを招いて、王妃自らが桑の葉を蚕に与える姿を披露する。そのあとに、集まった婦人たちでお茶会などをする。
現在、ソウルにある蚕室(チャムシル)や蚕院洞(チャムォンドン)は、朝鮮王朝時代にここで養蚕がおこなわれた場所だった名残で付いた地名。
蚕が作りだす絹は、大変高価で、日本でも古来より養蚕を奨励している。
◆侍講院(シガウォン)
世子侍講院(セジャシガウォン)。王世孫(ワンセソン)の教育を司る教育機関。ここで後継者となる王世孫は王として必要な学問・教養はもちろん道徳的な素養に至るまで徹底的した帝王学を学ぶ。30代から40代くらいの中堅グループの役人が務める。実力人柄、家柄ともに一級の実力者をそろえ、王世子が即位するときには彼らも一緒に要職につく。ドラマでは「イ・サン」で後の権力者となるホン・グギョンが宮殿務めを始めた数年後に侍講院で経史や 道義を教える官吏である説書を拝命し、その時にサンと出会って後に彼の参謀となった。
◆泮村(パンチョン)
成均館の隣り合わせにある奴婢の村。成均館の儒生たちが落ち着いて勉強ができるように便宜をはからう目的で形成された成均館の専用の村。儒生たちの生活に必要なものが作られ提供される。儒生に肉を食べさせるため都で唯一屠殺が許されているのもこの泮村。
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