「チャングムの誓い」医女時代の見どころ(最終回)

特集 韓ドラここが知りたい チャングムの魅力
シンピと言う心強い仲間はできたものの、ヨリという新手の敵も出現した医女時代、チャングムの周りには次から次へと事件がおきる。ここで全ての事件の見どころを紹介するには、後、10回ほどの連載が必要となる。そうもいかないので、シリーズ最後は、「女性」として考えさせられたいくつかの事件の見どころを紹介したい。

【医女時代編】(41話~最終回までネタばれあり)

親友ヨンセンは、チェ一族の仕業で中宗王から忘れられた存在となっていたが、チャングムの計らいもあり、再び王の寵愛を受け見事懐妊した。これで晴れて“マーマ”と呼ばれる淑媛となったのだ(豆知識参照)。ところが、ヨリの企みでヨンセンと胎児に危険が迫る。チャングムの機転でヨンセンは助かるが、彼女の壮絶な出産シーンは必見。新しい命を誕生させるという偉業が、女性たちのどれほどの苦しみの上で果たされてきたのか、女性だけでなく、子供や男性たちにも見てもらいたい感動のシーンだ。

0次に、チェ一族の悪事が暴かれる場面だが、悪徳非道の限りを尽くした憎っきチェ提調尚宮もまた、家門の犠牲になった憐れな女性であったことが、彼女の最期のシーンで見て取れる。特に、共に学んだチャングムの母、ミョンイの墓前でのチェ尚宮の姿には胸が痛んだ。

0チェ一族の問題が決着し、母の恨みとハン尚宮の汚名をそそいだチャングム。ドラマは大団円で幕を閉じるかに思えたが、王の思いつきで予想外の展開になる。中宗王がチャングムを自分の主治医にすると言い出したのだ。チェ一族の崩壊からまだ6話も残っていて、おかしいとは思ったが、敵はこんな隠し玉を持っていたのか!イ・ビョンフンという監督は全く侮れない。

さて、前回も紹介したように、当時の韓国では、異性の体に触れるのはご法度。ましてや身分の低い医女が、直接、王の玉体に触れるなどもってのほか。せっかく落ち着いたチャングムの身辺がまたまた騒がしくなった。王のとんでもない思いつきはミン・ジョンホのせいとばかりに、彼が槍玉に挙げられる。事実、ミンはチャングムを王の主治医に推薦している。当時、宮廷で女性のキャリアが生かせる場は、女官の世界しかなかった。そして、女官の最高位は王の側室になるということ。なんとも悲しい女性の扱われかたではないか。ミンは、男女の別なく、実力のある者に門戸を開くという新しい王室のあり方を、チャングムの類まれな医術で実現させて欲しかったのだ。

これがきっかけで、ミンとチャングムの熱い仲を確認した王だったが、同時に自分のチャングムへの愛にも気づいてしまった。男のやきもちは女のそれより始末が悪い!♪喧嘩をやめて~二人を止めて~♪というチャングムの声を無視して、王はミンに戦いを挑む。どんな戦いかはドラマで確認して欲しいが、自分もチャングムをあきらめるので、彼女を女としてではなく主治医として認めて欲しいと進言するミンは、ドラマ一押しのカッコよさだ。

1王は、約束どおり主治医としてチャングムを手元に置くのだが、王の命が尽きる場面で、チャングムを愛しそうに見つめる眼差しが切ない。惚れた弱みとはいえ、チャングムの前では王も一人の哀しい男でしかない。

ドラマ「チャングムの誓い」は、多くの歴史ドラマの結末がどうにもならないやりきれなさを残したのに対して、実に後味のすっきりした結末にしている、勇気のもらえる作品だ。

イ・ビョンフン監督は、「朝鮮王朝実録」という歴史書に残された一言“王の主治医を務めた大長今”で、この壮大な物語を創り出した。また、キム・ヨンヒョンは、これまで長い歴史の中で男性の影にいた女性を社会という表舞台に引っ張り出した。ドラマ「チャングムの誓い」は、ひとりの女性の一代記を通して、長い歴史の中で女性が抱えてきた多くの問題-家族、出産、恋愛と職業の選択、女性の社会進出など-を浮き彫りにした作品とも言えるだろう。そして、これが「チャングムの誓い」の一番の魅力かもしれない。

野いちごそういえば、チャングムの後、韓国では、「善徳女王」、「千秋太后」など、キャリアとしての女性を描くドラマが増えてきている。(完)

長いお付き合いありがとうございました。引き続き、他のシリーズもお楽しみください。

kandoratop【作品詳細】【「チャングムの誓い]を2倍楽しむ】
  • 不明

Photo by (c)Tomo.Yun (yunphoto.net)
キャスト:イ・ヨンエ、チ・ジニ、ホン・リナ、イム・ホ、ヤン・ミギョン、ヨ・ウンゲ、パク・ウネ、ハン・ジミン、キョン・ミリ
監督/演出: イ・ビョンフン、脚本: キム・ヨンヒョン