『危険な関係』から「スキャンダル」へ…なぜ舞台を朝鮮時代に?華やかな世界の裏側で繰り広げられる“危険な恋”【韓ドラコラム】

18時00分ドラマ
画像提供:Netflix 「スキャンダル」Netflixにて独占配信中

Netflixシリーズ「スキャンダル」が9月18日より配信開始となった。(日本では「16+」=視聴推薦16歳以上)

「スキャンダル」は、朝鮮時代、優れた才能を持つ女性“チョ氏夫人”と朝鮮最高のプレイボーイ“チョ・ウォン”が繰り広げる大胆で危険な愛の賭けごと、そしてその賭けごとに絡み合う女性“ヒヨン”の話を描いたロマンス時代劇。

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ソン・イェジン、チ・チャンウク、ナナが共演する本作は、フランスの作家ピエール・ショデルロ・ド・ラクロが1782年に発表した小説『危険な関係』を原作とする作品。同小説はこれまで映画やドラマなどで幾度も映像化されてきたが、今回の「スキャンダル」では、その舞台をフランスから朝鮮時代へと大胆に置き換えている。ドラマ「イ・サン」「紅い袖先」ででおなじみの第22代正祖(イ・サン)の治世と考えていいだろう。

では、なぜ『危険な関係』の物語は、朝鮮時代の北村(プクチョン)へと移されたのか。
スキャンダル画像提供:Netflix
そこには、時代も国も異なりながら、「自由な恋愛」を阻む社会の規範と、その裏側で膨らんでいく人間の欲望という、原作と本作に共通するテーマがある。

■原作『危険な関係』はフランス革命前夜の社交界が舞台

『危険な関係』が刊行されたのは1782年。フランス革命が起こる1789年を目前にした時代である。

物語では、メルトゥイユ侯爵夫人とヴァルモン子爵という男女を中心に、上流社会の人々が恋愛や誘惑をめぐる駆け引きを繰り広げる。物語は175通の書簡によって構成され、恋愛そのものだけでなく、相手の感情を読み、操り、時には復讐するという心理戦が描かれている。

とりわけ重要なのが、物語の背景となる「社交界」だ。

身分や名誉、礼儀、評判が重視される世界では、誰もが公の場では一定の道徳や規範に従うことを求められる。その一方で、表には出せない欲望や嫉妬、野心が存在する。

『危険な関係』は、まさにその「表向きの上品さ」と「その裏に隠された欲望」の落差を、恋愛という形で浮かび上がらせた作品ともいえる。

■「スキャンダル」はフランスの社交界を朝鮮時代の北村へ

Netflixの「スキャンダル」では、ぺ・ヨンジュン主演の映画版『スキャンダル-朝鮮男女相悦之詞』と同じくこの構造を朝鮮時代へと移している。

舞台となるのは朝鮮王朝時代の漢城(現在のソウル)。なかでも本作の物語を彩るのが、北村(プクチョン)――景福宮(キョンボックン)と昌徳宮(チャンドックン)の間に位置し、両班(ヤンバン)と呼ばれる貴族階級が暮らした地域だ。
写真:韓国旅行情報と予約「コネスト」より写真:韓国旅行情報と予約「コネスト」より

チョ氏夫人(ソン・イェジン)は、優れた才能と美貌を持ちながら、女性として生きることにさまざまな制約を受けている。一方、チョ・ウォン(チ・チャンウク)は、自由奔放な生活を楽しむ朝鮮一のプレイボーイ。そんな2人の前に、貞淑な未亡人アン・ヒヨン(ナナ)が現れる。チョ氏夫人とチョ・ウォンは、ヒヨンをめぐって危険な“恋の賭け”を始めることになる。
スキャンダル画像提供:Netflix

■フランスの「サロン」を朝鮮時代の「北村」に置き換えた意味

ここで注目したいのが、原作におけるフランスの「サロン(社交界)」と、本作における朝鮮時代の「北村」の関係だ。

もちろん、18世紀フランスのサロンと朝鮮時代の北村は、歴史的にも社会的にも同じものではない。しかし「スキャンダル」は、物語を動かす舞台として、両者が持つ「人の目と社会的な規範に縛られた閉じた世界」という共通点を生かしている。

フランスの社交界では、身分や名誉、礼儀が人間関係を規定する。一方、朝鮮時代の上流社会では、儒教的な倫理観や身分秩序、家の名誉などが人々の行動を強く縛っていた。

つまり、「表では誰もが道徳と礼儀を守っているように見える。しかし、その裏側では欲望や嫉妬、恋心が渦巻いている」という構造を、フランスのサロンから朝鮮時代の北村へと置き換えたのである。

