【韓国歴史コラム】「100日の嘘」をもっと楽しむ!1932年の京城とは?日本統治下の朝鮮と独立運動をわかりやすく解説

14時53分ドラマ
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キム・ユジョン×パク・ジニョン主演の韓国ドラマ「100日の嘘」が、10月10日から韓国tvNで放送を開始し、Netflixでも配信されている。

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「100日の嘘」(原題:100일의 거짓말)は、京城一のスリと朝鮮総督府のエリート通訳官が繰り広げるスパイロマンスだが、その舞台は今から約94年前、1932年の京城(キョンソン)。現在の韓国の首都ソウルが、まだ「京城」と呼ばれていた時代だ。なぜ朝鮮に日本の総督府があったのか。なぜ人々は命を懸けて独立を目指したのか。そして、日本名を持つ朝鮮人とはどのような存在だったのか。ドラマをより深く楽しむために、当時の日韓関係と歴史的背景をわかりやすくひも解いてみたい。
tvN「100일의 거짓말」tvN「100일의 거짓말」

■そもそも、なぜ朝鮮は日本の統治下にあったのか?

まず知っておきたいのは、1932年の朝鮮半島には、現在の韓国と北朝鮮という2つの国家が存在していなかったことだ。当時、朝鮮半島全体は日本の植民地統治下にあった。

朝鮮半島では長く朝鮮王朝が続き、1897年には国号を「大韓帝国」と改めた。しかし、19世紀末から20世紀初頭にかけて、日本は日清戦争、日露戦争を経て朝鮮半島への影響力を強め、1905年には韓国の外交権を奪い、保護国化を進めた。

そして1910年8月29日、「韓国併合」によって大韓帝国は日本の統治下に置かれた。日本は朝鮮総督府を設置し、行政、警察、教育などを通じて植民地支配を進めていく。

つまり、ドラマの舞台である1932年は、日本による統治が始まってから22年が経過した時代。朝鮮の人々は、自分たちの国を自分たちで治める権利を失った状態にあった。

■ドラマに登場する「朝鮮総督府」とは?

「100日の嘘」で重要な舞台となるのが、朝鮮総督府だ。これは日本が朝鮮を統治するために設けた最高行政機関で、朝鮮総督を頂点に強い権限を持っていた。

総督府は単なる役所ではない。警察や教育、経済政策などを通じて人々の生活に大きな影響を及ぼす、植民地統治の中心だった。

ドラマでパク・ジニョンが演じるキム・テウン/サトウ・ヒデオは(佐藤英雄)、この総督府で働くエリート通訳官。一方、チン・ソンギュ演じるサトウ・シンイチ(佐藤真一/進一)は、総督府の政務総監という高い地位に就く人物として描かれている。

外国語を理解し、外国人との交渉を担う通訳官は、国際情勢が緊迫する時代に重要な役割を果たした。誰の言葉を、誰に、どのように伝えるのか。その選択が政治的な意味を持つこともある。

だからこそ、本作では「通訳」という仕事が、単なる職業設定にとどまらず、嘘と真実、忠誠と裏切りを描く重要な要素になっている。

■なぜ独立運動が起きた?1919年の「三・一独立運動」
近代韓国画像:©navicon|三・一独立運動をイメージした画像
日本の統治に対し、朝鮮の人々が抵抗を続けた歴史も知っておきたい。

その大きな転機となったのが、1919年3月1日に始まった「三・一独立運動」だ。京城での独立宣言をきっかけに、学生や宗教関係者、市民らが独立を求める運動に参加し、その動きは朝鮮半島各地へと広がった。

人々は「独立万歳」と叫び、自分たちの国の独立を訴えた。しかし、日本の当局は軍や警察を動員して運動を弾圧し、多くの死傷者や逮捕者が出た。

この運動をきっかけに、同年、中国の上海では「大韓民国臨時政府」が樹立された。朝鮮半島の外からも独立を目指す活動が続けられることになった。

三・一独立運動から13年後にあたる1932年には、独立運動は国内外でさまざまな形を取っていた。外交活動や教育活動、地下組織による情報収集、武装闘争など、その方法も一つではなかった。

