NHKのBS時代劇「テンペスト」もいよいよ半分を過ぎ、物語のラストに向かってさらにテンポ良く進んでいます。孫寧温としての活躍から絶妙のタイミングで真鶴へと変わるところなど、「一粒で二度おいしい」という某菓子のキャッチコピーを思い出してしまいます。
真鶴の行動もそうですが、周囲との人間関係もドラマにとっては見逃せないポイントです。実は鹿児島出身の私にとって、浅倉の存在は何かと気になるものです。薩摩の人間として、ちょっと沖縄とのことを語ってみたいと思います。

歴史のやっかいな遺産…薩摩は悪者？
琉球王朝を舞台にしたドラマといえば、やはり一番の大作は1993年放送のNHK大河「琉球の風」だと言えるでしょう。主演は東山紀之さん、沢田研二さんにブレイク前の渡部篤郎さんや原田知世さんなどが出演しておられました。個人的には間寛平さんやショー・コスギとケイン親子が出演していたのも記憶に残っています。この作品の時代設定は16世紀、尚寧王の時代ですから「テンペスト」の時代から200年ちょっと遡った頃になります。
この作品は大河作品唯一の半年作品で短く、やはり琉球史を取り上げたことで珍しがられるのと同時に期間の短さもあってあっという間に終わってしまった印象です。しかしご当地・沖縄では全編琉球語にした吹き替え版も放送される程かなりの盛り上がりを見せ、この時の撮影のセットをテーマパーク化した「琉球体験王国 むら咲むら」が今回の「テンペスト」でも使われるというご縁があるようです。ものすごくざっくばらんに言うと、薩摩に侵略されながらも独自の文化を守り続ける民族の悲哀が描かれたお話が「琉球の風」であります。
そもそも薩摩というのは多くの時代劇において「悪者」ポジションになる事が多く、大河でも薩摩は敵、のような雰囲気の場面もよく見られて、視聴中もなんだか胃の裏がかゆい思いをしたものです。私にはお父様が沖縄出身、お母様が鹿児島出身という友人がいたのですが、大河放送中に「実は父親は父方の祖父母から縁を切られていて、存命ではあるが自分は父方の祖父母と会った事が無い」という話を打ち明けられました。その理由が「内地の、しかもよりによって薩摩の女を嫁にするとはけしからん」という理由なのだそうです。「歴史の遺恨」というのを身に染みて感じた逸話であります。
話はややそれますが、私自身も「歴史の遺恨」に遭遇したことがあります。他県に住む伯母がマンションを購入したので遊びに寄ったところ、お隣からおばあさんが出てきました。頭を下げて「××の姪です」と言うと、なんと塩を撒かれたのです。びっくりして伯母に訳を聞くと、そのおばあさんは会津出身の方で、それを知らずに伯母が鹿児島出身と名乗ったところそれだけで毛嫌いされてしまったそうです。隣家の息子さん夫婦は申し訳無さそうに度々伯母に菓子折りなどを持ってきてくれたそうですが、そのおばあさんが長寿を全うするまで伯母も何かと大変だったようです。
時代劇の薩摩というのは、ヒーローである時とヒールである時の差が激しいように思います。そんな中にある「薩摩藩士像」とかけ離れていると感じるのが谷原章介さんの演じる浅倉であります。典型的な薩摩藩士とは一線を画すナヨっぷりといいますか人の良さといいますかフェミニストといいますか、だからこそ琉球にある意味左遷されたのではと思われたり、色々故郷に思いを馳せながら浅倉の行動を見ております。原作は未見なのですが、その辺りは描かれているのでしょうか？いずれにせよ、私にとってはかなり新鮮な薩摩藩士に映った浅倉であります。

舞台版・テンペストについて
今年の正月特番に仲間由紀恵さんが映画監督の堤幸彦さんと共に「チーム・テンペスト」としてあちこち出演していらした事で私は初めて公演を知りました。堤さんが演出をする舞台で山本耕史さんや生瀬勝久さんなど豪華なキャスティングというのに興味はありましたが、都合で見に行けず残念に思っていたところのドラマ化で大喜びしたものでした。もう舞台は終わってしまいましたが、公式サイトはまだ公開されております。ドラマの世界にハマってから新たに舞台版のキャストを見ると、聞得大君が生瀬さんって！とか西岡徳馬さんの徐丁垓は渋くて良さそうだな、とかあれこれ想像して楽しんでおります。
舞台の公式サイトでは、公演中に放送されていたテレビCMも公開されています。これはこれで独特の雰囲気が出ておりますので、こちらの映像も見てみると興味深いかもしれません。
舞台　琉球ロマネスク「テンペスト」


BS時代劇「テンペスト」ではドラマの次回予告を公式サイトで動画配信しておりますので、そちらと併せてご覧下さい。9月7日には待望のオリジナルサウンドトラックの発売も決定したそうです。ドラマの世界により浸りたい人には待望のCD化です。


テンペスト｜BS時代劇


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