だからこそ、本作で描かれる恋愛は単純な男女のロマンスでは終わらない。

建前(道徳・礼儀)でガチガチに固められた社会だからこそ、裏で繰り広げられるスキャンダルが、命がけのスリリングなゲームになる。

誰かに見られてはいけない視線、知られてはいけない関係、そして一度表に出れば名誉を失いかねない秘密――。北村という舞台は、そんな危険な駆け引きを繰り広げるための格好の舞台となっている。

■「自由に恋ができない」社会だからこそ、恋はゲームになる

『危険な関係』と「スキャンダル」を結びつけるもう一つのポイントが、「自分の欲望を自由に表現できない社会」である。

原作では、メルトゥイユ侯爵夫人とヴァルモン子爵が、恋愛を純粋な愛情ではなく、策略や勝負として楽しんでいく。Netflix版では、チョ氏夫人とチョ・ウォンの初恋もみずみずしく描かれる。しかし、チョ氏夫人=チョ・ユンは名家からの請婚を断れずに嫁ぐことになり、初恋にはぶれたウォンはプレイボーイとなっていく。しかし、チョ氏夫人の胸にもウォンの面影は残っており、あることがきっかけにチョ氏夫人はウォンに危険な賭けを持ち掛ける。

「誰を落とせるのか」「相手をどこまで動かせるのか」――。

相手の心を読み、誘惑し、揺さぶり、そして自分自身の感情さえも隠しながら進めていく。

そこに朝鮮時代という舞台設定が加わることで、恋愛は単なる男女の駆け引きではなく、「社会の目から逃れながら、どこまで自分の欲望を貫けるのか」というゲームにも見えてくる。

特にチョ氏夫人は、女性であるがゆえに多くのものを諦めざるを得ない人物として描かれる。その抑圧された欲望が、チョ・ウォンとの危険な賭けへとつながっていく点も、本作を読み解くうえで重要なポイントだ。

■チョ氏夫人とメルトゥイユ侯爵夫人、チョ・ウォンとヴァルモン
スキャンダル画像提供:Netflix
登場人物にも原作との明確なつながりがある。チョ氏夫人(ソン・イェジン)は、原作のメルトゥイユ侯爵夫人にあたる存在。知性と策略を武器に、自らの人生を切り開こうとする女性だ。チョ・ウォン(チ・チャンウク)は、原作のヴァルモン子爵に相当する。女性との恋愛をゲームのように楽しむプレイボーイだが、その内側には満たされない感情や葛藤を抱えている。

そして、アン・ヒヨン(ナナ)は、原作のトゥールヴェル夫人に重なる人物。貞淑に生きようとする彼女が、チョ・ウォンとの出会いによって少しずつ心を揺さぶられていく。

この3人の関係を見ていくと、「スキャンダル」が単なる時代劇ではなく、『危険な関係』の人物造形と心理戦を朝鮮時代の社会に移植した作品であることが見えてくる。

■華やかな北村の風景、その裏側で何が起きているのか
スキャンダル画像提供:Netflix
「スキャンダル」を見るうえでは、華やかな衣装や韓屋が並ぶ北村の美しい風景だけでなく、その美しい世界を成立させている「規範」にも注目したい。
人々が礼儀を守り、身分や家柄を意識し、女性には女性としての生き方が求められる。
そんな社会だからこそ、ほんの一度の視線や秘密の逢瀬、誰にも知られてはいけない感情が、大きな意味を持つ。

フランスの社交界を舞台にした『危険な関係』が描いたのは、華やかな世界に潜む欲望と策略だった。それを「スキャンダル」は、朝鮮時代の北村という舞台に置き換える。

「表では道徳と礼儀を守る。しかし、裏では誰もが自分の欲望を抱えている」――。

この構図こそが、約240年の時を超えて『危険な関係』と「スキャンダル」をつなぐ大きな共通点なのだ。

そして本作を見る際には、登場人物たちが歩く美しい北村の街並みそのものにも注目したい。どの場所で、誰と誰が出会い、どんな視線を交わすのか。

物語の舞台となった場所を知れば、「スキャンダル」に描かれる華やかで危険な世界を、さらに立体的に楽しむことができるはずだ。

【「スキャンダル」を2倍楽しむ】では、制作発表会レポート、キャスト・キャラクター徹底解説、全話あらすじと見どころ、時代背景、ロケ地などドラマを深掘りしていく。

本予告

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