映画『レディ・バード』 コラム「2着のドレスと1枚のパーカーが描き出す、素直になれない母娘たち」

lady11月21日(水)にBD&DVDリリースされる青春映画『レディ・バード』で、物語のキーアイテムになっているファッションと、ストーリーの要になっている主人公レディ・バードと母親との関係性を紐解くコラムを紹介。

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カリフォルニア州サクラメントのカトリック学校に通うクリスティン、17 歳。髪はピンク、自分にレディ・バードと名前をつけ、家族にも友人にもそう呼ばせている個性的な女の子だ。小さな町での生活に息苦しさを感じ東海岸の大学に進みたいと思っているけれど、母は「うちは貧乏なのだから地元の大学に行きなさい」の一点張り。口げんかの絶えない毎日を送っている。

そんなある日、レディ・バードはできたばかりのボーイフレンド、ダニーから彼の祖母の家での感謝祭のディナーに招待される。ダニーの家はお金持ち。正装して出かけたいとレディ・バードは母親と一緒にリサイクルショップにドレスを買いに出かける。しかし和やかで楽しい母娘ショッピングとはいかない。「感謝祭をよその家族と過ごすなんて。あなたは親不孝ね」と嫌味を言う母に反発、またしてもケンカが始まってしまう。でも母がパステルピンクのドレスを見せるとレディ・バードは「それ最高!」。これまでの言い争いも忘れて飛び上がって喜ぶ。どんなにギクシャクしていても、ちょっとしたきっかけでムードが一転するのが家族というもの。そのきっかけがドレスというのが母娘らしい。

感謝祭のディナーはうまくいったものの、ある事情でダニーとは別れてしまうレディ・バード。
次に付き合い始めたのはバンドマンのカイル。早く初体験を果たしたいと思っていたレディ・バードはめでたくカイルとセックスを経験する。でもカイルがある嘘をついていたことがわかり、レディ・バードはショックを隠せない。彼の部屋から飛び出してしまう。そんな彼女を車で迎えに来た母に、レディ・バードは思わず抱きつき泣き出してしまう。母は驚きつつも「このパーカー、どうしたの?」。泣く娘に驚きつつも、見慣れない服は見逃さないあたりが母親らしい観察力の鋭さ! しかし身に覚えのある人もいるのでは? 中学生や高校生のとき、内緒で買った洋服や化粧品を母親に見つかり「これはどうしたの?」と問い詰められたことを。そんな経験を思い出させるノスタルジックなやりとりだ。

大学進学を目指すレディ・バードは選考試験の1 つである小論文にサクラメントのことを書く。それを読んだ学校のシスターは「よく書けている。町を愛しているのね」と褒める。「愛しているのではなく観察しているだけ」と答えたレディ・バードにシスターはこう答える。「同じことだと思わない? 愛情と注意を払うことは」。娘にとっては口やかましいだけに見える母の行為も愛情そのもの。1 枚のパーカーを通して、それに気がつかせられる。

しかし、だからといって一気に親子仲良し! というわけにはいかない。高校卒業のプロムのドレスを買いに行ってもこの母娘はまた口げんか。鮮やかなピンクのドレスを試着した娘に母は「ピンクすぎる」。この一言に傷ついた「褒めることはできないの?」「お母さんに私を好きでいてほしい」。反抗していても本当は愛されたい。ずっと心の奥底にしまっていた本音を打ち明けるきっかけもドレスなのだ。思春期の恋や悩みを描いた『レディ・バード』。2 着のドレスと1 枚のパーカーは、多くの娘たちが体験してきた母親とのやりとりを鮮やかに切り取っている。

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『レディ・バード』 ブルーレイ+DVDセット 
2018年11月21日(水)発売
\3990+税
発売・販売元 NBC ユニバーサル・エンターテイメント
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