「江~姫たちの戦国」 大河50作目、時代に弄ばれ勝ち取った戦国のトップレディの生き様

2010年12月28日17時15分ドラマ

昭和38年の「花の生涯」から始まった大河ドラマ、その記念すべき50作目を飾るのが「江~姫たちの戦国~」だ。北近江の戦国大名・浅井長政と織田信長の妹・市との間に生まれた浅井三姉妹の末娘・江(ごう)の波乱に満ちた生涯を中心に、過酷な戦国の世を生き抜き、ある意味で時代を男たちの影で動かした女たちの生き様を描いていく。原作・脚本は2008年の「篤姫」で一大ブームを巻き起こした田渕久美子が手がける。大奥の終焉を描ききった田渕が、今度は大奥の始まりに挑むことになる。

江。浅井家の末娘として生まれ、徳川幕府二代将軍・徳川秀忠の正室となり、第三代将軍・家光を生み、娘を天皇家に嫁がせ、幕府の中核と言うべき大奥の礎を築いた、まさに江戸時代最初のトップレディである。だが、そこへたどり着く道は茨そのもの。少女時代には二度の落城で父と母を失い、信長、秀吉と時の実力者に人生を左右されることになる。さらに、戦国の姫たちの運命と言える政略結婚を3度も経験することになる。そして身を寄せ合うように生きてきた姉・茶々とは、何時しか敵味方に立場を分かつことになっていく。

戦国時代に限らず、男たちのパワーゲームの裏で女たちが過酷な犠牲を払わされてきたのが日本の歴史の断面ではあるが、これほど歴史に弄ばれ、かつ最後には頂点に登り詰めた女性も、江をおいて他にいないだろう。だが、その存在は生い立ちに反してあまりに知られていない。

そもそもこの「江」と呼ばれる女性、「崇源院」という諡(いみな)はあるものの、意外にも正式な本名がはっきりしていない。「小督御料人」「お江与」「江子」など様々な表記が当時の文献に記されおり、学者によって読み方もまちまち。番組スタッフによれば、その中で比較的共通する「江」という漢字とその音読みとして一般的な「ごう」を使うのが妥当とのことから、「江(ごう)」に決めたという。琵琶湖のほとりの国・近「江」に生まれ、「江」戸で天寿を全うした女性に、これほどふさわしい文字もないというわけだろう。

そんな希代の女性・江を演じるのは、大河ドラマ初出演となる上野樹里だ。時代に揉まれ健気に生きた女性像を、「のだめカンタービレ」や「スウィングガールズ」などで明るく奔放な役柄が印象的な上野がどのように自分のものにしていくか、大いに気になるところだ。大河ドラマで江を演じた女優といえば、2000年「葵 徳川三代」の岩下志麻が思い出される。西田敏行演じる徳川秀忠を尻に敷く岩下の“姉さん女房”ぶりが強烈な印象だった。果たして、上野がこれを塗り替えるイメージが確立できるか、役とともに成長するこの1年の「女優・上野樹里」にもぜひ着目したい。

もちろん、江を取り巻く豪華キャスト陣にも注目だ。浅井三姉妹の長女・茶々、のちの淀君を演じるのは宮沢りえ。大河ドラマは5回目の出演となる。戦国の終焉に君臨する烈女・淀君は歴代の名女優が務めてきた、大河では定番の枠。江とともに過酷な戦国の果てに行き着いた女の生き様をどう演じるのだろうか。そして江のもう一人の姉・お初は水川あさみが演じる。いずれ敵対する姉・茶々と妹・江の間を繋ぐ役柄を熱演することになる。

さらに、三姉妹の母・市を演じるのは10年ぶりの女優復帰となる鈴木保奈美。かつての“トレンディドラマの女王”が44歳となった今見せる母の顔を楽しみにしたい。

一方、江を翻弄していく男たちは、織田信長役に豊川悦司、豊臣秀吉役に岸谷五朗、徳川家康役に北大路欣也と、個性派・大御所が名を連ねる。そして江の3番目の夫、徳川秀忠は、「ゲゲゲの女房」で一躍お茶の間の人気者となった向井理が演じる。「ゲゲゲ~」とはまたひと味違う役柄をどう演じ分けるかはドラマ後半のお楽しみとなる。

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