激動、明治の夜明け。さいはての地、北海道石狩原野。夢と野望に命を賭ける男たちと、炎と燃えたつ女たちの愛憎を凄絶なアクション、鮮烈なエロティシズムで謳い上げる大スペクタクル・ロマン。文明開化の波に酔い痴れる世間の裏側で、遠い北辺の地に囚われの身となり、北海道開拓の先兵として強制労働に駆りたてられる集団…。彼らは、政治犯、殺人犯など、何れも十年以上の重刑を宣告された者たちであったが、想像を絶する極寒の中での重労働と凄絶を極める懲罰は、その男たちをして此処を〝この世の地獄〟と畏怖させた。このさいはての地の獄…そこを〝樺戸集治監〟という。全国の凶悪犯を一同に収容するこの集治監を舞台に、鬼典獄と恐れられた刑務所長と囚人を追って京都から逃げのびてきた芸者を軸に展開する。未開の奥地を切り拓いて、開拓者のための道路造りに異常なまでの執念を燃やす典獄は、使役に狩り出す囚人の命など虫ケラほどにも思っていない。そして、憎悪に燃える囚人たちは執拗に脱獄を繰り返す。広大な雪原のなかで繰り拡げる男と男の果てしない闘い。女と男の激しい愛。本音をぶつけ合って生きた人間たちが、燃え尽きていくことの凄さ、哀しさが鮮やかに迫ってくる。
監督 五社英雄(1984年 124分)
北の螢
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