「100日の嘘」でキム・ヒョンジュ演じるユ・ソランが所属する「救国団」は、そうした抗日独立運動を背景に描かれた劇中の組織だ。ただし、救国団そのものを実在した特定の団体と同一視するのではなく、歴史を踏まえたドラマ上の設定として理解したい。

■1932年は独立運動と日本の軍事行動が交錯した年

では、なぜドラマは1932年を舞台に選んだのだろうか。

この年は、東アジア全体が大きく揺れ動いていた時代だった。前年の1931年9月、日本の関東軍は満州事変を引き起こし、1932年には満州国の建国が宣言された。また同年1月には、中国の上海で日本軍と中国軍が衝突する第一次上海事変も起きている。

そして1932年4月29日、上海の虹口公園で、日本側の祝賀行事に参加していた軍・外交関係者らを標的とした爆弾事件が発生した。実行したのは、朝鮮の独立運動家・尹奉吉(ユン・ボンギル)。この事件は、日本側に死傷者を出すとともに、朝鮮独立運動を国際的に印象づける出来事となった。

尹奉吉は、独立運動家・金九(キム・グ)が率いる韓人愛国団の一員だった。この事件は上海の大韓民国臨時政府にも大きな影響を与え、関係者たちはその後、拠点を移しながら活動を続けることになる。

もちろん、こうした史実がそのまま「100日の嘘」の物語になるわけではない。しかし、1932年という年が、独立を求める人々と日本の統治・軍事権力が激しく対立した時代だったことを知ると、劇中の緊張感も違って見えてくる。

■日本名を持つ朝鮮人、通訳官テウンの複雑な立場

ドラマを理解するうえで、もう一つ重要なのがキム・テウンという人物だ。

彼は朝鮮人でありながら、日本名の「佐藤英雄」を名乗り、朝鮮総督府で通訳官として働いている。日本人の有力者の養子として育ったという設定もあり、その立場は単純ではない。

ここで注意したいのは、1932年には、後に実施される「創氏改名」がまだ制度化されていなかったことだ。朝鮮人に日本式の氏を設定させる制度が導入されたのは1939年で、1940年から実施された。

したがって、ドラマのヒデオという日本名は、当時の朝鮮人全体が日本名を使っていたことを意味するものではない。彼が置かれた特殊な家庭環境や立場を表す設定として捉える必要がある。

日本の統治機関で働く朝鮮人が、必ずしも同じ考えを持っていたわけではない。生活のために職を得た人もいれば、出世を望む人、統治体制に協力した人、複雑な葛藤を抱えた人もいた。

ヒデオは自分を何者だと思っているのか。朝鮮人としての出自と、日本人の養子として育った人生をどう受け止めているのか。その内面こそ、今後の物語を読み解く重要な鍵となりそうだ。

■華やかな京城の裏にあった貧困と格差

1930年代の京城は、路面電車が走り、百貨店や映画館、カフェなどが並ぶ近代都市としての顔も持っていた。洋装の人々が街を歩き、新しい文化や流行も生まれていた。

しかし、その華やかさの裏には、植民地支配による不平等や貧富の差が存在した。裕福な人々が近代的な生活を楽しむ一方、厳しい暮らしを強いられる人々も少なくなかった。

「100日の嘘」の主人公イ・ガギョンは、京城一のスリとして生きる女性だ。彼女が夢見るのは、独立運動への参加ではなく、アメリカへ渡って新しい人生を始めること。

この設定が興味深いのは、当時の人々が誰もが同じ目的や信念を持って生きていたわけではないことを示している点だ。

国の独立のために命を懸ける人がいる一方で、今日を生き抜くことに精いっぱいの人もいる。ガギョンが自分自身の夢と、目の前にある時代の現実との間でどんな選択をしていくのか。それも本作の大きな見どころだ。

■「春が来る」という言葉に込められた独立への願い

こうした歴史的背景を知ると、ドラマの何気ないセリフにも別の意味が見えてくる。

初回放送後、日本のSNSでは「朝鮮は一年中冬なの?」という問いかけと、それに対する登場人物たちの反応に注目する声が見られた。

「春が来る」という言葉を、厳しい植民地統治の時代が終わり、独立の日が訪れることへの願いと重ねて読み解く視聴者もいる。

冬は苦難の時代、春は自由や希望の象徴。こうした解釈に立つと、何気ない季節の会話にも、登場人物の信念や立場が表れているように感じられる。

もっとも、こうした意味づけは現時点では視聴者による考察であり、物語の中でどこまで意図された表現なのかは、今後の展開を見守りたい。

■歴史を知れば「100日の嘘」はもっと面白くなる!

「100日の嘘」は、単に日本統治下の朝鮮を描く歴史ドラマではない。国家の独立を願う人々、統治する側に身を置く人々、そして何より、自分自身の人生を切り開こうとする人々の物語でもある。

日本人、朝鮮人という区別だけでは割り切れない複雑な人間関係の中で、誰が本当のことを語り、誰が嘘をついているのか。守ろうとしているのは国家なのか、家族なのか、それとも愛する人なのか。

1932年の京城という時代背景を理解すれば、ガギョンとテウンの出会いも、総督府で交わされる会話も、より深い意味を持って見えてくるはずだ。

歴史の大きな流れの中で、一人ひとりがどのように生き、何を選んだのか。「100日の嘘」は、スパイロマンスの面白さとともに、激動の時代を生きた人々の葛藤にも目を向けたい作品だ。

■「100日の嘘」とあわせて見たい!時代背景がわかる韓国ドラマ4選
近代韓国「京城スキャンダル」「イモン」「剣の詩」「緑豆の花」
「100日の嘘」の時代背景をもっと深く知りたいなら、同じ日本統治時代を描いた韓国ドラマ「京城スキャンダル」、「イモン~禁断の愛~」、「剣の詩」、「緑豆の花」にも注目したい。

「京城スキャンダル」は1930年代の京城を舞台に、独立運動とロマンスを描いた作品。「イモン~禁断の愛~」も同じ時代を背景に、独立運動に身を投じる人々の葛藤や、密偵をめぐる緊迫した駆け引きを描いている。

一方、Netflix「剣の詩」は1920年代の間島地域を舞台に、日本の支配に抵抗する人々の戦いを描くアクション時代劇。そして「緑豆の花」は、1894年の東学農民運動を題材に、日本による植民地統治以前の朝鮮社会の混乱と、人々の理想や信念を描いた歴史ドラマだ。なぜ朝鮮が後に日本の植民地となったのか、その歴史的背景を理解するうえでも見ておきたい本格時代劇だ。navicon特集【「緑豆の花」を2倍楽しむ】では時代背景や革命年表、各話のあらすじと見どころを詳しく紹介しているのであわせてチェックしてみてほしい。

※参考【ドラマの年表:朝鮮王朝】

同じ歴史の流れに位置づけられながら、それぞれ異なる時代や立場から描かれる4作品。「100日の嘘」と見比べることで、1932年の京城がどのような歴史を経て生まれた時代だったのか、さらに理解が深まるはずだ。


「100日の嘘」は韓国tvNで毎週土・日曜日に放送され、日本ではNetflixで配信されている。

◇「100일의 거짓말」HP

◇100日の嘘 | オフィシャル予告編 | Netflix

kandoratop【作品詳細】【「100日の嘘」を2倍楽しむ】

※参考資料
・「アジア歴史資料・センター「朝鮮総督府」(日本語)」
・「韓国学中央研究院『韓国民族文化大百科事典』「三・一運動」(韓国語)」
・「白凡金九記念館「大韓民国臨時政府の活動(1919~1932)」(日本語)」
・趙景達『植民地朝鮮と日本』(岩波新書、2013年)
・水野直樹『創氏改名―日本の朝鮮支配の中で』(岩波新書、2008年)

※本記事は史実を解説したものであり、ドラマの人物設定や物語にはフィクションが含まれます。内容については、これまでnaviconで紹介したコラムと上の参考資料・文献を参考にしています。